「ある意味の集大成だが現実の震災を扱うには薄っぺらさが否めない。」すずめの戸締まり momoさんの映画レビュー(感想・評価)
ある意味の集大成だが現実の震災を扱うには薄っぺらさが否めない。
災に立ち向かう作品としては三部作の3つ目で、ある意味の集大成だと思う。
絵も美しいし、すずめのキャラクターも魅力的だ。背が高くてすらっとしててポニーテールなのも素敵。
草太は長身のイケメンで萌えポイントの泣きぼくろまである。
ちゃんとRADWIMPSの曲もかけてくれるし、前の作品からの繋がりはなくとも前の作品の声優の神木隆之介の起用もあったりで、はずしはない。
絵日記の真っ黒のページが続くシーンあたりからは胸に込み上げるものもあった。
ただ、君の名は。や天気の子のように何度も劇場に通って観たいかとなると、そこまで心が動かされないのは何故だろう。
ストーリーはシンプルで、ロードムービーの要素もあって話の展開がどこに向かっていくのかとてもわかりやすい。
路上のアクションはハリウッド映画並みのスリル、ダイジンや椅子のキャラクターは子どもにもウケが良いだろうし、ジブリ作品並に後世に残ると思う。
でもそのふたつともが余計だ。
大学生の若者が何故か車の中で懐メロを聞いているという設定も邪魔。
おじさんが主たるお客さんのスナックでチェッカーズのような懐メロが流れるのは理解出来るけれど、ロードムービー部分で懐メロばっかりはちょっとやりすぎか。
特にユーミンをかけたらもうジブリ。松田聖子をかけたら打ち上げ花火…
漫才だったら、もうええわどうもありがとうございました。と終わるところが河合奈保子に井上陽水にと古い曲がしつこい。
誰に聞かせたいのだろうか。なんなら震災が起きた年の曲が続く方がまだ理解出来る。
地震で身内を無くしたことを扱っているので、心の葛藤とか苦しみをもっと丁寧に描いて欲しかったので残念だ。
月9の監察医朝顔ぐらいの現実に家族を震災で亡くした方への寄り添いの表現が足りなかった。
すずめみたいに大丈夫で元気に生きてる人ばかりでは無い。
観ている側としても一緒に苦しんで悲しみたかった。
猫との追いかけっこを見たいわけじゃない。
個人的には天気の子や秒速5センチメートルを観た時の感動には及ばなかった。
ちょっとファミリーに寄せすぎたかな?
そして、恋が圧倒的に足りない。
命を懸けて相手を救おうとする程、すずめと草太は好きあってはいない。そんなところはどこにも描かれていない。
すずめが草太のことをちょっと好みのタイプだっただけだ。ラブストーリー感が圧倒的に足りないのだ。
草太が早々に椅子になってしまうから人間同士の男女の物語が描ききれていない点で天気の子より劣る。
深海飯も天気の子では貧困な中、豆苗やネギを育ててる陽菜の工夫されたチャーハンが人物の性格をよく表現していた。そしてとても美味しそうだった。今回のポテトサラダ焼きうどん陽菜のチャーハンみたいにコンビニで販売されることも無さそうだ。
それでもあと1回は劇場で観ると思うし、テレビ放送した時にもいつか観てしまう気がする。
災三部作として集大成と思うので、次はまた心を揺さぶりまくる作品を作って欲しいと切に思います。