「昭和歌謡版『ストレンジャー・シングス』にさめざめと泣きました」すずめの戸締まり よねさんの映画レビュー(感想・評価)
昭和歌謡版『ストレンジャー・シングス』にさめざめと泣きました
宮崎県の高校生鈴芽は登校途中の坂道で廃墟を探している青年、草太と出会う。彼を追って山上にある廃墟に向かった鈴芽は廃墟の中にたたずむ古い扉を見つける。鈴芽が恐る恐る扉を開けてみると・・・からの妖奇ジュブナイル、といったところでしょうか。
冒頭で物語の行き着く先は暗示され、後は日本各地の廃墟を巡るロードムービーの様相。ロードムービーなので旅先での色んな出会いが物語を軽快に転がします。『天気の子』では生きとし生ける全ての大人に中指を突き出すかのようなテーマが提示されていたので、ボコられる側のアラフィフは肩身の狭い思いを強いられて楽しめませんでしたが、こちらはその真逆。『君の名は。』に立ち返ったかのような瑞々しい恋が電車とフェリーと車の旅で育まれ、子供達と大人達の爽やかな邂逅も描かれます。旅のBGMもアラフィフ向けになっているので、いわば昭和歌謡版『ストレンジャー・シングス』。すなわちクライマックスではビービー泣けます。
神戸出身の身としては予告でチラ見せされていた郷里の扱いが気になるところでしたが、意外なスポットがチョイスされていて驚きました。そして何よりビックリなのは伊藤沙莉が演じる二ノ宮ルミ。いきなりあのハスキーな声で登場、彼女が口にするセリフで神戸出身者は郷愁を激しく揺さぶられてもれなく泣くことになると思います。伊藤沙莉、最強です。
声優陣は皆素晴らしいですがやはり主演の原菜乃華と松村北斗の凛とした声は格別。そして主題歌『すずめ』の十明の歌声も身震いするほど美しい。ただRADWINPSの他の曲はパッとしないというか、もう『天気の子』で既に正直聴き飽きた感ありなので、次回作では他のアーティストを起用して欲しいです。