「声優も併せて宗教映画みたいな児童文学映画感」すずめの戸締まり 水樹さんの映画レビュー(感想・評価)
声優も併せて宗教映画みたいな児童文学映画感
アニメとしては無難によくできてると思います。
ただ内容と配色のせいで凄まじく某宗教アニメ映画のような印象を受けて仕方ない。
そしてそこにさらに松村北斗さんが露骨に「有名人(アイドル)がアニメの声やってやってるんだぞ」みたいな声の当て方をするせいで、さらに某宗教アニメ映画感が加速する(笑)
とりあえずエルなんたらだの、降霊術だの、宇宙人だの仏陀やイエスが降臨などと言い出さなくて良かった(笑)
正直映像としては近年のアニメらしく凹凸の合わないような背景や、背景と合わないキャラの動きと移動。そしてアニメでありがちなその場ステップな歩行など、ちょっといつもより粗は目立っていた印象。
キャラの動き、特に猫や椅子の動きに関しては今までの作品と比べてもかなりアクションやスピード感がしっかりしていてファンタジー的な動きがよくできていたかと。人の動きも天気の子と比べるとかなりよくなっていた感じがします。
反面、キャラの動きと背景の合わなさ、凹凸や地形との動きの違和感、わざとらしすぎるキャラの仕草の数々など、どうしても天気の子と同様に「君の名は」でウケのいいキャラクターの動かし方を学んだのでディズニーやジブリみたいな無理にアニメアニメしてますというような動きがどうしても気になります。
今のアニメにどっぷりで、アニメキャラはアニメっぽい動きをして当たり前、現実は見たくないみたいなタイプのアニメファンにはこういうののほうがいいんでしょうが…。
とにもかくにも作品としては新海誠らしいキャラの静かな動きや心情の機微みたいなものがあまり無く、どちらかというと良くも悪くも夏休みにありがちな児童文学の映画化と言う印象。
笑わせポイントや感動ポイント、泣き所も無駄にアピールが激しく、些細なところで何かを感じさせるような新海作品の良さはなかったかなと。
悪い言い方をすればバカでも泣けて笑えて、にわかでも知ったかができるエンタメ作品。と言う点ではよくできていたかと。
内容に関しては地震が主題にはなっていますが、まぁ内容としては「地震は実は未知の大いなる存在が引き起こしているんだ!真実を知るのは僕たちだけなんだ!」「なっ、なんだってー!!」
みたいな、まぁよくある長編アニメ映画的なノリ。
内容も実際問題、関東大震災、東日本大震災や阪神淡路大震災は多くの方がなくなり日本人にはとても辛い記憶であり、地震の恐怖を感じさせますが。
そもそも阪神淡路大震災、関東大震災は火災が原因ですし、東日本大地震は津波の被害がメインなので、日本ではかなり大規模な地震があっても建物の倒壊や単純な揺れでの被害は言うほどではないので、正直なんだか少しズレてはいるなーという印象。
その場で生きている人や、被災にあった人の表面的というか絵に描いたような恐怖感ばかりで、リアルな人達が感じた日常や温かみの喪失というような何かそういう等身大の喪失感があるわけでもない…。
声優に関しては全体的に悪くなかったのですが、松村北斗さんの演技が正直酷い。
ハウルの動く城のキムタクとよく似た感じですが、がキムタクと比べると声の質は画面映えしますし、比較的喋り方も下手ではない。
のですが、とにかく口パクとセリフが合わない、一人だけマイクの距離感間違ってないか?といいたくなるレベルで声が浮いている。加えて「僕はアイドルだけどアニメ声優もできまーす」みたいな感じの喋り方や演技ががとにかく目立って、アニメや声優を馬鹿にしてんのか?という印象を受けてしまう。
開始からそうそうにキャラを椅子にしたのは本当に英断です。そして要石になった瞬間は正直「よくやった!」と思ってしまった(ファンの方すみません)
そして彼の存在と演技のおかげで神木隆之介さんの声にも違和感から入る形になってしまいさらに地獄に…。
この手のアニメ映画にアイドルや芸人、芸能人を使うのはよくあることですし、個人的にはジブリや長編アニメの棒読み芸能人もそれはそれで味だなとは思いますが…。
風立ちぬの庵野監督があれだけ序盤違和感があっても、だんだんと聴き慣れるように、本来は演出やキャラの描き方、音の調整が行われるのでしょうが。
松村北斗さんの場合は声質や喋りがそこそこできてしまったが故に、余計に半端感や「アイドルの自分」を捨てきれないような演技になってしまっている印象を受け、それが製作者の顔や意図を意識挫折しまい、映画全体の所謂メタ的な要素にも監督や客寄せ用芸能人たちの「お前らこう言うの好きなんだろ?」という部分に視聴側の意識も「見せられてる」という意識に拍車をかけてしまった感じに…。
ようは製作者の顔がちらついてしまい作品のキャラクターのリアルに没頭できないんですよね…。こうなってしまうとこの作品の根幹である被災者達の失われたリアルも、余計にただの絵ぞらごとになってしまって、ただの御涙頂戴の戯言にしかならない。
色々言いましたが、アニメ映画としてはとにもかくにも可もなく不可もなく。露骨につまらないと言う感じもありませんでしたが、別に面白くも得るものもなく、それなりに綺麗にそれなりによく動いて、笑わせどころも泣き所も用意された、ベタなアニメ映画だったなと言う印象。
天気の子ほど酷くはないですが、まぁ…新海作品である必要もないかな?と言う感じでしたね。
この内容ならある意味では星追う子供のほうがマシだった気もします。