「すずめが面食い尻軽女(予備軍)にしか見えんのよ笑」すずめの戸締まり 真中合歓さんの映画レビュー(感想・評価)
すずめが面食い尻軽女(予備軍)にしか見えんのよ笑
(作画は確かに)新海誠監督の最高傑作だった。しかし、
何 故 微 妙 だ っ た の か ? ? ? ? ?
公開初日の初回上映で行って参りました。流石に平日という事もあって満席ではありませんでしたが、上映回数もエグいのでこれからでしょうね。
はてさて、圧倒的な大ヒットで今日まで続く邦画アニメ時代の走りとなった『君の名は。』、それには及ばずだったが十分にヒットした『天気の子』。そして今作『すずめの戸締まり』はと言いますと・・・・・・・
・・・・・・ぶっちゃけ ? (クエスチョン)だった。。。。。
そもそも予告編からして僕はイマイチピンと来なくて、トゥ~ル~ルルルル~♪ のイントロしか覚えてなかった。『君の名は。』では男女が入れ替わってワチャワチャする~!?っていう分かりやすさが有ったし、天気の子もなんか天気を操作する女の子が居るんだね~という感じだった。
そして本編。これは天気の子でもそうだったのだが、まず ”驚きが無い” 。本当に予告編で見たまんま。『君の名は。』では入れ替わりにトリックが有って更に彗星から街を救う話へと変貌するが、この『すずめの戸締まり』は扉ガチャガチャするだけ。その扉が増えたり変形したり「そんな手段も有るのぉ!?」というような驚きも無く、最後まで鍵でガチャガチャ。両側から閉めたりみたいな斜め上のやり方であっと驚かされるような演出も無かった。
まず序盤から草太なる男が椅子に変えられてしまうのだが、これが非常に滑っている。鑑賞者がかなり置いてけぼりの状態で追いかけっこが始まるので「い、椅子?w」というテンションにならざる得ない。ここは予告編でも分かっていたが、予告編まんまでそれ以上の隠し要素も無かった。
それでも作画は流石の一言で、日本アニメ史上最高クラスの息を呑む迫力だったことは報告しておきたい。エヴァンゲリオンやジブリを嫌でも意識させられる感じなのだが、景色が綺麗~という新海誠監督のイメージからの脱却にもなっていて良かったと思う。
でも本作、本当に作画とすずめちゃんの可愛さぐらいしか響かなかったというのが正直な所。
そもそもストーリーラインの分かりづらさが致命的で、序盤から匂わせているすずめの過去も弱く、すずめ自身に何か秘密が有るのか?草太との関係性は?ミミズの正体とこれはいつまで続くのか?という要素が全部薄まって作画の凄さに黙らされているような感覚なのだ。
そして最後、殆どの鑑賞者は「いやなんで過去のすずめに干渉出来たねん?」とツッコミを入れる事になるだろう。これはクエスチョン付くわ。
で、最悪なのが一番分かりやすいストーリーラインでもある草太への求愛。あのさ、、、登校中に一瞥しただけで別に近所に住んでる訳でも無い ”ガチの赤の他人” にメチャクチャ惹かれて県外まですっ飛んで行って、殆ど椅子だったのにいつの間にか惚れてました!って無理有りすぎるやろおおおお!!!!!!(笑)(笑)
実はすずめの過去繋がりでこの草太に何か有るんだと思ってた時期が僕にもありました。まさかまさか本当にあの坂での出会いが初見とは。。。現代のパパ活女子を皮肉ってるのかな?(「綺麗~」というセリフもまあまあ違和感だったのでここに何か秘密が有るのかと思ったが)
船に乗ったくらいの時点で完全に惚れてるし、もう意味分からん。
『君の名は。』では入れ替わりやその歳月と組紐が結びつける運命、『天気の子』なら同年代で似た境遇同士の絆というのが有ったけれども、境遇も環境も何も共通点が無い普通に赤の他人に惚れる要素どこよ。
ここが弱すぎてすずめがただの面食い尻軽女予備軍にしか見えんのよね(笑)。何に感動するのよこれ?作画が日本アニメ史上トップクラスに良いから余計に凄いモヤモヤさせられる。
絵面は凄まじいのに感情をどこに乗っけたら良いのか分からなくて、最終的にはすずめの境遇や遠回しに描かれる東北震災の苦い記憶に甘えているような気がする。
終盤では暗にすずめが東北出身だと明かされここで少しハッとさせられるような演出になっているのだが、ぶっちゃけまだ10年余りでまだまだ地続きで生活していらっしゃる方は大勢居るだろうし、もうミミズに絡めてエンタメ化して良いものか?とも思えてくる。
それにすずめは草太と同じミミズが見える者ならそれは昔からなのかそれとも最近開花したのかどっちなのかも明らかにされていないし、結局どっちが特別なのかどっちも特別なのか、草太はそういう家業が有るから分かるとしてもすずめはただの一般人のハズだがどういう理屈なのか。全くハッキリしない。最近は一周回ってこれくらいの大雑把なのが増えてる気がする。
話を戻して、本作とにかく作画は良いのだが、新海誠作品的なノリに甘えているのだ。少女が各地を飛び回って成長していくのは分かる。けどそれの終着点が登校中に一瞥しただけのよく分からんしかも年上の男への求愛ってのがキモすぎるし、『君の名は。』的に実は会ってました展開が有る訳でも無い。更に過去のすずめに介入していたのはすずめ自身で、その原理もよく分からず急にタイムリープ要素が絡んでくる。
前情報ですずめが日本各地を飛び回るのは知っていたので、この辺でもっと色んな人々との絆が深まって最後「オラに元気を分けてくれー!」的な展開かとも予想していたのだが、実際は道中でお世話になるだけ。結局仲間に加わったと言えるのはオラつき瀧君くらいで、それも半分はファンサービス。
すずめの性格がある部分ですげえ拗れているだとか、そういうギャップが有れば面白かっただろうに、 ”普通に聖人” なので各地で出会う人々とも問題無く触れ合い良好な関係を築いていく。なので、ある意味本当の成長がそこには無い。すずめは結構面倒くさい方が面白かったかもしれない。
何より圧倒的に致命的なのが、終盤にて無理矢理に感動的な雰囲気を演出してくるところ!!!『君の名は。』であんなに感動的な再会シーンを作れた新海監督はどこに行ったのよおおおお~~~!!!と言いたくなるほど、スカして置いてけぼりな状態だった。
えっと、、、そんなよく分からんアンバランスな男女が再会したところで感動の要素なんて無いし、むしろ育ての親関連とかそっちの方がよっぽど泣けるわ!と言いたい。草太も草太で実は病気ですとかすずめを昔救った人ですとかそんな関係性も一切無いので、「え、、この草太との再会に感動すればええん?」という空虚な感覚を抱かされる。
いっその事すずめに元彼が居てその苦い記憶が有るだとか、そういう構図ならまだ新しい恋として映えていたかも。純真無垢だからこそなのか?う~んむしろ初めての恋がそれで良いのかすずめ!?(って作中でも誰か言ってなかったっけ)
日本人にとって身近な地震とあの震災の記憶。それを絡めて日本各地を救い、元気にするすずめというバランス感覚なのだろうが、流石に欲張り過ぎだ。『君の名は。』では男女の高校生。『天気の子』ではやや男性向け寄りで不思議系ヒロインだったので、今回はやや女性向けにシフトさせているのだろうが、結果は失敗だったと言えるだろう。
単純に作品の面白さでいうとやはり今回も『君の名は。』を超えられなかったという印象。やっぱり大きくなるとシガラミも増えるということなのか・・・・・。
次は似た立場の男女でシナジー込み込みで行きましょう!新海監督!!