「【”あの一夏の友情と冒険を僕は一生忘れない・・。”1980年代、二人の少年の友情と、彼らを厳しくも優しく見守る大人たちの姿が素晴しき作品。夏休み、ロードムービー、海・・。期待に違わぬ作品である。】」サバカン SABAKAN NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”あの一夏の友情と冒険を僕は一生忘れない・・。”1980年代、二人の少年の友情と、彼らを厳しくも優しく見守る大人たちの姿が素晴しき作品。夏休み、ロードムービー、海・・。期待に違わぬ作品である。】
ー 今作は、夏休み、ロードムービー、少年達の友情・・、という名画の要素を総て入れ込んでいるが、期待に違わない作品である。-
■1986年、長崎の漁村が舞台。
家が貧しいが故に、クラスから浮いている少し変わった小学5年生の竹田(原田琥之佑)はいつも、独りきり。けれども、彼は媚びる事無く自分独自の正義感を保った世界の中で生きている。
同級生の久田(番家一路)は、良く喧嘩をするが、子供を想う、愛情深い両親(尾野真千子、竹原ピストル)と弟と共に暮らしていた。
そんなある日、久田の家に、竹本がやってきて・・。
◆感想
・ナレーションと大人になった売れない作家を、草彅剛さんが演じているが、この作品に余韻を与えている大きな要因は、草彅さんの穏やかで落ち着いた優しい声のナレーションであると思う。
・又、久田の両親を演じた尾野真千子、竹原ピストルの近頃観たことが無いような、掛け合い漫才の様な夫婦喧嘩のシーンも良い。
ー 今時、奥さんが”金●”とか、旦那さんに喧嘩の際に言うかなあ・・。けれども、何故だかほんのりするとともに、久田家の健全性が良く分かる。尾野道子さんが、昭和のお母さんを見事に演じているし、竹原ピストルさんのタジタジになりながらも、何とか夫としての面子を保とうとする姿も可笑しい。-
・そんな日々が続くが、学校は夏休みに・・。ある日、フラリと久田の所にやって来た竹田はぶっきらぼうに”イルカを見にブーメラン島に行くぞ!”と言って去る。
翌日、早朝5時にピンクのママチャリで出かけようとする二人。だが、そこに久田の父が現れて・・。
ー 普通は、止めるよね。けれど、久田の父(竹原ピストル)は、”ちょっと待て”と家に駆け込み、荷台に座布団を括りつけ“これなら尻が痛くならんだろう”と言い、竹田のポケットに札を強引に入れ、”途中で、ジュースでも飲め”と言って二人を送り出す。
何気ないシーンだが、竹田の父の善性を感じながら、観ている側は”これから少年たちの夏の冒険が始まる!”とワクワクしてしまう。-
・久田と、竹田は急坂で自転車を壊してしまったり、ヤンキーに絡まれたり、散々な目に遭いながら、漸くブーメラン島が見える浜まで、到着する。
そして、ブーメラン島まで泳いでいくも、直前に久田は足が攣って、溺れかけてしまう。そこに颯爽と現れた女性(芽島みずき)が海中に潜り彼を助ける。因みに彼女の兄(八村倫太郎)は、ヤンキーに絡まれた二人を、颯爽と現れ助けている。
ー 脳内で、颯爽兄妹と勝手に命名する。二人は子供たちの"正義の味方"の象徴であろう。-
・結局、二人はイルカには会えないが、元の浜に戻り颯爽お姉さんが焼いてくれた貝を頬張る。そして、二人は何かを護岸に”の”何か”を書いてから”颯爽兄妹”の軽トラに乗せて貰い、家に帰る。
・その後も、二人の交流は続き、海山の事なら何でも知っている竹田の豊富な知識に驚きながら、久田は急速に彼に惹かれていく。
ー この辺りの描き方も良い。ミカン畑を営む、竹田の天敵、”内田のじじい”(岩松了)と、竹田の追っかけっこをする姿がオカシイ。-
・そんなある日、竹田は久田が鮨が好きだがお金が無くて食べられない事を知って、彼を貧しき家に誘う。そこで、彼が久田に振舞ったのが、サバの味噌煮を海苔で巻いたサバ寿司である。美味さに驚く久田。
ー 竹田の鮨飯を握る巧さが、亡き父親譲りであることが、サラリと語られる。旨い。大人になった彼の職業も、暗喩している。-
・スーパーで働く、竹田の母(貫地谷しほり)が、久田と会った際に言った言葉とその言葉に敏感に反応する久田の姿の描き方が秀逸である。
”何時までも、お友達でいてね。あの子、余り友達がいなかったから・・。そういえば、あの子に怒られちゃったの。貴方の事を友達と読んだら、久田が、俺の事を友達と思っているか分からないんだから、友達って呼ぶなってね・・。”
ー その言葉を聞き、寂しさと少しの怒りを感じる久田が、石ころを蹴る姿。-
■今作の白眉のシーン幾つか。
・久田が、竹田に”何で僕を誘ったの?”と聞いた時に、竹田が珍しくはにかんだ様に答えた言葉。”貧乏って言わなかったから・・”
・ラストシーン、海岸の護岸に二人が書いたイルカに乗った少年の石で書いた絵を映し出すシーン。
・竹田の母が、交通事故で急逝し、子供達がバラバラに親戚たちに貰われていくシーン。竹田も親戚のおじさんに引き取られることになり、二人で田舎の駅で電車を待つ所に、息を切らしながらやってきた久田。彼が持ってきた袋の中には、サバ缶が沢山入っている。
天敵であった筈の”内田のじじい”も袋に沢山のミカンを持ってやって来る。
そして、電車がやってきた時に久田が竹田に何度も言った言葉。
”僕らは、友達だよね。又ね!”
それまで、久田に嫌われてしまったと思っていた竹田も嬉しそうに答える。”又ね!”
ー このシーンは、沁みた。分かってはいたが、沁みたなあ。そして、彼らは年を重ねても友人であることが、大人になった久田の言葉から分かるのである。ー
<今作は、1980年代の”斎藤由貴のポスター”や”キン肉マン消しゴム”を時代を表すアイテムとして、さりげなく映し出しながら、二人の少年の一夏の友情と冒険を描き出した、物語である。
今作を初監督し、オリジナル脚本も書き下ろした金沢監督の今後の活躍を期待したい。>
■舞台挨拶の時に思った事。
・尾野真千子さんが言った言葉。”子供は、只抱きしめれば良いんですよ。”
小さな子を持つ親である皆が、この言葉を実践したら、素晴らしいと思う。
・かなり大きくなった(様に見えた。撮影は昨年の秋だったそうである。)原田琥之佑君がコロナに罹患して登壇出来なかった番家一路君のパネルの横で、キチンとした受け答えをしていた姿は、立派だったなあ。
NOBUさん、コメントありがとうございます。
少年たちを助けるカッコいい二人でしたが、何か意図があるだろうとずっと考えてました〜
「韓国に行ったことない」という台詞が重くのしかかっていたのですが、彼らにも行く機会を与えてほしいです!
NOBUさん、こんにちは!
白眉のシーン、すべて共感です!内田のじじいの登場にもグッと来ますよね。
舞台挨拶見られたなんて羨ましい〜。そうそう、草彅剛さんのナレーションとラストの登場でグッと絞まりましたよね。
今後ともよろしくお願いします🤲