「汝、B級テイストを侮るなかれ。」シャドウ・イン・クラウド 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
汝、B級テイストを侮るなかれ。
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公開前からで公式の宣伝で「クロエがモンスターを素手でボコる!」が流されまくっていて、確かにアレは最高の見せ場だし、劇中のクロエならずとも「マジ??」ってなるしかないトンチキな展開が目白押しなんだけど、正直、これほど無駄なく出来ている映画も珍しいと思っている(3回観に行って確信した)。個人的には、娯楽としての映画に見せてほしいものが、この80数分間にだいたい詰まっている気すらしている。
とはいえ母性神話みたいなものには鼻白む部分もなくはないのだが、むしろ本作で打ち出されているのは男性優位社会クソ!という女性全般からの主張だし、あのキャラクターに関しては母親であることの重要さはわかるというか、キャラとして成立しているとは思っている。しかしむしろ痛快なのは、「ここはいいとこ!」と勘違いした役に立たないハンサムがひざまずいてプロポーズするような瞬間で、男が主体という幻想を気持ちよく打ち砕いてくれる最高のプロポーズシーンだった。
話がザルのバカ映画として半笑いで観る向きもあるように思うが、細かいところまで気を使った上で堂々と大嘘を付いてくれる、映画の鑑だと思っている。もちろんカーペンター風のシンセ音楽も、突然シフトチェンジする爆撃機内での躁ミュージックも最高。世評以上に噛みごたえのある映画だと思いますよ、マジで。
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