「1回見れば充分。」屋根裏のラジャー おひさまさんの映画レビュー(感想・評価)
1回見れば充分。
映像は本当に素晴らしい。シナリオも悪くない。俳優の演技が悪いわけでもない。演出だって悪くない。だけどつまらない。
何と言うか物語に奥行きが感じられない。キャラクターに深みが無い。
今までのスタジオポノックの作品にも言える事ですが、見たまま、それだけの物語になっている様に感じます。
唯一感動したシーンは、ガイコツのキャラクターのイマジナリーが新しい男の子のイマジナリーに選ばれる所だけ。
魅力的なはずのイマジナリーの仲間たちも、楽園で享楽的に暮らしている様に見えても本当は主たる友達を求めているのではないか。どんな過去や思いがあって、ミスターバウンディングはイマジナリーを食らってまで生き続けようとしているのか。
そういったキャラクターの奥行きを感じさせるセリフも演出も全く無いのです。
唯一、語られるのは最後に重要な役割を果たす老犬のイマジナリーの冷蔵庫だけ。その語られ方も非常にわかりやすく全部を見せてしまうので、それ以上を感じさせる余地が無いのです。
重要なキャラクターのはずのエミリが消されてしまっても、さらっとそのシーンは流されてしまう。
ミステリアスな黒猫のイマジナリーのジンザンも、何故か全くミステリアスに感じられない。エミリが消されるシーンでも何もできず、その後のシーンにはほとんど活躍どころか登場もしない。
監督はおそらくイマジナリー達の本質的なはかなさ、みたいなものを表現しようとしたのかな?とは思いますが、それも表現しきれていない。
はっきり言って監督の力不足なのだと思います。技術は素晴らしい。だけど物語を作る力は無い。
絵が上手なだけの秀才的な作品だと感じました。1回は観る価値はある。でも2回目は無いかな。ひまで他に観るものが無ければ観るかも。