「英国と思しき外国の町。 数か月前に父を亡くした少女アマンダ(声:鈴...」屋根裏のラジャー りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
英国と思しき外国の町。 数か月前に父を亡くした少女アマンダ(声:鈴...
英国と思しき外国の町。
数か月前に父を亡くした少女アマンダ(声:鈴木梨央)は、空想上の友だちラジャー(声:寺田心)との冒険で心の隙間を埋めていた。
空想での冒険が繰り広げられるのは屋根裏部屋。
時間も場所も超えての冒険だ。
しかし、空想上の友だちはいつかは忘れ去られるもの。
それは現実の子どもたちが大人になることなのかもしれないが、空想上の友だちを食べる怪物がいるのかもしれない。
いやいや、実際いるのだ。
子どもたちの空想を食って何百年も生き続けるミスター・バンティングという名の怪物(イッセー尾形)が。
アマンダの自動車事故をきっかけにラジャーは消えようとしているが、ミスター・バンティングはラジャーが消える前にを食ってしまおうと執拗に付け狙ってくる・・・
といった物語。
そこへ、忘れ去られた/忘れ去られそうになった空想上の友だちたちがかろうじて生き残れる世界の物語がラッピングされているので、映画の構成としては甚だ複雑。
この構成の複雑さに加えて、舞台を外国の町に設定したために(児童小説の原作があるので、原作踏襲と思えるが)、日本のアニメファンの関心を殺ぐことになってしまった。
加えて、画面上に登場する文字類が英語と日本語が混在していて、どこの国のハナシ?となっている。
これは明らかに失敗。
現実世界の舞台は日本の街に設定して(西洋風の雰囲気を出したければ、小樽なり札幌なりの西洋建築が残る地方都市にすればよかったと思うが)、空想の世界はまるっきりの異国風に設定するなど、現実と空想の差別化を図るべきだった。
もうひとつの手痛い失敗はタイトル。
「屋根裏」という語感にワクワク感が乏しい(というか、薄暗いイメージが付きまとっている)。
『そうぞうのラジャー』とか、原作小説を踏襲して『ぼくが消えないうちに 空想のラジャー』とか、もっと明朗でわかりやすいタイトルがよかったのではなかろうか。
上記二点はクリエイター側ではなくプロデューサー側の範疇だろう。
とまぁ欠点はあるのだけれど、作品としては上々の出来。
キャラクターをはじめとする影のつけ方の秀逸さ、細かいところまで動くアニメーション、終盤食われそうになるラジャーのムンク的な質感・・・などアニメーション作品としては優秀。
物語的には、裏読みも可能で、空想を食らって何百年も生き続ける敵役のミスター・バンティングがジブリの御大・宮崎駿監督に見えて仕方がなかった。
あれほどのイマジネーションを食べて生き続けてきたアニメ監督。
彼に戦いを挑んでいる物語とも裏読みできる。
(その伝でいくと、生き延びた空想上の友だちたちは、旧ジブリのスタッフたちと見ることも可能なのだが)
ジブリに戦いを挑みつつも、ジブリのイメージを引きずっているところもあり(「れいぞうこ」という名の老犬は『ハウルの動く城』のヒンの年老いた姿に見える)、そこいらあたりは痛しかゆし。
とはいえ、結構面白く、アマンダとラジャーの三つの約束、「忘れないこと。守ること。泣かないこと」の由来がわかるシーンなどは胸が熱くなりましたよ。