「“Nothing's impossible“」屋根裏のラジャー ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
“Nothing's impossible“
ターゲット層が丸かぶりな「ウィッシュ」と同日公開という時点から残念な感じが漂っており、初日の興行も惨敗と、観る前は大変な目に遭ってはいるけれど、そういう作品こそ応援しなきゃなと思い鑑賞。
観終わった後に、個人的にはこれはヒットできないわと思ってしまうくらい散漫な物語でした。アニメーションこそ良かったんですが、原作からの汲み取り方をミスったのかなと思ってしまうくらい、バラバラな感じが否めませんでした。
イマジナリーフレンドのラジャーが見えるアマンダがどう成長していくかというところに視点を置いた作品で、その道すがらファンタジーが織り混じるという作品で、否が応でもジブリが連想してしまい、どうしてもジブリの下位互換に思えて仕方がありませんでした。
子供の想像力の豊かさと、大人の想像力の乏しさの対比の描き方は良かったなと思いました。子供はワガママが故に色々な世界を構築することができますし、自分も小学生くらいの頃が面白いこと考えていたなと思いました。アマンダが自分中心に考えてしまっているのも、自分に何かできない事はないかとか、自分の言ってる事を信じてもらいたいという感情が先走っているからだよなと優しい目で見守ることができました。
大人になってしまったら、生きることに必死になってしまうが故に考えることを放棄してしまうんだよなというのも今の自分に重ねてしまうところがありました。
アマンダが昏睡状態になり、ラジャーが1人で世界を生きていく様子、図書館に集まっていたイマジナリーの様子、だいぶ端折られていたなと思いました。個性豊かなイマジナリーたちも背景と化していたので、ここをもっと観たかったです。
突然ラジャーが男女どっちにもなれるという要素には目を飛び出させましたが、良さが出ていたかと言われると唐突過ぎてなんとも言えませんでした…。ここがもっと丁寧に描写されていたら良かったのになと思いました。
ミスター・バンディングが悪役としての役割はしっかり果たしていたなと思いましたが、ストーカー的要素が強烈過ぎたせいか、ただの危ないやつにしか思えませんでした。目的もはっきり言わないままラジャーを捕らえようとしてもヤバさが際立つだけでキャラとしての良さが出ていなかったので残念でした。
長髪少女のイマジナリーはなんだかいただけだったなぁと高速移動するなというくらいの印象で、最後飲み込まれるところもそっかーって思うレベルで何にも残らないキャラクターになってしまっていたのが残念でした。
アマンダの想像した世界にラジャーと共に飛び出していくシーンはワクワクしましたし、水や空の描写が独特なアニメーションと一緒に世界観を構築していて面白かったです。
この世界観がメインで進めていたら、子供心弾んだと思いますし、スタジオノポックの良さも出たんじゃないかなとモヤっとするところでした。
声優陣はメインキャストに本職不在と不安要素はありましたが、概ね良かったと思います。
寺田心くんも鈴木梨央さんも違和感なかったですし、仲里依紗さんと杉咲花さんは何度も声当てを経験されてるのもあってキャラに合っていたなと思いました。
安藤サクラさんは、まんま安藤サクラさんだったので、酷いとは思いませんがそのまんま過ぎて浮いていたかなと思いました。
興行的な伸びは壊滅的らしく、口コミで伸びるかと言われたら難しいところ…。
公開タイミングもファミリームービーが多く公開される時期のど真ん中上映と全体的にツイていないなと思いました。もう少し宣伝が大規模だったらなぁとか思うところはありますが、結局は作品の良さが今後を左右すると思うので見守っていこうと思います。
鑑賞日 12/16
鑑賞時間 9:30〜11:35
座席 K-14