「これは名探偵コナンだ(褒め言葉)」名探偵コナン ハロウィンの花嫁 ししまるさんの映画レビュー(感想・評価)
これは名探偵コナンだ(褒め言葉)
長文失礼。
私にとって名探偵コナンは、ただ難解な謎をコナンが推理し犯人を追い詰めるだけの作品ではない。事件や謎に、人間関係や意外性がギュッと詰まっているのが魅力だと思っている。
そのような観点で評価するとこの作品は見事だった。過去にあった事件が他の事件を生み出す。事件は糸のように絡み合い、しかし繋がってコナンや他キャラクターに襲いかかる。事件にしろ人間関係にしろ、その他の部分まで、過去が今を作り、今が未来を作っていく過程がきちんと描かれていた。
その一つ。エレニカの兄が松田に助けられ、その松田は翌日に荻原の仇である爆弾魔との闘いによって亡くなる。その事があってナーダウニチトージと降谷、佐藤刑事、高木刑事、プラーニャ、爆弾魔が軸になってコナンに降りかかる事件となっている。非常に練られたストーリーだと感じた。謎も、伏線までしっかりと描写して、コナンの推理を追っている感覚になれる。推理シーンのアクションも近年多いが、子供たちに分かりやすくさせ、飽きさせない配慮だろう。素晴らしい。
そしてエレニカを抱きしめるコナンのシーン。どんな過去があろうと人を殺せば犯罪者であり、その汚名は一生剥がれない。心も汚れていく。今までの事件で犯人または他のキャラの自殺、殺人を阻止しようと行動していたコナンにとっては、エレニカはその象徴とも言える存在だったはずだ。それを言葉を多用せず抱きしめる。そのシーンにあるいくつもの描写が既にコナンというキャラを形作っていた。私は今作のような、破天荒でありつつも大事なところでキャラクター達をしっかり描写する作品が大好きだ。「キャラが生きている」と思えることこそアニメの醍醐味だと思う。
前の方から変更した音楽もそれをしっかりと支える演出を作り出してくれた。
opはメインテーマのイントロが短いために映像を寄せたのではないだろうか。凄く良かった。タイトル演出は毎年の楽しみではあったが、変わったとて違和感はない。
問題のアクションシーンも、近年はそのような路線でいっているのだからと理解している。むしろ描くのがたいへんだったであろう。関わった人には頭が上がらない。
言ってしまえば矛盾点はある。しかしそれは近年の映画の中では頭抜けて抑えられている。
総評として、とても好きな映画だった。コナン映画がまた好きになった気がする。