「刷新の映像描写」百花 berkeleyさんの映画レビュー(感想・評価)
刷新の映像描写
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百花
劇中で主人公はレコード会社に勤務し、作中の時系列では映画のテーマとは一見似つかわしくないプロジェクトについている。
そのバーチャルアーティストであるKOEは、映画の中では風変わりに写っている。
このデジタル全盛の時代において、常に刷新される映像表現と触れ合い育った世代は、将来認知症になって記銘力を失った際に(母百合子の想起の対象が過去のみに変わったように)、昔好きになったデジタル画像を心象風景として思い起こすことがあるかもしれない。
突飛な考えとなったが、主人公のような若い世代の記憶と、母親の記憶を相対して見せたように、KOEは現在から未来に至る人間の想起の対象、記憶の象徴のように画面内において存在する。
主人公は(描写は少ないものの)おそらく背景においてKOEのプロジェクトを進めている。そして、最終的に母親の記憶、図らずとも過去と向き合っている。
記憶は皆曖昧であり、本人にとって大切なものだけが少し残る。
時代の過渡期である現在において、その不安定さ、切実さを、温もりの下に表現している。
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