「静かな展開だからこそ、俳優の力量が試される映画」百花 菜野 灯さんの映画レビュー(感想・評価)
静かな展開だからこそ、俳優の力量が試される映画
静かで、光量の少ない映画です。ですが、ポイントでぐっとくるものもある映画です。暗さの中に、はっとするシーンがあります。最後のクライマックスは記憶というあやふやなものの本質をついているような感じもあります。
健康な人間はしっかり物事を記憶していると思っているけれど、記憶というのは自分の置かれた状況によって意味合いが様々に変わり、読み替えられていく。認知症を患った母親と、許せない記憶にすがる息子の対比で、記憶に生きるひとの在り様を描いているんだなって思いました。
こういうアクションの少ないカット、カメラワークの静かなカットは、まさに俳優の演技が映画の出来不出来に直結すると思います。その意味では、原田美枝子ってすばらしい女優だなって思いました。最後の施設でピアノを弾いた後に見せる表情。あれは難しい。誰に向かってはっきりどのような感情を出しているのかさえ、わからないというシチュエーションを演じた見事な表情です。
菅田将暉も、涙のシーンはほんとうに感情移入できるし、最後のシーンはさすがにここぞという締めのシーンを演じ切ってます。この二人の俳優の力を感じる映画でした。尚、長澤まさみの妊婦姿みれるのもレアです。
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