「サラッと観ちゃダメなやつ。」冬薔薇(ふゆそうび) こまママさんの映画レビュー(感想・評価)
サラッと観ちゃダメなやつ。
伊藤健太郎くんにはアシガールの頃から好感を持ってました(あの頃は芸名が健太郎だったな)。
あの事件?事故直後の行動にはがっかりしたけど、それ以上にこれで彼の俳優人生が終わるのかもしれないと思ったら寂しくて。
今回、監督がじっくり話を聞いて彼のために書き下ろした脚本で、彼が主演の映画にこれだけのキャストが集まってちゃんと全国公開されるっていう事実が嬉しくて、応援の意味も込めて観に行きました。
「主人公が寄る辺なく漂う話」ということでしたが、まさにそのままで、能動的に動くことのない主人公には全く共感できなかったし、なんなら嫌悪感すら感じました。
サラッと観ただけだったら、この嫌悪感だけで評価しちゃってたかもしれない。
でも。
嫌悪感を抱くのは、身に覚えがあるから。
共感も、できなかったんじゃなく、したくなかった。
それくらい、自分の隠しておきたい部分を抉り出されるような不快感のある、リアルなお話でした。
特に両親の放任具合が、自分のことかと思うくらいで気持ち悪かった。そこに想いはあるはずなんだけど、表現しないと相手にとっては無かったことになるんだよね。。
友利くんとの"友達"関係もすっごいリアルで、淳の態度のせいばかりとも思えない、人間関係の怖さが露わになってた。
それに対してお父さんと船員さん達の関係は、安心できたなぁ。毎日賄いを作って実直に仕事してたから、そういう"仲間"になれたんだっていう、希望があった。例え近い未来に離れることになったとしても、"仲間"と楽しく過ごした記憶があれば、その後も明るく生きていけると思うから。
淳も、友利くんとそうなる希望を持ってたんだろうな。いや彼には断られて当然だと思うけど。
親にも誰にも見ててもらえてないという思いを抱えたまま育つと、自分のアイデンティティーとか相手がどういう人なのかとか自分と人との関係について考えることよりも、見てくれてる(と思っちゃう)誰かと"一緒にいる"ことで安心しちゃうようになるものなのかな。。
ラストもやっぱり希望はなくて、淳の人生は最後までロクデナシなままなのかなと思っちゃって、鑑賞後はどよんとしちゃいました。
でも、この淳をこんなリアルにみせてくれた伊藤健太郎くんには、希望を感じます。
>みかずきさん
初めまして。コメントありがとうございます。
不寛容な社会、確かにそうですね。過ちを犯したことがあったり、そうじゃなくても自分にとって不利益だと思う人のことを避けたいのは、社会的な動物であるヒトの本能ですし。
賢くなった人間は、もっと寛容になった方が良いと理性では気づいているんですけどね。
でも、避けたい本能を納得させて寛容になるためには、その人を知る必要があると思っています。
この映画で、淳だけじゃなくお父さんもお母さんも友利くんも、お互いに知ろうと、知ってもらおうとしていなかったように思います。弁護士のお姉さんは、淳を受け入れようとしていたのに。
社会に受け入れてもらうために自分を出す訓練をするのが、社会の最小単位である"家族"だと思いますが、淳はその訓練をさせてもらえずに大人になったんですよね。
それでも、みかずきさんがおっしゃるように粘り強く生きていけば、船で写真を見た時に想像しただろう明るい未来が、いつか花をつけるんだろうと思います。
淳みたいな人にこそ、幸せになってほしいですね。
はじめまして、コマままさん
みかずきです
共感ありがとうございます。
確かに、主人公はどうしようもない奴かもしれませんが、
過ちを犯した人間の未来、再生、更生を阻もうとする傾向が強まっている不寛容な社会にも問題があると感じました。
終盤、主人公は、人との繋がりのなかで再生しようとしますが、
過去が邪魔して、断ち切るべき者との繋がりになってしまいます。
過去ある人間がそう簡単に善なる人と繋がることはできません。
それでもなお、人との繋がりを求めて粘り強く生きていけば
冬薔薇のように、いつか花咲く時は必ず来ると感じました。
がんばれ主人公と心の中で叫んでしまいました。
では、また共感作で交流させて下さい。
ー以上-
>満塁本塁打さん
初めまして。コメントありがとうございます。
確かに、彼の突破口としては最適にして最高でしたね。
コメディーもヒーローも違うし。
低評価の人はそれこそ今日から俺は的なエンタメを求めてたのかも。
でもこういう日本映画らしい映画は、なかなかヘビーですね。
今日はちょっと気楽に対極のトップガンを観てきました。
はじめまして、本作、「快適映画では無い=トップガン、マーベリックの正反対」ではありますが、飽きさせない展開工夫もされていて、わかりやすい「ちと自分が重なってイタイ」作品で良いと思いました。こういう「自分と向き合え」的な、話は複雑ですが、わかりやすい日本映画の強み見たいのもたまには・・・と思いました。高評価も低評価もアリだと思いますが、極端に低評価の人❓❓❓理解できません。伊藤健太郎はある意味「ズルい、狡猾」ですが、これしか突破口は無かったんだと思います。😊😊