「雰囲気は大作級?」プロジェクト:ユリシーズ Minaさんの映画レビュー(感想・評価)
雰囲気は大作級?
ローランド・エメリッヒ製作のSFだが、生まれのドイツに戻って製作に携わっている模様。ハリウッドでは壊すだけ地球を壊し、故郷では大人しい映画を製作するという見事な温度差である。本作の監督は、以前も「HELL/ヘル」という作品でエメリッヒとタッグを組んでいるのだが、前作でも本作でも共通している設定なのが、文明が滅んだ後の世界が舞台という事である。なんだか、エメリッヒ作品の投げっぱなし作品集のその後を描いた形にすら思ってしまう。 本作では地球に住めなくなった人類がケプラー209という惑星に住み、そこから地球に調査隊を送ってくるという所から幕を開ける作品だ。もちろん、地球をめちゃくちゃにしたのは人間であり、その代償はあまりにも大きいものだった。ケプラー209から調査隊を送った理由も実に身勝手そのものである。人類が捨てた地球には人間の生き残りである、マッズという原始的な種族が住んでいるのだが、彼らの存在が後半にかなり活きてくる様になっている。
主人公の心情の変化や過去の境遇等、それぞれのキャラクター設定はそれなりにしっかりとしており、想像以上に引き込まれる作品だったか、映像的に起伏が一切感じられず、まるで本作の舞台のように湿気が多く霧がかった様に霞んでしまうのである。一応SFだが、中盤からはSFの要素は出てこず、狭いコミュニティの中で支配するものと抗おうとする者の対比が描かれる形となっている。予算が大作並にあればもちろん更に完成度は高くなると思うが、ごちゃごちゃしたSF大作の箸休めとして、心穏やかに観る作品としては中々品質の良い作品では無いだろうか。
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