劇場公開日 2022年1月21日

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「嫌な気持ちになる」マザーズ Minaさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5嫌な気持ちになる

2022年9月15日
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妊娠とは家族にとっては幸せな出来事だが、1つの命を宿すとはメリットだけでなく、デメリットも存在する。本作はそんな負の感情を助長するかの様な人を嫌な気持ちにさせる作品である。子供を育てる資金もなく、住み込みで家政婦となった主人公が、勤め先の夫婦に代理出産を頼まれ、それを引き受けた事が引き金となり、恐怖が降りかかる物語であり、てっきりこの夫婦がイカれているものだと思っていたが、夫婦はポツンと一軒屋に住む田舎暮らしを好む夫婦であり、至って普通な心優しい夫婦である。いつ狂気を見せるのかと思いきや、狂気を見せたのは主人公。その原因が妊娠であった。妊娠により体調の変化はあるが、水を極端に拒絶したりなど異常な行動が現れ、逆に夫婦に不安感を募らせていく。それまでは特に恐怖するシーンも無く、人里離れた場所で静かに時を過ごしていたのだ。終始この静けさは続くため、多少なりとも睡魔と戦う羽目になったが、その静けさの中に垣間見える違和感や恐怖が良く目立ち、心の底から怖いと感じる。
産まれたその赤ん坊が何だったのか、結局のところ劇中では一切描かれていない。だが、代理出産という2人を介した出産により産まれた赤ん坊は明らかに「この世の者ならざる者」である事はラストシーンを見ても明らかである。正体も目的も分からずにただ周囲の人間が苦しめられていく姿はあまりにも観ていて怖く、辛いものがある。そんな不快指数マックスの状態の観客に自分で考えてくれと放り投げる作品はそう多くないだろう。そんな不親切な作品でも手元に置いておきたくなるのは少しの怖いもの見たさと、演者の鬼気迫る演技、製作陣の美的センスが合わさっての事だろう。個人的にも非常に評価に苦しむ作品だったが、極端な話☆1か5の両極端になりそうな作品である

Mina