「最後にシラノが愛したものは。」シラノ sasaさんの映画レビュー(感想・評価)
最後にシラノが愛したものは。
名作であるにも関わらずこれまで「シラノ」に触れたことがありませんでした。
ミュージカル映画が好きなこともあり、良い機会だと思って鑑賞。
一応、元になった人物と原作のあらすじだけは調べてから映画館に行きました。
①ストーリー
ストーリー自体は元が古典作品ということもあり、普遍的な内容で意外性は少ない。
よく言えばわかりやすく、悪く言えばありきたり。
ですが全体的に文学的なセリフが多いのは楽しかったです。
また、シラノの死の間際のセリフが気に入りました。
ロクサーヌに対して『I love you』と言うのかと思ったら、まさかの『I love my pride』。
日本語字幕では『誇り』と訳されてた気がする。(ちょっとうろ覚えです)
最後の最後で、シラノは自分自身を認めてあげることができたでしょうか。
人を真に愛するためには、まずは自分自身を愛することが必要なのではないかと思わされた。
②映像
映像はすばらしく美しかった。衣装も凝っていましたね。
全体的にうすぼんやりとしたり重苦しかったりする映像が多い中、最後の修道院のシーンの美しさが際立ちました。
真っ白な修道院に太陽が優しく差し込み、キラキラと光の粒が舞っている場面は作中屈指のシーンです。
③ミュージカル
楽曲自体は大きく印象に残るものはなかったものの、すべて完成度は高い。
キャストのみなさんの歌声も素晴らしかったです。
特に主演のディンクレイジさんの低音は心に染みますね。
ただ、今作のミュージカルシーンはイントロ等を挟まずに唐突に始まることが多いです。
(監督のコメントによると、あえてこの演出を取っているようですね)
普段ミュージカル映画をよく観る身としては、この演出に少し戸惑いました。
「これからミュージカルパートがはじまる!」というわくわくも、ミュージカル映画の好きな要素でもあるので。
あと本当に些細なポイントですが、ミュージカルシーンの布擦れの音が美しくて好きでした。
バサッ!!と音が揃うのは気持ちいい。
<最後に一言>
ストーリー・ミュージカル・演出、各要素に少しずつ物足りなさを感じてしまいました。
予告が面白そうだったので、ハードルをあげすぎてしまった感じはあります。
個人的にはそこまで刺さりませんでしたが、それでもいい作品には違いないと思います。