劇場公開日 2022年8月26日

「池井戸作品に、ハズレなし!」アキラとあきら bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5池井戸作品に、ハズレなし!

2022年9月1日
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鑑賞方法:映画館

『アキラとあきら』

池井戸作品お得意の銀行と企業との息づまる攻防戦を描いたバンカー物語。原作は、文庫本発売当時に既読。池井戸作品は、様々な作品が映画化やドラマ化されてきましたが、外れはないですね。水戸黄門的な、追い詰められ、追い詰められた末に、大逆転で、最後に有終の美を飾るストーリー展開は、日本人気質に合っているのでしょう。

今回の主役は、零細企業の父親が、銀行の融資を得られずに破産をし、子供の頃から過酷な生活を送りながらもバンカーを目指した山崎瑛と大企業の東海用船の御曹司で、身内のしがらみから抜け出そうとバンカーになった階堂彬の『アキラとあきら』。2人が幼き時からの運命の糸に導かれ、バンカーとして再会し、紆余曲折を経る中で、タッグを組み、東海郵船の会社運営危機の再建に挑むストーリー。

人を信じ、人を救い、そこに融資を施すことが、バンカーとしての熱い理想を掲げる山崎。一方で、情に流されず、常に現状を把握した上で、冷静に判断する階堂。相容れない2人が、真っ向からライバル意識を表に出して対立する。山崎を演じる竹内涼真は、そんな熱い男がピッタリの配役。また、端麗な顔立ちの中に、冷たさが漂う眼光の階堂役の横浜流星も、はまり役と言える。

銀行という組織は、これまで『半沢シリーズ』でも紹介されてきたように、厳密な縦社会組織と言えよう。そんな中で、異端児とも言える山崎の振舞は、多分、本来はあり得ないだろうし、一度、左遷をされた人間が、また本部に戻ることは、ほぼ無いことなのだろう。いずれにしても、何億という大金を、ハンコ一つで右から左へと動かせるバンカーというのは、怖さも感じる。

その銀行の象徴が、頭取役の奥田英二や本部長役の江口洋介だろう。この海千山千の2人で、途中までは好感は持てなかったが、最後は銀行員の本質に踏み込んだ、温まる判断をくだした所に、感動の涙を誘い、人間味も溢れた。

そしてもう一方で、彬の伯父に当たる役のユースケ・サンタマリアと児嶋一哉の2人が、だらしない経営者を演じ、ストーリーのアクセントとなっている。池井戸作品には無くてはならない、土下座シーンも含め、池井戸作品らしい映画に仕上がっていた。

bunmei21