「地方公務員を辞して大手アニメ制作会社に転職した斎藤瞳(吉岡里帆)。...」ハケンアニメ! りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
地方公務員を辞して大手アニメ制作会社に転職した斎藤瞳(吉岡里帆)。...
地方公務員を辞して大手アニメ制作会社に転職した斎藤瞳(吉岡里帆)。
転職後数年、ついに連続アニメの監督が回ってきた。
タイトルは『サウンドバック 奏の石』。
土曜夕方、アニメのゴールデンタイムだ。
しかし、そこに強力なライバルが出現する。
裏番組『運命戦線リデルライト』の監督は若き天才監督・王子千晴(中村倫也)。
『サウンドバック』プロデューサー行城理(柄本佑)は、話題アニメの激突を仕掛けていく・・・
といったところからはじまる映画で、前半がすこぶる面白い。
ビジネス優先、超ドライな行城Pは、製作の合間を縫って新人監督の瞳をビジネスシーンに引っ張り出す。
「覇権を獲る!」と宣言した手前、瞳もプロモーションを断り切れない。
そんな中でのアニメ制作。
とてつもなく非情、ハードボイルド映画のようだ。
行城P演じる柄本佑の鉄面皮ぶりが面白い。
対する『リデルライト』チーム。
王子監督はデビュー作で天才と評されたが、その後、スランプに陥っている。
前作は、途中で制作放棄したもよう。
そんな彼をコントロールするのが有科香屋子P(尾野真千子)。
制作途中で行方をくらました王子にヤキモキし、遂には「自分が監督する!」と言い出す始末。
うへぇ、こりゃ大変だ。
モデルがいるかどうかはわからないが、『パパリンコ物語』連載中の漫画家・江口寿史を思い出しました(古くて失礼)。
このプロデューサーvs.監督の描写が面白いのだが、両作の放送が始まってから面白さが失速。
原因はふたつあって、ひとつは制作されたアニメ作品が思ったほど画面に登場しないこと。
いくつかのシーンは登場するのだけれど、映画としては小道具扱いで、テレビ画面にの中とか、街頭大型ビジョンの中とか、背景の一部のような撮り方なのである。
たしかに、実写映画だからそれでいいのかもしれないが、アニメそのものをもっと観たいのよ、こちらは。
スクリーン全体に映してほしかったねぇ。
もうひとつは、対決の描き方。
視聴率競争になるのは致し方ないのだけれど、弾幕と主要キャラの追いかけっこと、安易な表現。
スクリーン全体で映すのは、そこじゃぁないでしょ。
ここは、生の人物の演技による、些細な描写の積み重ねと、視聴率のグラフ化(グラフこそ、壁に貼った小道具が相応しい)。
で、残念だったのは、最後の決着の付け方。
秩父市での一部屋区切っての両作品鑑賞の場が活かされておらず、両作品の最終回こそ、スプリットスクリーンで両方の作品を同時に見せてほしかった。
『リデルライト』がひと足早く終わりCMとなる。
画面が消されて、『リデル』側の観客が退場しようとすると、隣室からどよめきが。
慌てる『リデル』の観客。
『サウンドバック』は既にエンディング曲。
見逃した!と思わせておいて・・・
エンディング曲の後に、最後の最後のワンシーン。
これぐらいのじらし演出があってもよかったと思うんだけどね。
というわけで、前半は面白かったけれども、後半は失速。
秀作一歩手前ぐらいかなぁ。
評価は★★★☆(3つ半)としておきます。