劇場公開日 2022年7月1日

「トイ・ストーリーの外伝ではない」バズ・ライトイヤー Spiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0トイ・ストーリーの外伝ではない

2024年1月26日
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鑑賞方法:VOD

あまり勘違いする人はいないとは思うが、トイストーリーとは直接関係はない。
トイストーリーのバズの言動のオマージュ(と言うかトイストーリーの方がオマージュ扱いだが)シーンはちょいちょいあるものの、トイストーリーのバズを期待して見ると少し期待外れに思う。これがおもちゃの原点と大々的に言っているのだからもう少し寄せることも出来ただろうに、オリジナリティを優先させてしまっている。
特にザーグの存在は意味がわからない。トイストーリー2でザーグはバズの父親ということが判明するのだが、そのネタバレを裏切りたかったのだろう。本作ではザーグはバズの父親なんかではなくなっている。ではなぜトイストーリー2でザーグ(のおもちゃ)は自分はバズの父親だと言ったのか。どうあがいても納得出来る答えはないだろう。つまりトイストーリーを元に作られた映画でありながらトイストーリーの設定を否定しているのだ。これはあってはならないことだろう。もっと原作との繋がりというものを大切にしてほしかった。

トイストーリーとの関係性はたいして無いというのを前提に見てみると、内容としてはSFとしてわりと目新しさは感じられない展開ではある。ただ、そんな中でもチームの仲間が勝ち気なおばあちゃん(おじいちゃん?)だったり、序盤のどうでもいいシーンが終盤のピンチを切り抜ける伏線になっていたりと独自性や魅せ方はさすがのPIXARと言えるだろうか。ストーリー単体で見られればそこまで悪くはない展開にはなっていると思う。当たり障りのないSF映画を見たいと言うならこの作品はアリかもしれない。ただ、この作品を見たいと思う人はそんなものを求めていなかったのだが…。

映画公開時にネットで多く批判され、国によっては公開禁止にまで追い込んだバズの同僚が同性愛者だった問題。これに関しては物語に大きく関わるわけではないから正直どうでもいい。ただ、どうでもいいからこそなぜ同性愛者という設定にしてしまったのか。ポリティカル・コレクトネスを異様に意識しすぎている最近のディズニーのお膳立てのようにしか思えない。というのも、女性同士で愛し合うのは勝手にすればいいが、問題はその二人に子どもが生まれているのだ。説明はされていないが科学の発展とかなんとか適当に理由はくっつけられるだろう。ただ、そこには必要のない疑問がわざわざ生まれてしまう。PIXARのような小さな設定にもこだわる会社がここを適当に済ませるわけがないので、答えはポリコレに擦り寄った、ということだろう。これは話の整合性を捻じ曲げてまで入れなければならないものなのか。もしくはどうしても同性愛者を出したいのなら子や孫は出さなくても良かっただろう。あまりにも強引なこのやり方は批判されて然るべきだと思う。

とにかくトイストーリーの原点問題や同性愛問題など素直に見たくても見られない問題を抱えすぎてる本作ではあるが、細かいことを気にさえしなければそれなりに見られる作品と言ったところだろうか。まぁ、バズ・ライトイヤーのキャラクター性を利用しなければ話題にはならないような話の展開ではあるが。

Spi