「この映画を観てバズの玩具が欲しいと思ったアンディの感性を疑う」バズ・ライトイヤー てらゆうさんの映画レビュー(感想・評価)
この映画を観てバズの玩具が欲しいと思ったアンディの感性を疑う
バズがスペース・レンジャーとして大活躍する話かと思えば、大部分は挫折と葛藤、そして仲間達との信頼構築といった人間ドラマ部分に重きが置かれている。
ストーリーに関してもSF要素をふんだんに盛り込んだ展開が中心で、分かりやすい勧善懲悪ではない。
これらの「失敗を乗り越えていくのが人生だ」という1つのテーマを上手くまとめていて相応の出来にはなっている一方で、「トイ・ストーリーのスピンオフ映画」という付加価値があるからこそ楽しめただけで、単作映画としてのめり込むような魅力は無かったと思う。
以下特に残念に思った点。
①そもバズにヒーロー的魅力が無い
トイ・ストーリーのバズといえば、俊敏なアクションでレーザービームやウイングを巧みに扱い、素早い判断力と的確な仲間への指示出しで真っ直ぐに任務を遂行していくヒーロー的なかっこよさがあった。
本作のバズは悪い意味で人間臭い。最初から失敗続きな上、誰かに助けられてばかり。アクションはほどほどに悩みながら直向きに戦う姿勢ばかりにスポットが当てられている。
これでは「対人的な情愛」の感情は抱けど、「テレビの中の芸能人やキャラクターに抱く憧れや親近感」とは程遠い。
タイトルにも書いた通り、これでこのキャラクターの玩具が欲しい!と思う子供の気が知れない。
戦隊映画やアイアンマンのような、もっとIQ低めに「こいつかっけー」と思えるような映画で良かったと思うし、ファンの大部分はそれを望んでいたと思う。
②メッセージ性のことしか頭に無い
本作は人間ドラマを中心にSF要素を盛り込んだシナリオを展開してきたが、その人間ドラマもな正統派な薄味で終わってしまったのも残念に思う。
時間感覚が狂い自分だけが過去に取り残されていくという最も悲壮感のある展開をダイジェスト的に済まし、全く思い入れの無い新キャラ達との旅路が唐突に描かれる。
その後は王道的で全く悪いわけではないが、予定調和の域を脱しないので新鮮みや深みに欠ける。
この辺は「失敗を乗り越えていく人生」というテーマをどう上手く伝えるかを重視しすぎた結果なのだと思う。確かに話の締め方としては綺麗だったが、そこに至るまでの過程が普通すぎるし、感情移入させるための工夫も特に感じられなかった。
これはトイストーリー4から見られる悪癖で、トイスト4も「玩具にだって其々が行き着く人生がある」みたいなテーマ性を重視しすぎて、大事なものが色々おざなりになっていた。
③エモさが皆無
色々と書いたが結局のところ「おお!」と気持ちが高ぶる箇所が無かったのが一番の消化不良だった。
バズがレーザービームを駆使して敵をなぎ倒していくシーンとか、ザーグの正体が父親であると発覚するシーンの再現とか、ファンサービス的なシーンはいくらでも作りようがあったと思う。
そういうのを意図的に外したのかは分からないが、所ジョージを声優が外したのを筆頭に、「あくまで玩具のバズとは別物ですよ」というこだわりが尽く邪魔をしていたように思う。
身も蓋もないことを言うが、映画をベースに作られた玩具なんだから映画と玩具がリンクしても「別にいいじゃん」と思うし、声優も所ジョージで「別にいいじゃん」と思う。
あえてそういう部分を排除した割に、この程度の出来なのかというのが一番残念なところでした。
最後に、基本的にキャラクターの魅力が薄いなと思う本作でしたが、ソックスはかなり良かったです。
ロボット故に高性能なのでシンプルにバズより活躍してましたし、猫型ロボットならではの人間の感情を逆撫でするような鬱陶しさと可愛さの共存も抜群。かまいたち山内の起用もキャラクターにハマっていて良かったと思います。山内のサイコパスな感じが上手く作用していました。
私がアンディなら間違いなくソックスの玩具を買います。