「2時間に無理やり収めた弊害」ONE PIECE FILM RED letterさんの映画レビュー(感想・評価)
2時間に無理やり収めた弊害
filmシリーズに入ってからは全部映画館で見ていて全て面白いと思っていたが、今回は詰め込みすぎだという印象を受けた。adoの歌は素晴らしかったしライブシーンは音響も相まってとても良かったのだが、それに尺を取られすぎたせいかウタというキャラに対する掘り下げが薄く、四十億巻を読む前と読む以後でウタの印象が変わるくらいには掘り下げが薄いなと感じた。具体的にはウタのシャンクスの真実を知ってしまってからの、期待されているからもう進むしかないという表とシャンクスに会いたいという裏の二面性があるというキャラ設定をとても軽視しているなと感じた。序盤でのウタはそういった裏と表という葛藤を抱えている様子はおくびにも出さず海賊嫌いというキャラとして描写されているし、シャンクスの真実を知っていたにも関わらずルフィと口論になった際、シャンクスが国を滅ぼしたんだ、と自ら言っているのは明らかに矛盾しており、観客を驚かせるためにウタというキャラを軽視しているように見受けられる。また、後半にシャンクスが悪かった訳では無いという真実が明かされてから急に二面性の設定を思い出したかのように「もう止まれない」とウタに言わせており、先述したようにウタという尾田先生の考えたキャラクターが、映画を見るだけではきちんと伝わっていないと感じた。また、ライブを長くしすぎたために尺が足りないのかめまぐるしく過去編と現実とで場面が代わってしまうため、起承転結でいうと起のあとはずっと転転々、、のようになってしまっており、観客を置いてけぼりにしている感が否めなかった。
もちろん、尾田先生の考えたウタというキャラクター自体に魅力はある。戦闘シーンの描写も素晴らしく、特にウソップの見聞色を活かして親子をリンクさせたり、シャンクスの重要な設定も明かされたり、中将にすら膝をつかせる異次元の覇王色が見れた。adoの歌も映画館ということもあってとても迫力があって楽曲自体も面子が豪華な分いい曲が多かった。このように、素材自体はとても良く、見どころも沢山あったにも関わらず、2時間という枠に無理やり収めた結果、中途半端な映画になってしまっているなと感じた。世界で一番自由な王を目指す漫画に2時間という縛りは重すぎたのかもしれない。
P.S.これは本編とは関係ない事だが、宝箱に埋まったガイモンに女?が出来ていたのがこの映画で最も印象に残った。あの宝箱に埋まった女性とはどうやって出会ったのかとても興味が湧いた。