「物語の「核」であるウタに感情移入しにくい作りになっている。」ONE PIECE FILM RED 独白体形式さんの映画レビュー(感想・評価)
物語の「核」であるウタに感情移入しにくい作りになっている。
昔からのOnePieceファンです。
シャンクスの一面を見ることが出来て概ね楽しめましたが、総合的な結論から言うと個人的には微妙でした。
ウタに全く感情移入できなかったからです。
私は未視聴でしたが、映画公開日前に公開されたYoutube【ウタ日記 UTA diary】を視聴しているかどうかや、劇中のAdoさんの楽曲を聴いていたか、で大きく意見は変わるのかもしれません。
おそらく劇中の楽曲の変遷でウタの内面を説明したかったのだと思いますが、初見では同時に流れる戦闘シーンの視覚的な情報処理(今誰が何をしたとか)に脳のリソースが多く割かれ、リアルタイムで楽曲を通してウタの気持ちにまでは踏み込めませんでした。
キャラの多さ故の圧倒的な情報量はウタへの感情移入の妨げになっていると感じましたし、迫力が悪い方に作用していたように思います。
特典の40億巻に書いてあるウタの表と裏のギャップに苦しむような印象付けがとても薄いように思いました。
エレジアに一人残されてからのウタを主観にしてドラマを厚くしてもらえればウタに感情移入することができたかもしれません。
本誌の麦わらの一味達の過去編のように、もっとシンプルにウタの辛い気持ちや、心の成長を描いていればラストの感じ方は変わったのではないでしょうか。
本編との時間軸の整合性については今更ナンセンスだと思っています。
昔からジャンプ作品の劇場作品とはそういうものでしたし。
40億巻の尾田先生のプロットで読むととても簡潔でしっくりくるので、決められた作品の時間に対して要素が多すぎて、各シーンごとの視聴者の感情のコントロールが雑になってしまっているのだと思います。
色々な制約がある中でまとめ上げるのは至難の業だということは重々存じておりますが…
OnePiece本誌では幾度となくキャラクターの感情に揺さぶられてきましたが、血はつながっていないとは言え「赤髪のシャンクスの娘」という特大カードを切った割には心を動かされなかったな…というのが素直な感想です。
広告を見て期待しすぎたのかもしれません。
いろいろ批判的なことを書きましたが、画の勢いだけでも大衆向けとしては十分楽しめる作品だと思います。
なにより25年間待ちに待った赤髪海賊団の戦闘は感慨深かったです。