「「ワンピースらしさ」って何だろう?」ONE PIECE FILM RED 愛騎さんの映画レビュー(感想・評価)
「ワンピースらしさ」って何だろう?
おれはめっちゃくちゃ面白かった。最高に楽しめた。
ウタのライブパートが物語にリンクしていて、戦闘シーンをものすごく盛り上げていたのも最高だったし、ファンが待ち望んでいた赤髪海賊団との共闘シーンを、夢世界と現実世界の2つに分けて見せすぎないようにしつつもはちゃめちゃにかっこよく仕上げるバランス感覚も最高だった。
何より、ウタの行動原理が「みんなを救いたい」ではなく、本当は「私を救ってほしい」だったこと、そしてそれが叶った後に「みんなを救う」という終盤の話運びはシャンクスたちのかっこよさも相まって最高だった。
ただ、おれが理解力のない馬鹿なせいもあり、なぜ楽しい夢の世界から辛い現実に帰らなければならないのか、そこはもう少し掘り下げてもよかったかなとは思う。
映画館を出た後、ポスターを見てなぜウタが泣いているのかが分かったのも最高だった。
最後の最後、直接的な離別のシーンを描かず、どこか寂しさのある「海賊王に俺はなる!」というセリフを入れてルフィの決意を示して〆る描写も最高だった。
とにもかくにも最高だった。
正直作画が危ないシーンはあるにはあるが、あのライブシーンと終盤の戦闘シーンを見れば予算の都合があったであろうことは伺えるし何の問題もない。
ウタの歌唱パートは人によっては受け入れられないものがあるかもしれないし、
AdoのMVじゃんという感想もみられるけど、ウタウタの実の能力者をメインにした作品で歌を前面に押し出さなくてどうするんだと思うし、
そもそも歌唱パート自体の楽曲と作画のクオリティがとんでもなく高いのでそんな意見は参考にしなくていい。ごちゃごちゃ言わずとにかく画面に溺れろ。Ado歌うめえ。
何よりこの能力は漫画という媒体では絶っっっっっっっ対に表現できないだろう。
その意味でも本作の価値は十二分にあるのだ。
余計なことと承知で言わせてもらえば、前作スタンピードのように、キャラクターが大集合してお決まりの技を決めて、ウィーアーやメモリーズを流せばファンは喜ぶだろうという安易な描写がなかったのが個人的に本作の評価を押し上げる一因である。
2回観ても3回観ても噛み応えがある作品である。
ルフィが出てわかりやすい悪役とドンパチやることがワンピースらしいとは、俺は思わない。
ワンピースで見たかった「赤髪海賊団のバトルシーン」「ルフィとシャンクスの共闘」
この2つを納得できる形でつなぎ合わせる因果としてウタを配置してファンに応えた本作は紛れもなく”ワンピースフィルム”だ。
これまでワンピースを愛読してきてずっと「待て」を食らっていた赤髪海賊団ファンのおれは
終盤のトットムジカ戦で脳汁ドバドバになったので、同じような境遇の方がいたらぜひ劇場に足を運んでほしい。
谷口監督、素晴らしい作品をありがとうございました。