コーダ あいのうたのレビュー・感想・評価
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惜しい
やがて聴こえる“饒舌な歌声”
映画を見終えてこれほど爽やかな気分を味わったのは久々ではないだろうか。自分の夢と家族の板挟みになりながらも、ひたむきに努力する物語は数あれど、“よくある映画”の一言で説明するにはあまりにも勿体ない作品だ。
聴覚障害というハンディキャップのある一家で一人だけ耳が聞こえる主人公・ルビー。彼女が持つ才能というのが歌という巧みなプロット。当然、家族に自分の才能を聞かせることはできないし、理解してもらうことも困難という物理的な壁が家族との間に生じてくる。
天邪鬼な私からすれば、これはお涙頂戴映画として斜に構えて見てしまうところだが、家族一人ひとりが曲者でありながらも、どこか憎めないキャラクターというのが地に足の付いた人物に見えて嫌味がない。家族劇はユーモアたっぷりで描かれ、娘の夢を応援できないのも、自分たちの生活の中で耳の聞こえる娘が家族にとって必要であるからこそ、というのも説得力が生じてくる。
しかし、次第に彼女が持つ才能を家族が理解し出す出来事が訪れる。自分の才能をどう伝えるか?どう理解してもらうか?その描き方、表現力にこそ、本作の映画としての魔法が宿っている。特に終盤のルビーの歌唱シーンは正に本作の白眉。どんなシーンかは是非ご覧になって頂きたいが、彼女があることに気づいた瞬間に、それは“饒舌な歌声”となって、家族を通り越して、スクリーンの向こう側にいる我々観客の琴線を優しく撫でてくる。ここで歌われる曲のチョイスがなんとも絶妙だ。
コロナ禍で閉塞感の拭えない世の中であるからこそ、こんなに純粋に夢を追う映画があって良いじゃないか、と思えるほどの爽快感。特にステイホーム、オンライン学習などで対面で授業できないと嘆いている若い学生たちにこそ、本作をオススメしたい。夢を追うことはこんなにも気持ちが良い。
ベるるるるるるナるるドゥ
最高だったなぁMr.V。リメイクなので少し抑えましたが、個人的には刺さりまくりで、終わった後も脳内が痺れてました。シンプルさが素晴らしい。お陰で、イラッとする人物の立ち位置(考え方)に入り込む隙間もあるので、色々と考えさせられましたね。邦画だったら引っ張りそうなクラスメイト関係があっさりなのも好印象。だもんで、お願いだから和製リメイクは踏み止まって頂きたいと切に願います。
あれこれ言ってますが一番心を掴まれたのは、気になる彼の序盤のTシャツでした。「キングクリムゾン!!しかもディシプリン!!」ってなり、危うく脳内脱線する所でございました(多少したけれど)。誰の趣味(チョイス)だったんだろうなぁ、良いよねキングクリムゾン。しかも評判的には今ひとつのディシプリンって辺りが、もうたまらん!…物語には全く絡みませんけどね(笑)。
泣けました泣けました。ただ…
CODA=child of deaf adult、親がろう者である子ども[健聴児]だと最初に説明される。
「生まれてきたあなたが耳が聞こえると知って、わかりあえない気がして不安だったわ。(健聴者の)母と(ろう者の)私がわかりあえなかったように」という母の言葉。
でも、主人公ルビー(健聴者とその両親、兄(ろう者)はわかりあって幸せにやってこれた。父と兄の漁業で、貧乏だけど一家なんとかやってこれた。話せないから魚を安く買い叩かれている気はするけれど。
ただ、家族には、ルビーが大好きな歌は、聞こえない。聞こえないからわからない。歌が上手だから、才能があるから家を離れて音楽大学へ行く道があり、ぜひセレクション受けるべきだ、と先生が言ったって、わからない。だって、聞こえないんだから。
家だって、思い切って始めた直接販売組合で大忙しだ。手話通訳ができるルビーがいなくなったら、どうなることか。
主人公ルビー本人も迷いに迷う。兄ちゃんは「家に縛られるな。俺に任せろ。これでも兄貴なんだから」と言ってくれる。でも市場に買い叩かれてるのを毎日見てきたし。母親を心配させたくもないし…
さあ、どうなるか?という話。とにかく、後半を観てほしい。学校で行われたコンサート。そしてはたして大学で行われるセレクションには行くのかどうか?!
まずコンサートで、無音になるシーンを堪能してほしい。そう、これがルビーの家族がいる世界なんだ。これを経験したら、俺たちも「わかってやれよ」とか安易に言えない。だって、聞こえないんだから。とにかく、ここ。そこで初めて俺たちは、主人公の家族たちを理解できる。
…そして、その夜の父親とのやりとり。
最後は書けないけど、夫婦でのSEX大好きな父ちゃん、あんた、最高だよ!
というわけで、ちゃんと泣けました!それはもう。
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本作、作品賞候補に入っているけれど、自分としては脚本少し弱く感じる。オリジナルのフランス映画「エール」の農業を漁業に変えた舞台設定でのリメイクだけれど、"大いなる課題だと言ってきたことをほっぽらかし気味のままで結末" ってのは、やはりいまいちだと思う。そこは同じ課題でも畜産業のがまだなんとかなりそうで、「エール」のがましだったかな。
おまけ(妄想)
自分には、「最初に監督が描いたエンディングはこんな感じだったんじゃないかな」と思えるストーリーがあるけれど、「それじゃあ、最後に運良く人に押し付けただけに見えちゃうだろ」といった理由でNGとなった、と予測してます。
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2022/7/29追記。
「コーダ」と「エール!」 どちらも聾唖者と音楽。
娘が歌うことの道を進むと自分達は不便になる。歌うことの素晴らしさは、聴こえないので全く知ることはできない。体感できない。つまり自分たちには、娘がその道を選ぶことを肯定する要素は一つもない。
だけれど、娘がやりたい道を進むことを(納得し)祝福する。これって、けっこうすごいな。愛ってこんな感じなんだな、と思いました。
俺が「コーダ」に若干冷たいのは、「組合を立ち上げて直接売る。聾唖者の自分たちでやる」という取組みがいかに大変か、主人公なしでそれを続けられるか真剣に悩んでるという両親の不安をさっきまで描いていたのに、決断の後は、エンディングで「でも大丈夫でした」的な映像が流れるだけって、さすがにご都合主義過ぎないかなあ、と感じたためです。
「エール」より「コーダ」では、両親と兄の取組みが大規模化したので、違和感もだいぶ大きくなっちゃったんですね。映画の主題にはコンサート、オーディションの演出含めとても感動しています。あくまで個人の感想です。
この映画の世界に浸っていたくなる
ママは私が聾唖者だったらよかったのにって思ってる?
あなたが生まれたときこうやって抱いてたの。たくさんのチューブをつけてね。あなたが耳が聴こえると分かって、心が沈んだわ。
思いもよらない言葉に私は何を理解したつもりで感情移入していたんだろう、と突き刺さる。
ルビーの声が優しくて序盤の練習の歌声だけでも泣きそうになった。
ずっと家族と一緒だったの
私のせいにしないで
人に責任を押し付けないで
苦しさも描いているのに、ずっとあたたかい感じがする映画だったのは家族が明るくて家族を思っているのが感じられたからだろうか。
星空の下でお父さんのために歌ってくれ、というシーンは涙なしには見られない。
オーディションのシーンはみんなの気持ちがあふれてて胸がいっぱいになる。
歌ってるときの気持ちをルビーが手で表したシーンも印象的だったな。
素敵なシーンがたくさんあってこの映画の世界に浸っていたくなる。そんな映画だった。
お父さんが凄く良い!
私もCODAなので見ないわけにゆかないとずっと思ってた作品。
お父さん役…私の父に似てる!性格は違うけど。
ルビーの気持ちがよくわかる。
ハンディゆえに損してる親…を見れば自分の人生後回しにしても親の面倒を見るよ。親のためばかりじゃなくて、自分の中の正義感のため。CODAはそんな人が多い。
それを逆に越えてくる家族の愛が凄い!本当はすごーく娘が頼りなのに…。通訳者を手配できるとしても、家族が通訳してくれるのとは安心感が全然違うからね。
合唱ステージの撮り方は良かった。なるほどこんなふうかと。。
手話って言語はとても表情豊かで、気持ちがストレートに伝わる。建前がない。
アメリカと日本の手話は違うけど、大体分かった。手話を知らないひとにもなんとなーく伝わるところ多かったのでは?
ルビーみたいに豊かな手話表現をしたいと思った。
CODAは、ろう文化の中に生まれ、健聴者の社会で育つバイリンガル(いえ必ずしも全部の子供が手話を覚えるとは限らないんだけど)。子供の頃から世間と親の橋渡しをして、でも親が知ったら悲しむだろうって言葉は橋渡しできず、子供の胸にしまい込んじゃったりする。
CODAゆえの苦悩はある。
この存在、この言葉がもっと広まると良いな。
ところで何故か、エール!て映画は見た事なかったんだけど…さっそく見なくては。
腕を広げて、プライドを捨てて。
愛と歌と下ネタと。
学校のコンサートのシーン。
聾唖者目線(耳線?笑)での1分弱の無音。
映画を観る人達を信じてなければ恐ろしくて出来ない手法ではないか。究極にまで削ぎ落とした演出に驚いた。
その無音の中映る、笑顔の人、感極まって泣いてる人、リズムを取る人、肩を寄せ合う人達。そんな姿を見て父と母が娘の音大へのオーディションを許すに至った流れは綺麗。
またラスト、聾唖者の家族に歌の素晴らしさが伝わるように音大のオーディション中に手話を交えながら歌う主人公の姿に感動した。
もちろんこの伝え方があるのは作品上予測できてはいたが、溜めて溜めて満を持していざやられると、歌声の圧倒感と相まって心が震え上がった。
あとこれでもかと挟んでくる下ネタは、健常者聾唖者関係なくボーダーレスという。
いやむしろ手話の方がジェスチャーありきなのでよりディープじゃんか笑
ちなみにリメイク作品なの知らなかったので、今度リメイク前も観てみたいと思う。
無声と歌声で心振るわせる最高に胸熱な物語
久しぶりにめちゃくちゃ泣いた。中盤ぐらいからずっと目頭が熱くなったまま。
あらすじから感動するプロット。少しでき過ぎたストーリーではあるが直球で心に刺さる。
家族と一緒に過ごせること、自分のやりたいことを実現すること…人生においてどこに幸せを感じるか、求めるか。
障害を抱えていても周りから見たらあまり変わらなかったり、逆に幸せに見える部分だってある。
いま自分の置かれた環境を愛せるかどうかが大切なのだろう。
声がなく手話だけで字幕を追うことになるのに、それでも感情が伝わってくる素晴らしい演技。それもそのはず聾唖者の3人は実際に耳が聞こえない役者を起用したとのこと。
クライマックスでの歌いながら手話をはじめるところにやられた。
耳が聞こえない人の感覚を体感できる長い無音にチャレンジした演出も効果的。
ちょっと下ネタや下品な表現が続くので苦手な人は要注意。個人的には軽やかでユーモアが効いていて面白かったが。
主演の子のひたむきさが胸を打つ。歌声は(名門音大に受かるレベルかは分からないが)温かく広がり心に響き深く思いが伝わってくる。
お父さんがすごく愛らしい(アカデミー賞助演男優賞にノミネート)。歌の先生も徹底したいいキャラ。
ミュージカル映画ではないが歌も楽しめて、改めて音楽って素晴らしいなとも思える一作。
身体(心)から響く歌声が届いた♪
大きな家族愛を描いた感動作
予告編を観て面白そうだったのと、非常に評価が高かったので今回鑑賞しました。
本作は2015年公開の『エール!』のリメイク版になりますが、こちらの作品は観ていないので、あくまでも本作単体での評価になります。
結論ですが、めちゃくちゃ良かった。劇中何度も涙腺が緩みそうになりながらも、何とか耐え抜きました。歌も素晴らしかったし脚本も素晴らしかったし、何より役者陣の演技が本当に良かった。劇中に登場する聾唖者は、実際に聾唖の俳優さんたちが演じることで非常にリアリティがありましたし、主人公ルビーの父親を演じたトロイ・コッツァーはアカデミー賞助演男優賞にノミネートしたり、聾唖者として初めてのオスカー賞候補になるなどの輝かしい功績を残しました。この演技は実際に見てみないと素晴らしさが伝わりません。ぜひ劇場でご覧になって欲しい作品です。
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海辺の町で、家業である漁の仕事を手伝いながら高校に通うルビー・ロッシ(エミリア・ジョーンズ)は、両親と兄との4人家族で唯一耳が聞こえる健聴者(コーダ)であった。彼女は歌が好きだったが、過去に喋り方を揶揄われた悲しい経験から人前で歌うことを苦手としていた。ルビーは、片思い中のクラスメイトであるマイルズ(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)が選択授業で音楽の授業を取っているのを見て、自身も音楽の授業を選択する。その授業で教師を務めていたベルナド・ヴィラロボス(エウヘニオ・デルベス)は、彼女の並外れた歌の才能に気付き、バークレー音楽学校への進学を推薦するのだが……。
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恥ずかしながら私は本作で初めて「CODA」という単語を知りました。「Children Of Deaf Adult/s」の頭文字を取った言葉で、「聾者の両親を持つ健聴の子供」という意味です。家庭内での会話ができないため発話に若干の問題を抱えてしまったりするらしく、本作の主人公であるルビーも入学時に「声が変だ」と同級生からからかわれたという描写が出てきますね。
本作で一番多くの比重を占める部分と言えば、やはり「CODA」であるルビーと家族との関係性の描写。家族でただ一人の健聴者であるが故に、通訳のような仕事を付きっきりでやらされていた彼女が、家族から離れて夢を追いかけたいと思うようになる。彼女の家族もまた、難聴者に対して厳しい社会の中で健聴者の彼女無しで生活ができるように奮闘する。「親離れ」と「子離れ」を同時に描いた作品で、家族映画として本当に素晴らしかった。
障がい者を「神聖で無垢なもの」として描かず、「一人の人間」として描いていることに好感を持ちました。最近は特に、障がい者やLGBTQの表現に対して風当たりが強く、彼らをどこか「穢れなき存在」のように描く作品が横行しているように感じていました。私の知り合いにも障がい者や同性愛者がいますが、彼らは決して神聖な存在ではなく普通の人間です。良い人ももちろん多いけど、悪い人だっています。だからこそ、最近の映画における障がい者の描写には強い違和感を感じていました。
しかし本作において聴覚に障害を持ったルビーの家族は、どぎつい下ネタも言うし昼間からセックスはするし、どこにでもいる「一人の人間」として描いているんですよね。私はこれこそが正しいポリコレの姿のように感じます。
本作に登場する聾唖者は、実際に聾唖の俳優さんが演じています。監督であるシアン・ヘダーは彼らの出演に対して「聾唖の俳優が聾唖の人物を演じるのが自然だ」とパンフレットのインタビューで語っており、映画の撮影が始まる前に手話をマスターし、手話通訳を介することなく直接演技指導を行なったそうです。このエピソードだけでも監督の映画に対する並々ならぬ情熱と出演俳優へのリスペクトを感じます。
主人公の父親役である聾唖の俳優トロイ・コッツァーも「こんなに良い現場は初めてだった」と語っています。そしてそんな素晴らしい現場が、トロイ・コッツァーをゴールデングローブ賞やアカデミー賞に助演男優賞としてノミネートするという快挙を生んだんでしょう。
語りたい感動的な場面や笑った場面がたくさんありますが、挙げればキリがないので割愛。ぜひ多くの方に鑑賞してほしい映画でした。オススメです!!
【4月1日追記】
アカデミー賞作品賞と、トロイ・コッツァー氏の助演男優賞受賞、本当におめでとうございます。アカデミー賞をきっかけに上映館数がまた増えたらしいので、更に多くの人が本作を観てくれそうですね。一ファンとして、非常に嬉しいです。
良い映画なのですが、リメイク。個人的には何事にもオリジナルに価値を...
温かいファミリーヒストリー
生まれた我が子の健常を願わない親がいるという価値観に目からウロコでした♪
しかし、我が子の幸せを願わない親はいません。
家庭環境がどうあれ、それまでの関係性がどうあれ、最終的には抱き合って涙するものだと思います♪
心が洗われました!
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