「"You're All I Need To Get By…"な映画」コーダ あいのうた stoneageさんの映画レビュー(感想・評価)
"You're All I Need To Get By…"な映画
ティッシュとハンカチを握りしめて、泣く気満々で見始めたんですが…ホロっと来た程度で、号泣とはいきませんでした(笑)
見終えて、「あぁ、アメリカ映画だなぁ」と…(笑)
悪い映画では決して無かったんですけどね…でも、合唱部の歌にマービン・ゲイ&タミー・テレルなんて、いいセンスしてます!(笑)
*タイトルの"CODA"とは、「Children of Deaf Adults= “⽿の聴こえない両親に育てられた⼦ども”」との事(この場合、子どもは聾唖者でも健聴者でも、こういう言い方をするのだろうか?…この作品の主人公ルビーは健聴者ですね)。
*"聾唖者を親に持つ子どもが抱える問題"という作品テーマについて言えば、かなり楽観的な物語でした。主人公は良き友人や教師などの理解者に恵まれ、また最後には聾唖の家族の理解も得て、独り立ちする事が出来たんですから…。
しかし、多くの場合、そうではないのだろうという事が想像出来ます。
*この作品の中には、聾唖者と健聴者のズレとして、あるある?なエピソードが多く挿入されていたのが面白いなと思いました(一部私見ですが…)。例えば、配膳の時の音がうるさいとか放屁しても音の大きさが分からないみたいな事から、大麻とかSEXとか感覚的な刺激が強いもの?or優位なもの?に強く流されやすいとか、手話と共に顔の表情を混えるせいか自己主張が強く取られやすいとか…。
*この作品の印象深い場面に、ルビーが所属する合唱部のコンサートに、両親と兄が鑑賞に来るシーンがあります。ルビーが歌唱する最もハイライトとなる部分で、途中から全くの無音声となります…。健聴者の私にとっては、なんとも虚しいというか、なんだか心許ない場面でした…そして、とても不安感が増しました。聞こえないということが、…場の共有の困難さ、意思疎通の破綻、そして孤立化・疎外感…まるで言葉の通じない知らない国へと放り出されたような気持ちになりました(ちなみに、手話は、日本語・英語などのように、一つの言語として認識されるものであると昔学びました…手話言語ということばがあります)。
バークレー大の試験の時、ルビーは家族に対して手話をまじえて歌います。家族はルビーの声を知りません。その声がボブ・ディランのようなダミ声なのか、あるいは天使のような声なのか、想像すらつかないのです…。
その心は伝わったのでしょうか?
たとえ音は無くとも、ルビーの手話もまたその歌声と同じだけ価値のある表現であったのでしょうね。そんな気がしました。
*音楽教師が、ルビーや生徒たちに指導する場面が、最高に面白い…個人的には、この映画最大のハイライトでした。アメリカ映画で、スパルタ指導なシーンが登場すると、なんかドキドキします(笑)
*ルビーが大学入試の際に歌うのは、ジョニ・ミッチェル作の『青春の光と影』(Both Sides, Now)。歌唱中、対訳が字幕として出るんですが、???…昔、初めて聴いた時も、歌詞カードに載っている対訳を読んだ覚えがあります。ちなみに、その時もチンプンカンプンでした(笑)この歌は、ちょっと内容が抽象的で、胸にストンと落ちて来ないんですよね…笑
*母親役のマーリー・マトリン(Marlee Matlin)は、かつて映画『愛は静かさの中に』で主演した女優さんと知って、ちょっとビックリ(笑)
この映画、めちゃくちゃいいんですよねぇ…観た当時の個人的ベスト・ワンでした(笑)この映画も、オススメ!笑