劇場公開日 2022年1月28日

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「匠の技が光る一作。」殺すな yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0匠の技が光る一作。

2022年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

上映時間約50分と、劇場映画としては短めですが、テレビドラマの時間標準的な長さとなっています。少しずつ人物同士の関係や背景が見えてくる演出は見事です。そうした人物造形は、細かな台詞に頼らず、ほんのちょっとした表情や仕草の変化、小道具などによって語られます。

このそぎ落とした演出力で、50分という作品時間を描く試みは見事に成功しているのではと思いました。ほとんどの舞台を橋のたもとと二つの民家の内部に限定したのは、予算上の都合もあったと思われますが、それがむしろ、同じ場所の表情を、時間帯による光の変化を使って描くという演出を効果的なものとしています。筆を作る際の手の表情、調度品などを映し出す光も美しく、どのように光を当てれば対象が最も映えるのか知り尽くしている、まさに職人技術の塊のような作品です。

大きな起伏というものが全くというほどない筋立てなので、すぐにチャンネルを切り替えられるテレビでドラマとして公開するのは正直言って難しかったのではと思いますが、だからこそ精神を集中して鑑賞できる劇場向きの作品ではないかと思います。

藤沢周平の短編小説が原作ですが、せっかく安藤サクラを起用したのだから、お峯像も現代にあわせて多少なりともアップデートして欲しかったかな、とは思いました。

yui