「蒼き狼の覚醒」デューン 砂の惑星 PART2 機動戦士・チャングムさんの映画レビュー(感想・評価)
蒼き狼の覚醒
その者、蒼き瞳をして
金色の砂原に降り立つ
喪われし一族との絆を……
王蟲に導かれし者の、壮大な叙事詩を、圧倒的な映像で、魅せてくれます。ただ、体調を整えてから観ないと、こちらの意識が砂塵に呑まれてしまいます。仕事帰りに観てきたら、何度も陥落しました。
昔読んだマンガで、とある人物のしたことが、「恨吞天下」の四文字で、表現されました。幼少期に、他国で人質として、非道い扱いを受けた結果、復讐心だけで、大陸を制覇した人物のお話。政と云う名の少年は、例外を一切認めない、ヒトより法律を優先する絶対法規国家を造りあげ、万民の恨みをかいました。そちらは「東周英雄伝」を読んでもらうとして、本作のポール、この後どうなっちゃうんですかね。昔の映画なら、このまま立派な王様になりましたとさ…で、終われたと思いますが…。
新聞の解説によると、家長制の強い時代に創られた原作だとか。領主連なる勢力や、絶対王制になりきれない皇帝とか、封建的な世界。そんな時代にもてはやされた英雄観を、今の世界に当てはめてると、どうなるかな。現在、プトラーと揶揄されるヒトが、凍てつく大地に棲息しています。あんなヒトでも、生まれる時代を間違えなければ、優れた統治者として名を残したかも知れないそうです。
映画の続編できるか知りませんけど、ポールは、世界を救済するマフディとなるか、覇道を爆走する復讐の王となるか、気になるところです。ただ今は、圧巻の映像に酔いしれるのが最善でしょう。
「蒼き狼と白き牝鹿」
井上靖の「蒼き狼」。何故、テムジンはユーラシア最大の巨大帝国を造りあげたのか。その謎に迫る名著ですが、そのテムジンの生涯をシュミレーションした、往年の名ゲーム。2部構成で、部族統一を成し遂げる1部を攻略すると、テムジンは、部族会議を経てチンギス・ハーンとなり、世界制覇の2部が始まります。
今回の映画のラストが、ゲームの1部終了画面に見えてきました。数多のヒトを、死に追いやるかも知れぬ覇道の扉は、開いたようです。蒼き狼の試練と、白き牝鹿の苦悩は、始まったばかり。この先、どうなるかな。