「物語からの逃亡を試みるチャニ」デューン 砂の惑星 PART2 merさんの映画レビュー(感想・評価)
物語からの逃亡を試みるチャニ
まずは、パート1に引き続きロケーションや小道具、衣装、CG、サウンド、すべてのクオリティが素晴らしかった。雨の降らない砂の惑星とそこに住むフレメンやワームなどの生物、ベネ・ゲセリットの企みと能力、選ばれし者ポールの予知能力……あれだけ壮大な世界観を、違和感なく再現したことが驚き。ムアディブ(砂漠に住むネズミ)だけ某アニメーションみたいなCGで和んでしまったが……。
妹がポールの予知にしか登場しない、ダンカンがほとんど出てこない、最後の決闘も分かりやすく決着が着くなどなど、あれでもストーリーは随分削ぎ落としたんだなというのが分かる。削ぎ落としてあのボリュームと絵の強さということは、原作がどれほどすごい作品なのかということがしみじみと感じられる。そしてそれを40年前にデイヴィッド・リンチ監督が映像化しているのも改めて驚き。(もちろん本作と比べれば幾分レトロスペクティヴだが、その技術的な制限も相まってリンチ版は味がある。)
そして何より、本作の見どころはゼンデイヤ演じるチャニの存在だろう。原作やリンチ版と比べても明らかに「強く、独立したキャラ」設定になっている。ポールとジェシカがフレメンの信頼を得ていく中、ポールを愛しつつも盲目的な信仰と権力への従属を拒否する。正直(作中でいつも隣にいた女性フレメンのように)他のフレメンと同じ環境で生きてきたのに、それもリーダーであるジャミスの娘としての役割もあったろうに、なぜチャニだけ周囲に迎合せず冷めているのか…というのは引っかかるけれど、デューンの新たな主人公として、「これは…この後どうなるんだ?!」と思わせる展開になったのは現代版ならではだと思う。
それにしても、ポールとチャニのロマンス要素だけ、あの世界観の中でどうしても浮いているように感じてしまうのは私だけだろうか…?文化も言語も全く異なる星の人間と「なんとなく良い感じ」になってロマンスに発展するか?という。まぁ、ティモシー・シャラメとゼンデイヤっていうイメージがかなり強いキャスティングだから余計に際立って見えるというのもあるだろうけど…。エンドロールでこの2人専属のシェフの名前が出てきたのには驚いた。