ラーゲリより愛を込めてのレビュー・感想・評価
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亡くなっても無くならないものもある。
シベリア抑留生活をことを描いた作品。
シベリアに送り込まれ、ソ連の支配下のもとで強制労働をさせれる。そこで亡くなる人多く、そこでの日本人同士の人間模様と残された家族、そして生還したあとのことまでが描かれ、これが事実に基づくものだというのが怖いくらい。
その中で山本が仲間に与えた影響は計り知れず、抑留生活の過酷な環境下で生きるということを必死に伝える姿は信念がなければできない。
それが遺書を覚えて、生きて帰った人が口頭で伝えるということにつながったんだろうなぁ。
酷いシベリア抑留
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終戦間際に満州にいた日本兵がシベリア抑留され強制労働の日々を送る。
二宮もそんな中にいて、持ち前の公平さと優しさで仲間達から慕われる。
仲間を思っての主張も強く、懲罰房に入ることもよくあった。
数年が経って帰国できることになるが、二宮らは帰れなかった。
濡れ衣でスパイ容疑をかけられ、戦争裁判で有罪となったため。
こうして強制労働も9年くらいが経ち、二宮は病の床につく。
仲間らがハンガーストライキを起こしたおかげで二宮は特別に病院へ。
そこでガンと診断され、余命3ヵ月を宣告される。
仲間らは二宮に遺書を書かせた。でも文書はスパイを疑われ没収される。
なので4人で分担して遺書を記憶したのだった。で10年経ちようやく帰国。
で4人がそれぞれ二宮の家を訪問、遺書の内容を伝える。
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事実に基づいた話だからか、そんなに面白くなかったな。
あの過酷な環境下で、みんな自分のことで精一杯やと思うんよな。
そんな中に二宮みたいなヤツがいるなんて、何かリアリティが薄い。
あとハンガーストライキの件も本当にあった話なのだろうか?
即座に殺されてもおかしくないのに、ちょっと考えにくいけど・・・。
あと遺書を分担して覚えるクダリも、ホンマかいって思ったわ。
4人で1/4ずつ覚えるより、全員が丸々覚えた方が良くない?
それなら1人だけでも帰国できたら全部伝えられるわけやし。
1/4ずつ覚えて、全員が運よく帰国できて、全員が二宮家に来た・・・。
おれが冷めてるだけか?ちょっと都合よ過ぎませんか、ってなってしまう。
それにしてもソ連ってホンマに利己的で冷酷でクソなイメージよな。
北方領土の件もそうやけど、とにかくろくなもんじゃない。
そして昨今のウクライナの件でも、何も変わってないのよな。
やっぱニノの演技ってすごいわ
戦争系は心が痛くなるからあまりみないようにしてきましたが、戦争について考えさせられる映画です。
特にニノの死ぬ間際の演技が、声が出せない演技がすごい。泣けます。
希望を捨てたり、持ちづらい昨今
これをみて、自分は甘えてたな。
希望持って生きよう!
極限状態で信念を貫いた強さに感動する映画
シベリアに拘束された日本兵たちの生き様が儚くて美しくて切なかった。
極限状態でも自分の信念を貫けるのか?
自分の頭脳は自由だと言い切れるのか?
二宮くん演じる主人公の真の強さに感動すると同時に、偉大すぎて涙が出る映画。
帰国後、1人1人が思いを紡いだ姿もまた感動で、戦時中はこうやってアナログに人と人とが繋がって想いをつなげてきたのだと思うと、もっと今の私たちは泥臭くできることがあるなと感じた。
希望って苦しいものでした
タイトルのラーゲリより愛を込めての時点で、絶対バッドエンドなのに希望ってどういうことって思い、気になって見てみました。
希望って言葉の意味を、知るきっかけになった映画でした。
希望って耳障り良くて、よく聞く、言ってしまえばありふれた言葉でした。そう思ってしまうのは、私が絶望の淵に立ったことがないからなのだと思います。
平和な世の中で育ってしまったからだと思います。
本当の希望は、絶望から生まれ、絶望に押しつぶされそうになり、そして、その希望に人は支えられるのですね。
言葉の意味以上に学べました、、。
そして、主題歌の『Soranji』も諳んじるからきてることは予想していましたが、ラストに向かうシーンで合点がいき、そこでまた辛くなってしまいました。
絶望の中から希望を見出す姿に、とても心が苦しかったです。
とても辛い映画で、苦しくて、痛かったです。
希望は山本さんから伝わり、広がり、届いたところで少し苦しみから解放されました。
最後に妻が思い出した山本さんの姿が求婚のときだったのところが素敵でしたね。
戦時中ではなく、希望にあふれた山本さんらしい姿を想像した奥様にも、感動しました。
離れて生きるということ
「日本で落ち合おう」という約束を胸に、強く生きる夫婦の話
山本(二宮)の生命力と影響力が凄まじい。
だが、希望を失ったものに希望を持たせるのは可能なのだろうか。
帰ることよりも家族に会うことを希望にしていた相沢や松田。
文通が可能になったことで、会えない事実を知ってしまう
悲しみにくれ自暴自棄になる中で、「生きてればいい事がある」なんて言えるのだろうか?
診断されて帰ってきた元気の無い山本に対して怒る相沢、ごもっともだと思う。
見えない、知らないからこそ信じ続けていられるものもある
病状が見えた途端に落胆する山本に希望が~と語る資格はなかったのでは?
シーンによって髭があったりなかったりしたのは何なんだろう。髪変わらないなら髭も変わらなくて良くないか?
中島健人の演技が素晴らしかった。
クロの存在のメッセージ性は何とも言い難いものだが、。
リアリティが欲しい
泣くために見た訳ではないが、全く泣けない。
シベリア抑留、悲惨で壮絶だったと想像します。
ですが、皆さん服が綺麗、シミひとつない。
雪の中遺体を埋葬する際も、ほんの少しだけ土をかけるだけ。俳優さんを労ったのか、、
ロシア人からの虐待も、見た目にも分かるほどソフトタッチ。整えられた頭髪に髭、不潔さや汚らしさ皆無の捕虜。
また、北川景子が色白で綺麗なこと、真夏の炎天下で秋刀魚を置き、知り合いとお話しなんかも、魚腐るよって、そっちが気になる。
抑留中に現れる黒い犬もちゃんと調教され、毛艶も最高。野球の玉拾いまでしてくれる有能ぶり。
最後の遺書も、手紙のやり取り出来るなら、郵送もあったのでは⁉︎そもそもペンとノートが与えられてるなら、それは記録を残せと言ってるような物と勘ぐりたくなる。
兎に角、映像にリアリティを感じない。
中で歌われる歌も、オーマィダーリンを繰り返すが、何故この歌?何故日本の歌でない?
歌に意味があるにしても、この時代に英語の歌を皆が歌うのには違和感を感じる。
いや、オープニングシーンからそんな臭いはしてたが。
生きる事死ぬ事
時代は、戦後間もない頃。
日本は、戦争に負けた。それでも日本に帰る事が許せない兵士達がシベリアの極寒の地で捕虜として働かせていた。そこには、ただただ毎日同じような労働を強いられ、苦しみ与えられ、人間としての人格を失いつつある環境だった。
そんな中でも小さな希望を捨てる事なく、誰かの笑顔を為に最後まで、最後まで、生きようとする男がいた。
そんな彼の生き方に最初は、反発するものもいたが次第に彼の真っ直ぐな姿勢に引き込まれていく。
誰もが人を殺したいなんて思うわけない。
とにかく死にたいと思うわけない。
そんな風にさせてしまう環境があるだけ。
そんな環境でも気持ちだけは、折れないで戦い続けた人物が実際にいたというのがすごい事だなと感じた。
自分なんかって思う事ばかりだけど、
自分なんかって思っているその時でも誰かは、希望を持ち続けているのかもしれないと思えると明日もまた、生きていたい!と思えてくる。
そんな希望を与えてくれる作品でした。
タイトルなし(ネタバレ)
終盤、船を追って海に飛び込むクロ(犬)を見て泣いた。
この辺りから最後まで、泣かせにくる。泣いた。
ひどいな、つらいな、と思って見ていた。
多くの人、たぶん全員が遺書を書けなくて、亡くなった本人は無念で家族は悲しいだろうなと思った。
人望がある山本さんだから終盤の出来事があった。
映画で描かれていない他の人たちのことも考えた。
クロ役のワンちゃんは訓練してできるようになったとテレビで見た。かわいい。一緒に日本に行けてよかった。
帰国(ダモイ)を信じて
感想
第35回東京国際映画祭オープニング作品
運命に翻弄され再会を願い続けた2人ー11年に及ぶ愛の実話
零下40度を超える厳冬のシベリアで、死と隣り合わせの日々を過ごしながらも、家族を想い、仲間を想い、希望を胸に生きる男が実在した
3、4回泣きました!!
まず山本幡男と妻モジミ、ニノと北川景子演技が素晴らしすぎました。ニノはやっぱり演技凄いんだと思いました。
自身を卑怯者と呼ぶ松田を松坂桃李、最年少で足の悪い新谷を中島健人、昔ながらの帝国軍人相沢を桐谷健太、山本の先輩で心を閉ざした原を安田顕と脇を固める俳優陣もみんな素晴らしかったです。
松田の卑怯者をやめる発言でみんなでストライキしたのは泣けました。
そして犬のクロは癒しの存在でした。
厳冬のシベリア収容所は言葉にならないくらい辛いものだと思います。
野球のシーンはみんな笑顔で希望に満ち溢れたよきシーンでした。
私も山本幡男さんみたいな人格者になりたいです。
※生きる希望を捨ててはいけません。帰国(ダモイ)の日は必ずやって来ます。
人に評価される人間性とは
映画化するにあたって、脚色は当然あるだろう
視聴後、wikiで情報収集。
大筋で、山本氏の人間性や遺書が遺族に届く事に大きな相違を感じなかった。
シベリア抑留は国際法に違反しているのは当然ながら、その状況に投げ込まれ、帰国に絶望する祖先を見るのは辛い。そんな環境で他者に気遣い(適切な表現かはわからないが)、帰国への活力を呼び起こし、多くの命とその家族の想いを、彼の行動が救ったのだと想像する。
彼のため、彼の家族のため、彼の言葉を届けに行くという事実にやはり涙せずにはいられなかった。
今まさに、ロシアが戦争中であり、昨年から続いて2023年とは思えないような非人道的な行為が今なお行われている話も聞こえてくる。
改めて、多くの人に視聴される事を望む
同じストーリーを何百万の魂が辿っている
あまり日本史でも詳しく扱われず、ほとんどの若者は知らないのではないか?と思われるシベリア抑留。家族を待ちわびる人たちにとって「もはや戦後ではない」というフレーズはどう響いたのか。
二宮くん演じる山本がまさか日本の地を踏めずに亡くなってしまうとは思わなかった。ソ連兵に没収されてしまった遺書を、ラーゲリの親友たちがそれぞれに暗記して日本の家族に持ち帰り、読み上げるシーンで号泣。思想と希望は誰にも奪われない。
最近、カンボジアの虐殺記念館にも足を運んだばかりだったので、人の幸せを奪うのはいつも人なのだという歴史に胸が痛んだ。
これは過去の話ではなく、パレスチナやイスラエルやウクライナで現在進行系で起きている悲劇と同じ。これまで何百万人の人たちが、愚かな闘いの犠牲になってきたんだろう。
北川景子の「おかえりなさい」で涙腺決壊でした。一番言ってあげたい言葉だっただろう…。
祖父もシベリア抑留者だった
見始めて、すぐに自分の母方の祖父もシベリア抑留者だったことを思い出した。確か3年ほどして帰国したが、骨と皮ばかりになってきた夫に祖母はびっくりしたっていっていた。
最後まで抑留されたのが、日ソ共同宣言までというのは初耳。12年は、あまりにも長く過酷だ。今のような防寒着が十分でない時代の肉体労働。
途中で、バタバタと倒れて帰らぬ者となった人も多かったと聞く。
二宮は、「硫黄島からの手紙」と同様、肩の力が抜けた人物を好演。達観したかのような表情、舌癌になって弱りゆく姿などでの演技力が光った。北川景子は、あの時代には、ちょっと光過ぎている感じもあったが、凛とした女性を演じきった。安田顕、松坂桃李、桐谷健太、中嶋健人もそれぞれ良かった。
史実に基づいて小説化され、映画化までされたストーリー。過酷な状況下でも人間として大切なこと、希望、信念、思いやり、真心を忘れずに生きようとした山本と、それに感化されて生きることに希望を持ち、過酷な抑留生活を乗り切った兵士たち。実話の持つ力は、やはりズシンとくる。
こういう話を見聞きすると、日本人であることに誇りを感じる。
ラストシーンのネタバレがあります
特に前半が重く苦しく、そういう雰囲気が苦手な人にとってはいっそ苦痛やもしれません。
というか私は苦手なのでちょっとしんどかったです。
とはいえ全体を通して基本的にしんどめというか重めなので苦手な方はお気を付けて。
ストーリーも良くて泣けるし演技も文句なしだしめちゃくちゃ良いんですが、洗濯物の向こうに山本幡生(二宮和也)が見えるところだけはちょっと面白くなってしまって、そこだけなんかこう…どうにか…と思っていました。
概ね満足です。
面白かった!
ストーリーラインがとても綺麗。
冒頭の数分でストーリーライン「戦禍により家族と生き別れ、収容所に送られた主人公が、苦しい家族のもとに帰り着く話」がぱっとわかる。
その後の展開がなんとなく読めるな…と思いつつ話を追っていくと、ミッドポイントのあたりで主人公の死。せめてこれだけでも…と仲間たちが必死に守ろうとした遺書のノートもロシア兵に没収されてしまう。おいおいどうするんだよ…という絶望のなか、主人公の死から2年後にやっと解放の日が訪れる。無機質な電報の数文にて主人公の死を伝えられる家族。主人公の生還を信じて待ち続けた妻は「嘘つき!」と泣き崩れる。
安心してほしい。結論として、主人公はきちんと家族のもとに帰ってきた。
主人公の誠実さ、ひたむきさに感化され、なんとしても主人公の夢を叶えようとする収容所の仲間たちの奮闘する姿がよかった。
なおラスト、長男の結婚式での長尺のスピーチがくどかった。冒頭の結婚式につながる演出は良いが、スピーチの内容はばっさり切って数分短くしたほうが絶対に美しい。ということで〆のキリの悪さ分-1して、それでも大満足の⭐︎4つ。
肝心なところ辿り着くまでが長く飽きてしまう
「ラーゲリよろ愛を込めて」を観ました。
原作の小説は読んでいません。そして原作がノンフィクションであることをはじめて知りました。
内容については簡単に言うと、第二次大戦後シベリアに抑留されていた男が病死し、その遺言を仲間が伝えるというものです。
映画は134分あり、遺言を届けるまでが長く飽きてきます。そしてそのほとんどが事実ではなく脚色された部分らしいのでもっと短縮した方が良かったと思います。
遺言4通の紙は没収されてしまい、仲間4人がそれぞれ記憶して遺族に伝えるという重要なシーンをもっと感動的に描いてほしかったと思います。
それにしても北川景子はキレイなままで10年後でも変わっていませんでしたね。もうちょっと老けさせた方が良かったと思います。
それと最後の結婚式のシーンも蛇足だと思います。
何より驚いたのは犬のクロは事実ということでした。
戦争は終わってからも戦争だ。
戦争は、終戦で終わるのではない。実話を元に
戦争の悲惨さを伝えた映画。どこまでが実話で
どれが映画としての演出なのかは分かりませんが、
涙そして涙のストーリーが展開していきます。
遺書を記憶して家族に届けるシーンは、
まさに号泣ですね。今の時代、いろいろと
考えさせられる映画です。
いわゆる終戦は終戦じゃなかったことに衝撃
実在の人物たちの話だということで,一つ一つのエピソードに説得力があった。ラーゲリで仲間達の暮らしを支えた山本さんは、誰に恥じることのないまっすぐで誠実な一生を,ラーゲリのベッドで終えた。
ジャンルは戦争映画だけれど戦闘シーンはなく、ラーゲリでの不当な扱いをら淡々と描く。それは驚くことに終戦と言われた年からずっと何年も続くのだ。
こんなこと許されるのかと思ってしまった。
国交を回復してようやく帰国が叶う。12年もの月日が経っていた。
戦後と一言で言うけれど,どれほどの時間と多くの人のかなしみや苦しみが詰まっていて、それは私たちが思うよりずっと長かったのだなぁと衝撃だった。
二宮くんの演技,素晴らしかった。同僚達の届ける遺書は涙なしには聞けなかった。
心に沁みる映画だった。
祖父が抑留経験者と知る
ネタバレ
泣けた・゜・(つД`)・゜・
遺書を記憶して家族に届ける。
なんて思いやりのある行動なんだ・゜・(つД`)・゜・
北川景子が良い演技してたわあ。すごい。
二宮の訃報を受け取った後の泣きの演技がね。
心が辛くなった。
父の父がシベリア抑留から帰ってこれた人らしいけど、
父にそういう話をもっとたくさん残してくれていたらなあ。
知らなかったよわたし。
わたしが物心つくまで唯一生きていた母の母とも、
もっとお話していたらなあ。
知らなかった(言われたけど覚えてなかった?)こととはいえ、
抑留経験者の親族として、シベリア抑留について何も知らなかったのが恥ずかしい。
シベリア抑留は歴史上の出来事、くらいの認識だった。
まさか身内にいるとは。
一気に当事者意識が芽生えた。
あんな、考えるだけでも過酷な環境を生き、日本に戻り父を育てたなんて。
戦中、戦後をたくましく生きてくれたご先祖様に感謝です。
本も読もうっと。
22.12.31 映画館
希望よ届け
戦時中、遠い異国の収容所に捕虜として抑留された旧日本軍兵士。
その数は如何ほどに上るのか。帰国出来た人たちもいれば、無念のまま命を落とした人たちも…。
本作は山本幡男氏が題材になっているが、こういう作品の場合、その個人の物語であり、同状況の多くの一人一人の物語でもある。全員が同じ苦しみ、辛さを体験した。
では何故、山本氏の経緯が残されているのか。
語り、伝え、届けたい思いがそこにはあった…。
実際の記録によると、戦後ソ連によってシベリア抑留とある。
戦後捕虜になったなんて何て不運と思うかもしれないが、1945年8月に終戦というのは後世だから知っている事。当時の人たちはその時に戦争が終わる=日本が敗戦するなんて思ってもいなかった。
まだ“戦時中”に捕虜となり、それがたまたま終戦直前だった事。おそらく抑留に終戦と敗戦を知ったであろう。
どれほど衝撃を受け、身に降り掛かった悲劇を嘆いた事か。
苦しめるのはこれだけに留まらない。
帰国の方向へ。日本に帰れる!家族に会える!
が、この時帰国出来た人たちもいれば、山本氏を含め別収容所へ移された人たちも。
喜びから一転、叩き落とされ…。その時の絶望は我々には計り知れないだろう。
ロシア語に長け、通訳や翻訳の任をしていた事から、スパイ容疑。軍法会議で25年の刑。
あまりにも不条理。ソ連は彼らを“戦争犯罪人”と罵るが、どっちが犯罪だ…?
マイナス20℃以下。極寒の地での過酷な重労働は言うに及ばず。
ソ連軍の厳しい監視体制もさることながら、同胞たちの間でも軍と同じように上下の関係。
一等兵の山本氏は上官や軍曹の目の上のたんこぶに。特に軍曹の相沢からは徹底的に目の敵にされる。(相沢は創作の人物らしいが、モデルになった人物は何人もいたらしい)
絶望的な状況、過酷な重労働、不当な仕打ちをするソ連軍に加え、同胞間で殺伐とした関係…。
ここは地獄。絶望しかない。
希望など無い。持つ意味も無い。
全ての希望は絶たれ、悲観と疲労の果てに朽ちていくだけ…。
…いや、希望を持たせる者がいた。
言うまでもなく、山本氏。
帰国=ダモイを信じる。
自分も帰れる。皆も、全員が帰れる。
必ず。だから、希望を絶ってはいけない。
博識で、穏やかな性格。
歌を歌い、文学や詩を教える。
重労働の間の、僅かな憩いの時。仲間たちで野球。ユニークな口調でアナウンスし、皆を盛り上げる。
軍曹や自分を売ったという元上官。罪を憎んで人を憎まず。
現状打破や不条理には立ち向かう。捕虜たちの間でソ連兵士に物申したのは異例だったとか。
人やその尊厳を重んじる。
従わざるを得ない中で、そんな存在は異端児や変人視される。
だがやがて山本氏の姿や信念が周囲を突き動かしていく…。
自らを“卑怯者”と呼ぶ松田。
山本氏を売り、自分に近寄らないで欲しいと言う元上官の原。
足の悪い青年・新谷。
皆、山本氏との触れ合いで心を開いていく。変わっていく。
中でも、相沢。
とにかく山本氏が嫌い。その人物像も性格も、希望を持ち続けようと言う事も。
だが…。その内面の変化は登場人物の中でもエモーショナル。
娯楽の野球など、状況の改善。
少しでも皆の間に笑顔が浮かぶように。
日本との手紙のやり取り。家族の安否を知り喜び者や、すでに家族は亡くなり悲しむ者も…。
生きていれば家族に会える。希望が持てる。
が、家族を失った者は…。それでも生き続けなければならない。生き続ける事に意味がある。
皆の希望となり、精神の支えとなり…。
山本氏がいたから、彼らも希望を持てた。生き続けようと誓った。
一番の不条理はこの悲劇かもしれない。そんな山本氏を、病魔が襲う…。
山本氏の体調が思わしくない。
皆でスト。山本氏に病院の診察を。訴えが通る。
喜びも束の間、診断の結果は…
喉の癌。
しかも末期。もう手の施しようがない。
元々健康体ではない上に、この状況下。体調はみるみる内に悪化。
余命は三ヶ月…。
酷な言い方かもしれないが、帰国の望みはないだろう。家族にも会えない。このままこの地で…。
希望を失わせないでいてくれた人が…。
それでも希望を…?
いや、本心は絶望のどん底。
たが、希望は捨てない。
この場合の希望とは、帰国や家族との再会ではなく、命尽きるその時まで生き続ける事。
私が生きた、家族を愛した、その証し。
山本氏の逸話が後世に残されているのは、ここから。
仲間たちの勧めで遺書を書く。今の気持ち、母へ、子供たちへ、妻へ。
が、手紙以外の物書きはスパイ容疑とされる。せっかく書いた遺書も没収される。
どうしたら家族に届けられる…?
遺書は四通。それを一人一通、四人で暗記。帰国して、家族に伝える。
何故彼らはそうまでして山本氏の為に…?
そこに理由など必要ない。その心は分かる。誰だって。
そして遂に“その時”が…。
その滲み出る人となり、信念、仲間や家族への思い。病魔に蝕まれていく様…。
二宮和也が演技派としての実力を存分に発揮。
松坂桃李、中島健人、安田顕、桐谷健太らも熱演魅せる。
日本で山本氏の帰国を待ち続ける妻・モジミ役の北川景子。子供たち。
本作はその昔TVドラマ化もされ、それとの違いとして家族愛を前面に出したそうだが(予告編からもそう見受けられる)、ちと家族の描写は弱かった気がする。圧倒的に仲間との絆の方に感動させられる。
史実より脚色や美談化された点もあるとか。
遂にの帰国の際、皆に可愛がられた犬クロが追い掛けて来たり、母を亡くした松田が母親への遺書を読むなど、これらも脚色かと思ったら、史実通りとは驚き。
ベタでもある。瀬々監督が手掛ける感動作は時にベタになりがちな時もあるが、本作は及第点。
素直に感動させられた。
希望を捨てずに、生き続け、帰国する事が出来た。
自分では家族へ思いを伝える事は叶わなかったが、仲間がその思いを届けてくれた。
その思いを受け止め、残された私たちに出来る事は…
生き続ける事。希望を持って。
記憶する事。その思いを。
長く長く、いつまでも永遠に、あなたの思いを伝えていく。
山本幡男氏は歴史に名を残した偉人ではない。
が、氏が私たちに伝えた事は、どんな偉人の功績よりも遥かに尊い。
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