ラーゲリより愛を込めてのレビュー・感想・評価
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戦争が招いた悲劇の伝承
私が泣いたポイントは、犬のクロ(大吉くん)が走るシーン。
名優だったわ。
原作は読んでいないのですが、私は昔に観たドラマ版や、シベリア抑留に関してちょっと読んだ資料で、たまたまモデルの方がどうなったか知ってたため、感動はやや薄くなってもったいなかったかも。
戦争が招いた悲劇を、折に触れ映画などにするのは良いことだと思います。
シベリア抑留はソビエトによる国際法違反、ポツダム宣言の無視、今も対ウクライナでロシアが見せるのと同じ詭弁の数々で、捕虜にした元日本兵を奴隷的強制労働へと追いやった非人道的な歴史です。
ドイツのアウシュビッツと同じく、語り継ぐべき戦争犯罪であり、このウクライナ侵略戦争が起きている時期に、旧ソ連・現ロシアの本質が見えてくる事件でもあります(と同時に日本のダメな体質も)。
ただ、現実にはもっと悲惨で、残酷だったようです。
帰国できずに亡くなった人数があまりに多かった。
ソ連政府は日本政府による安否確認や、抑留者たちの帰国意向の調査を妨害しました。
また日本も視察団を送り込みながらも、国交回復を優先してソ連側と揉めるのを回避し、無実で戦犯とされている窮状を訴える抑留者から託された手紙を握り潰し、「戦犯は快適な環境で厚遇されている」などと虚偽の報告を行ったりしました。
日ソ国交回復で生き延びた人々の多くは帰国できたものの、ソ連はもちろん日本政府もろくな補償もせず、抑留時の賃金未払い問題まで発展しました。
帰ってきても、肉体のダメージとPTSDでまともに動けず、社会復帰には相当な時間を要しました。
こういった事実には、映画で触れていませんでした。
だから、遺書の最初の一通が届いた1957年から、最後の一通が届く1987年まで30年かかったことなどは描かれていなかったわけで。
事実を基にした物語(フィクション)ではあるものの、「感動させます」「お涙頂戴」要素が大きすぎて、物事を矮小化してないかが気にかかってしまいました。
一方では、映画は映画と割り切り、これを機に実際は何があったかを知るきっかけになればいいなとも思いました。
戦争…⭐︎
ラーゲリ(収容所)。
他の作品でも、度々取り上げられているシベリアの収容所の物語。
ストーリーが矛盾なく淡々と続いていくことで、かえってラーゲリの悲惨な状況が
炙り出されていく。
とにかく、出演している役者達が素晴らしく、変に演出過多にもならずにそれぞれの
性格が滲み出る。
個人的には、安田顕が 「アカ」のレッテルを貼られながらも
真摯に状況に向き合って、他の者たちをまとめていく姿がすごく良かった。
二宮和也は、ラーゲリに於いても人としての尊厳を失わずに学ぶことや
優しさ思い遣りを兼ね備えた素晴らしい人物として描かれ、それによって
周りの人々も感情を取り戻してきく様は、とても感動する。
おそらく、現実のラーゲリはもっと悲惨であり、日本もこれ以上の酷いことを繰り返して
きた戦争であったに違いない。
世界がどんどん危うくなってきている今、この映画の訴えている意味は深いと思う。
戦争をしたいとなぜ思うのか…繰り返すのか…
二宮和也の映画、いっぱい鑑賞して来て 初めて彼が良いと思った。
…それと夫の帰還を信じる北川景子の溢れるような笑顔。
何度も救われる気がした。
ほど良い泣かせ具合
序盤の空襲によりモジミとその子供たちが逃げる場面ですでに東京大空襲で命を落とした私の祖母と叔母たちのことを思った。
逃げる間もなく眼前が火の海になり母を見失ったと聞いた。肉親の死を目の当たりにする恐怖はいかほどだろう。
山本の家族は無事に帰国し何よりだったが、当の山本は終戦してもなおラーゲリ(収容所)に囚われの身となる。
シベリア抑留の話も実際にその場に居た人に聞いたことがある。不衛生極まりない環境下でロクな食料もなく感染症が蔓延し次々と人が死んでゆく。シラミやノミが沸き、亡くなった人を埋めたところからはウジが沸き、それも大事なタンパク源と言ってシラミを食べてたというから俄には信じがたい話だ。
映画はまだラーゲリの様子を観るに耐えるレベルで美しく描いている。映画に登場する一等兵のようにその場に居た人は明日を信じることなくその日をただ生きるしかなかったのだろう。
しかし、山本は単なる一等兵ではなかった。博識で物事を俯瞰できる聡明さを持ち、言葉の力を信じていた。
だから彼の発する「ダモイ(帰郷)」には重みがある。必ず明るい未来がくることを信じ、いつも唇には歌を、辛い時にもユーモアを忘れなかった。
瀬々敬久監督、いいね。
「糸」「護られなかった者たちへ」のあたりから説教臭さが消えエンタメ要素が盛り込まれて誰にでも伝わる物語を描くようになった。
今回も山本の人となりと何故周囲の人々が彼を信頼するようになっていったのかが理解できる丁寧な描写で一気に観客をラストの感動まで牽引していく。
また、シンちゃん(中島健人)の屈託ない明るさや癒しのクロ(犬)の登場場面では笑いも出る。
こういうしんどい映画ではどこかで息抜きが必要なのだ。
ラストの遺書のくだりでは一気に観客を泣かせにかかるのだが、そこも多少のやり過ぎ感はあるものの、絶妙なさじ加減で良かったと思う。これも脇を固める名優たちの演技力によるところが大きい。
特に妻に宛てられた遺書「妻へ!」の冒頭文には泣かせられる。
「よくやった。実によくやった。君はよくこの10年辛抱してくれた。殊勲賞だ。」
この時代にこんなふうに奥さんを褒める人いたんだなー。
自分の奥さんを「愚妻」と呼び、女に教育は必要ない、自分と自分の親や子供たちの面倒を見るのは妻として当たり前の時代だ。
昭和20年代(終戦後)を描く日本映画には今見たら全女子が憤慨するような、そんな場面はたくさん出てくる。
山本がいかに聖人であったかがわかる。
息子たちに宛てられた遺書のなんと現代の我々に響くこと!
大切なのは道義と誠と真心。特に最後は道義が勝つ。
まだ日本人が日本人の誇りを持っていた時代。明日の日本は自分たちが担うという使命を持っていた時代ならではの言葉だ。
自らの余命3ヶ月を知り、絶望、、、しないわけないじゃないか!と慟哭する山本の悲しみはいかほどのものか。希望を持つ人間にこそ何倍にもなって襲いかかる絶望は想像を絶する辛さがある。
病床で想う日本の家族のこと、夢の中でも妻のモジミは「あなたの帰りを待っています」と美しく微笑んだに違いない。
ここは郷愁とダモイへの願いのイコンとして、あの北川景子の美しさは絵的に必要なのだ。現実は泥だらけで肌荒れ・手荒れしてるおばちゃんだったとしても山本の妄想の中ではあのぐらいのミューズでなければならない。
※内容が苦しいので何度も観たい映画とならないため星少なめの評価です。
予想以上でした。
昔、テレビのスペシャル番組で観ていたので、ストーリーはしっていました。なのであまり期待はしませんでしたが、予想以上でした。映画にするとだいぶ前ちがいますね。
お客が高齢の方が多かったのですが、
四方からすすり泣きが聞こえました。
観に行って良かったです。
最後でてらおさん、今回は主役じやなくて
息子で出演たんですね。
監督の手腕、演者の力の賜物
99%の人が泣いた!といった感動を全面に押し出した宣伝が嫌いで、今作も二の足を踏んでいた。ただ戦争、抑留といった、なかなか若い世代が足を運ばないであろう題材をあえて選び、若い人に人気の演者を当ててきたことに興味を持ち鑑賞した。
結果、瀬々敬久監督の力量を思い知る。オープニングこそ安っぽく感じたが、それ以降文句のない大作だ。劇伴もいい。ストーリーがシンプルな分、名もなき抑留者の方々をはじめ、演者の芝居が素晴らしい。安田顕の感情を殺した芝居、松坂桃李の引いた佇まい、桐谷健太のほとばしる生気。それを山本幡男氏の善性を体現した二宮和也が円く包み込む。
2時間強あるがまったくダレることなく、物語に引き込まれた。恥ずかしながら、肩を揺らすほど泣いてしまった。監督や演者、製作者の「伝えたい」の魂がこもっている。人に薦めたくなる秀作である。
シベリア抑留の悲劇
涙腺大崩壊のレビューを見て劇場へ来た。
終戦後も11年にわたってのシベリア抑留の不条理さは今のウクライナ侵攻にも繋がるのかもしれないね。やはりソ連と言う国は恐ろしい国、指導者の問題かもしれないな。
映画は、松坂桃李扮する戦場で卑怯者呼ばわりされた松田の眼を介する二宮和也扮する山本幡男と言う展開で始まった。シベリア抑留の悲劇は数々あれど、ソ連兵からならまだしもラーゲリ内で日本兵から乱暴を受ける事こそ全くもって絶望せざるを得ない環境だ。それでも山本幡男は何度も営倉行きをしながらも仲間に希望を説いて回った。大人しくしてれば寿命を縮める様な事にもならなかっただろうにと一部醒めた目で観ながらも後半はさすがにジワッと来たね。
俳優陣は皆頑張っていたのは素晴らしかったね。特に北川景子が良かったね。感服したよ。
絶望より愛を込めて
私は、誰に、何を遺せるのだろう。
凍てつく大地に、どれほどの絶望が、凍りついているんですかね。澄みわたる空は、答えてくれそうにもありません。
映画としては、全くひねらない作りなので、洋画好きには物足りないかも。戦争の狂気、ヒトのエゴや残忍性があまり描かれていないので、ちょっと単調かな。(この辺りに興味ある方は「サウルの息子」「サラの鍵」「カティンの森」をどうぞ。)
だが、それがいい。それだけでいい。この映画には、今の私達が、失いかけている何かが、あるような気がするから。
そもそも抑留ものは、このクニの負の記憶なので、エンタメ映画には不向き。と云うか、未だに凍土の下で眠る数えきれない絶望を、誰も知ろうとしない。私もね。それが、この実話と、あまたの役者さんの涙によって届けられました。後は、私達がどう受けとめるかです。細かいことは抜きにして、みんなで泣いてね。
永久凍土を融かすのは、ヒトがヒトを殺す業火なのか、それとも、ヒトがヒトを大切に想う情熱なのか、皆様は、どちらを選びます?。
噂レベルの報道ですが、凍てつく大地に、新しいラーゲリが造られているとか。無理やり国籍を変えさせられた方々が、黒海を超えて強制疎開させられたらしい。この噂が事実とすれば、本作を観た私達は、何ができるのだろう。
私は、誰に、何を遺すことができるのだろう。
「無言歌」
おそろしく空が蒼い映画です。澄みわたる空の下、ヒトは何ができるのか、何を想うのか?。ヒトにとって、ヒトは敵なのか?。マイナーな映画なので、視聴するのに苦労するかも知れませんが、併せご覧下さい。
追記
チャイニーズドラゴンって、いますよね。実はあのグループの創設メンバーに、多くの残留孤児の2世がいるそうです。もはや、残留孤児というワード自体、知らない方が多いはず。私が子供の頃、連日ニュースで聞いていた以来だから。その2世が、何故、血染めの半生を過ごすことになったのか。私は反社会グループを礼賛する気はありません。ただ、かつて大陸で何があったのか、戦争は終わっても、戦後に終わりはあるのか?。今なら映画を通して伝えることができるかも。描き方を間違えると、とんでもないバイオレンス映画になりますが、どなたか、挑戦してほしいテーマです。
ひとりの抑留者のまっすぐな魂と愛。
とても辛くて悲しくて、温かい作品。60万人近くの日本人が抑留されその1割が無くなったシベリア抑留の歴史。二宮和也の演技が圧巻。北川景子も素晴らしかった。1人1人を丁寧に描いたことで終盤の感動に繋がった。母を亡くした者と、子を亡くした者。夫を亡くした者と、妻子を亡くした者と。山本のまっすぐな魂と愛が、皆を結びつけ、彼の想いはきちんと家族に届くことができた。悲しくも光の見える美しいラストに涙止まらず。12月にすごいのが来た。
さすがに犬が船を追いかけて氷上を走って来るのはやりすぎでは?と思ったら、後で記事を読んで犬の件も実話と知りびっくり。
Soranji
期待はそこまでしていませんでしたが…とても面白かったです。不覚にも涙腺をやられるとは思いませんでした。
収容所に収容された山本幡男という実在の人物と周りの人々の希望と絶望を描く物語で、これでもかと泣かしに来ますが、しっかりと感動できますし、説得力もあるものになっていました。
収容所での生活を色濃く描いており、抜け出そうとしたら殺され、戦争時代の上下関係はまだまだ健在で、食料は少なく、病気や怪我で亡くなる者も多い中で、妻と約束した帰国を叶えるために山本が奮闘する姿はとても熱いです。南京虫の刑は悍ましすぎました。あんなに狭い箱の中で虫に噛まれ続けると思うと鳥肌が立ちまくりでした。収容所での生活の中で野球をしながら、希望を見出していくというのもまた良かったです。
役者陣の演技が神がかっているのもあり、物語は光り輝いていました。ニノの喜怒哀楽っぷり、癌になってからの痩せ姿から出すか細い声だったりと、ニノ史上最高の演技が見れたと思いました。ロシア語ペラペラなのもまた凄い。一番驚いたのはケンティーです。少し前まではおちゃらけたキャラが多かったんですが、実直な青年を演じ切っており、一皮剥けて強い役者に進化したなと思いました。
映像は神秘的でしたし、音楽も名曲を使っているのもありますが、物語に合っていましたし、美しさに磨きがかかっていました。
不満があるとするならば、おそらく原作には無かったコロナ禍の現在の様子はいらなかったかなと思います。メッセージを込めたいというのは分かりますが、完全に蛇足になってしまっていた感は否めませんでした。あと遺書を記憶したものを伝える過程を4人分見せられるのは長いなと思いました。新ちゃんのエピソードは一番グッときましたが。
今年観た邦画の中でもトップクラスに面白い作品でした。これはヒット間違いなしです。
鑑賞日 12/11
鑑賞時間 17:50〜20:15
座席 K-6
予告編の作り方を学習して欲しい
正直、見せすぎの予告で本編観なくても
いいんじゃないか?と思わせる手法を
本当にどうにかしてほしい。
あと、予告での音楽の使い方が下手くそ。
主題歌への違和感が半端なくて
ミスキャストじゃないのか?あん?と
ずっと思っていた。
本当にごめんなさい。めちゃくちゃいい曲じゃないか😭
エンドロールで流れた曲と同じか?と思うほどに…。
そしてその歌詞にまたノックアウト✊
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日本映画界の未来は明るい。
そんな風に久しぶりに思えた。
もう誰もアイドル上がりだなんて
思っちゃいないだろうけど
ニノの鬼気迫る「山本旗男」は、
もはやご本人が降臨してるのでは?と
思うほど。
主要6人の役者の演技がたまらない。
北川景子のことをこれほどまでに
美しいと思ったこともない。
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ラスト30分は涙が止まらない。
帰国後のシーンは、
わかっていても涙がこみ上げる
涙腺崩壊、ダム決壊状態。
偶然かはたまた必然か?
4人各々の背景とリンクしたかのような
アレはズルいわ、反則です😭
母として、妻として、家族として、子として
傷み悲しみと愛情が深々と伝わってくる。
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いま、この時代だからこそ
いま、まさに起こっている戦争が
あるからこそ
ひとりでも多くの人が観て感じて
「戦争がもたらす後遺症」について考え
戦争による悲劇が繰り返される事のないように。
その思いが願いが届けばいいのにと思う。
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この映画の理不尽をもって今世界で起こっているならずものの暴挙を改めて許してはならないと憤った
日本人捕虜の山本幡男さんの生き様を描いた作品です
終戦後も、捕虜としてシベリア抑留された、山本幡男さんを描いたノンフィクションの映画作品です。
二宮 和也さんの演じる山本幡男さんの姿を通して、捕虜として生きることの辛さ、いつ殺されるか分からない恐怖、日本に残した家族に会いたいという想いが、大スクリーンから強烈に伝わってきました。
山本幡男さんは上級の士官では無く、「普通の兵隊さん」だったそうですが、この普通の人の感情を、二宮 和也さんが見事に好演しています。
上映終了後、私の両隣の観客はハンカチで目を押さえていました。
現在、ウクライナ、そしてロシアの両国の捕虜にも、山本幡男さんのように、歯を食いしばって生きようと、辛い毎日を送っている人がいるのでしょうか。
悲しみの映画ですが、山本幡男さんという人が居たことを知り得たので、この映画の鑑賞は貴重な体験でした。
踏み込みの浅さが惜しい
実話に基づいていることもあり、大袈裟な事件は起きません。
その分、脚本としては誠実な印象を受け、演者が厚みを持たせてくれていた。
対して、美術やメイクなどのツメが甘く、満州の景観はセット丸出し、空襲や別離の描写は白々しさすらあった。
雪焼けした顔や黒くなった爪に対し、水浴びで脱いだ身体はツルツル。
北川景子も終始綺麗すぎて苦労が覗かない。
また、過酷さの表現もぬるい。
強制労働の実態は伝わりづらく、窶れるなど経年で外見が変化することもない。
営巣送りも南京虫も数秒のみ、食事のシーンなども一度きりなので、どれも『日常』として感じづらかった。
しかし、演技は総じて素晴らしく、個人的に今回のMVPは安田顕。
遺書を届けにきた際に、なかなか上手く笑えない表現は白眉。
脚本も、山本の教えから遺書を記憶しようとするところや、松田が亡くした母を、相澤が妻を重ねながら遺書を読む流れも自然。
(ただし、「クロは山本さんたちの想いを乗せてるんだ」みたいな台詞は完全に蛇足)
エグみを避けず、細部にまで拘っていれば名作になり得ただけに、惜しい。
広く見てもらうことも大事だが、薄い表現では伝わるものも伝わらない。
ちなみに、遺書とは別に書き溜めてたノートはどうなったのだろう。。
「ラ−ゲリより愛を込めて」を見て感じたこと
1 戦後ソ連に抑留された軍人たちの帰国するまでの過酷な環境と帰国を待つ彼らと家族の思いを描く。
2 辺見じゅんのノンフィクションを映画化した実話であるが、手紙と遺書の使い方が泣かせてくれた。これらをメインにした脚本と演出には感服した。ただし、ラ−ゲリでの抑留生活の描写は平凡だった。
3 主人公であった山本さんの家族に向けての遺書の内容は愛と感謝に満ちていた。母、妻、子どもたちを思いながら書いた言葉には感動した。そして自分の家族を重ね合わせながら伝えに来た仲間の姿も良かった。
4 二宮は、童顔と華奢な体付きから軍服はとても似合わなかったが、ソフトな物腰と骨のある人物を自然体の演技で成り切っていた。北川は、この時代には場違いなほどの美貌ぶりであった。ラストの寺尾聰は要らなかったように思えた。
どんな時でも人は人との絆を希望にして生きていく
本作は、太平洋戦争終結後、シベリアの強制収容所(ラーゲリ)に抑留された、極限状態での日本軍捕虜達の人間ドラマである。本作は実在の人物・山本幡男さんをモデルにしているので、リアルで泥臭く、平和を取り戻すことの難しさを強く感じる。生きることの意味に鋭く迫った作品である。
本作の舞台は、太平洋戦争終結後、1945年のシベリア。日本軍捕虜達は強制収容所に抑留される。氷点下40℃という過酷な環境で厳しい労働を強いられ、一人また一人と絶命していく。このような状況で、主人公・山本幡男一等兵(二宮和也)は、日本にいる妻・モジミ(北川景子)と子供達との再会を強く信じて、仲間達を元気付けていく。当初、絶望していた仲間達は、山本の信念と行動によって、日本で待つ人達に再会するという収容所で生きる希望を見出す。ダモイ(帰国)を合言葉に懸命に生きていく・・・。
本作は戦争映画だが、戦後を描いているのが大きな特徴である。戦争が終わっても、その影響はなかなか消えず、人々を苦しめる。本作では、日本とソ連が国交回復する1956年までの11年間、主人公達の苦難は続く。本作は、戦後から戦争の影響が完全消滅して平和になるまでの主人公達の苦難を描く。反戦とともに平和を取り戻すことの難しさを強く感じる。
後半が本作の見せ場である。主人公は、志ならず収容所で病死する。仲間達は、収容所の検閲で書いたものは没収されるが、記憶は消せないという主人公の言葉を思い出して、主人公の遺書を分担して暗記する。
仲間達は、帰国後、記憶で繋いだ遺書を遺族に伝える。人は死んでも、その想いは、脈々と受け継がれるという言葉を体現する。仲間達が口頭伝達する遺書は仲間達の想い、主人公の妻子への想いが溢れている。感動的で涙を誘う。
戦争が終わっても、平和は簡単には戻ってこない。
人は人との絆を希望にして生きていく。
本作は、観終わって、そう強く思える作品である。
若い世代にこそ観て感じ取ってほしい、希望を持ち続けることの大切さを。
最後の最後まで吸い込まれるように観られたのは瀬々監督はじめ制作陣の力。
二宮さんは“凄い“。
そして安田さん、桐谷さんをはじめとする役者陣の演技に心を動かされました。
事実に基づく作品だからこそ、
若い世代の方にたくさん見てもらいたい。
“希望”を持つことの大切さ。
そして
“希望”を持ち続けていると
いつか、その先にある“何か“に繋がるんだ
ということを、この映画を通じて感じ取ってほしい。
見ておきたい、見てほしい作品
線が細く見える二宮、きれいすぎる北川…という主要キャストのイメージ。そして、原作タイトルの「遺書」を、「愛を込めて」なんて変えていることに、薄っぺらな映画になっているんじゃないか、と不安があった。
しかし、平日昼間ながら8割ほども席が埋まった館内からは鼻をすする音が途切れない。僕も涙なしには見られなかった。
なかなかよく時代をつかみ、収容所の空気を再現し、役者も熱演している。ピンク映画出身の瀬々監督作品はつまらない企画ものもあれば、「菊とギロチン」のような熱い作品もあり、バラバラの印象。この映画は、バランスの取れた良作だと思う。
余り中身のない880円のパンフレットの中に、本作を「国民映画にしたい」というようなことを発言している。
実在した人物の、家族への思い、それを記録・再現した辺見じゅんの原作ノンフィクションがあってこそ実を結んだ映画だが、この監督の意気やよし。
戦争に対して意識の向かない若い人にもぜひ見てほしい。
そして、首都圏に住んでいるなら、西新宿住友新宿ビル内にある「 平和祈念展示資料館 」(入場無料)を訪れてほしい。
僕の亡母は中国・大連生まれで戦後初めて日本に引き揚げて「祖国」の土を踏んでいる。引き揚げ者やシベリア抑留者についての展示が国の運営で唯一行われている場所である。
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