「踏み込みの浅さが惜しい」ラーゲリより愛を込めて uzさんの映画レビュー(感想・評価)
踏み込みの浅さが惜しい
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実話に基づいていることもあり、大袈裟な事件は起きません。
その分、脚本としては誠実な印象を受け、演者が厚みを持たせてくれていた。
対して、美術やメイクなどのツメが甘く、満州の景観はセット丸出し、空襲や別離の描写は白々しさすらあった。
雪焼けした顔や黒くなった爪に対し、水浴びで脱いだ身体はツルツル。
北川景子も終始綺麗すぎて苦労が覗かない。
また、過酷さの表現もぬるい。
強制労働の実態は伝わりづらく、窶れるなど経年で外見が変化することもない。
営巣送りも南京虫も数秒のみ、食事のシーンなども一度きりなので、どれも『日常』として感じづらかった。
しかし、演技は総じて素晴らしく、個人的に今回のMVPは安田顕。
遺書を届けにきた際に、なかなか上手く笑えない表現は白眉。
脚本も、山本の教えから遺書を記憶しようとするところや、松田が亡くした母を、相澤が妻を重ねながら遺書を読む流れも自然。
(ただし、「クロは山本さんたちの想いを乗せてるんだ」みたいな台詞は完全に蛇足)
エグみを避けず、細部にまで拘っていれば名作になり得ただけに、惜しい。
広く見てもらうことも大事だが、薄い表現では伝わるものも伝わらない。
ちなみに、遺書とは別に書き溜めてたノートはどうなったのだろう。。
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