ラーゲリより愛を込めてのレビュー・感想・評価
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「ただ生きているだけじゃダメなんだ。それは生きてないのと同じことなんだ。」
自分の身の安全を得るために、道義を捨て、上官や相手国の言うとおりに振る舞う当時の軍人たちと、給料もらうために死んだ目でただ上司の言うとおりに仕事する現代のサラリーマンと被る。
真に生きるとは? 自問させてくれた映画であった。
「一等兵じゃありません。山本です。名前があります。」
「美しい歌に、アメリカもロシアもありません。」
「生きるのをやめないでください。」
「ただ生きているだけじゃダメなんだ。それは生きてないのと同じことなんだ。俺は卑怯者を辞める。山本さんのように生きるんだ。」
「我々は家畜じゃない。人間だ!」
「立身出世など、どうでもいい。最後に勝つのは道義だぞ。」
しかし山本さんの遺言を家族に伝えるために4人の仲間がとった方法は斬新!これは感動する!4人目の相沢が現れた時には山本さんの奥さんももう慣れた感じだったのがちょっとおもしろかった。(^^))
松坂桃季のおさえた演技がいい。本当の演技力があるからこそ。
書き遺された言葉と実話の力
山本幡男さんは、本作で描かれたエピソードのほかに、収容所内での同人文芸誌や壁新聞の作製、アムール句会の主催、俘虜によって旗揚げされた劇団の脚本執筆など、周りの人たちを励ますための活動をかなり積極的に行なっていたようだ。
それを踏まえると、山本さんが周囲を巻き込んで行なった活動が結構端折られている印象を受けた。映画の尺の問題などで仕方なくそうしたのかもしれないが。
元の実話や原作が心を動かすものであるほど、映像化によって何が削られ、何が付け足されるのかが気になる。そこから映画ならではの感動が生まれることもあるし、がっかり感が生まれることもある。
上に書いた実際のエピソードをもっと入れれば、山本さんが現地であそこまで慕われるようになったことにもっと強い説得力を持たせることが出来たのではと思った。句会で互いを俳号で呼び合うことで軍隊式上下関係が薄らぐ話など、きちんと織り込めば山本さんの功績がもっと鮮明になった気がする。
ボールを作ってみんなで野球をした、新谷に文字を教えた、という映画の主要エピソードだけでは、「流れでそうした」感が出て、実際の山本さんの功績の力強さを伝えるには不十分ではないか。
キャスティングについて。遺書を届けに来る順番のトリは、役者の技量で考えれば安田顕か松坂桃李にした方が締まった気がする。松田の語りが冒頭のナレーションに繋がっていることを考えると、松坂桃李をトリにして2022年には飛ばず、実話の後日談のナレーションでも入れてサクッと終わる方が好み。
ニノは何を演じても、よくも悪くもニノくささが抜けないなあと毎回思う。常に猫背だからか、口調のせいか。個人的には役によって雰囲気をがらりと変える俳優が好きだけど、ニノはそこそこの頻度でよい作品に出演するので、なんだかんだ彼の出る作品を観てしまう。
不満めいたことをつらつら書いたが、クライマックスで朗読される遺書の文面には胸を打たれた。熱い家族愛は70年の時間の隔たりなど関係なく心に迫る。自分までが山本さんに「幸せに生きよ」と励まされているような気持ちになった。
彼が書き遺した渾身の言葉たちに、俳優の演技と声で命を吹き込むために本作が作られたと言っても過言ではないだろう。
これでもかと泣かせにくるのに破綻がない稀有な良作
辺見じゅん氏のノンフィクションを瀬々敬久監督のメガホンで映画化。
主要キャストとして、二宮和也、松坂桃李、中島健人、桐谷健太、安田顕、北川景子ら日本映画界を代表する面々がずらり勢揃い。史実を描いているだけに、そもそも説得力云々を言う次元の話ではない。
シベリア抑留って、日本史の授業を皮切りに何度となく聞いてきたワード。大変な経験をされ、命を落とした方が何万人もいるんだという事実を認識してこそいたものの、やはり本編を観るにつけ、あまりの残酷な抑留生活に言葉を失う。
ストーリーが進んでいくとともに、演出として「これでもか」と泣かせに来るのだが、そこに破綻がない。なぜなら、史実をもとにしているから。そして、俳優陣の芝居が芝居として際立っているのではなく、役どころに寄り添い続けたことで、それぞれの心情と同化することができたからではないか。
そんな事象はそうそうなく、そういった意味でも稀有な良作として多くの人に観てもらいたい作品である。
ラーゲリ 嫌ダ モーイー
不自然なほど綺麗な作品でした。
まずはダメ出しです。実話なのに映像にリアリティが無く、こういうのは綺麗ではいけないのです。もっと怖くて汚かった(多分)。歯もピッカピカの白い歯が揃ったままの姿では説得力がありません。
犬のクロが船を追いかけてきた場面もシチュエーションが不思議でした。いつ何処から追いかけていたのか、何故あのタイミングで現れたのか、どのように考えたら辻褄があうのでしょうか。
良いところもあります。四分割された遺書、自分の全ての家族を失った男が山本の家族全員へ、自分の母を失った男が山本の母へ、山本から字を教わった男が山本の子ども達へ、自分の妻を失った男が山本の妻へ、上手かったです。
ラストの回想シーンを冒頭に繋げたり、海辺のプロポーズシーンも伏線回収していて、何もかも上手すぎて驚きます。
終盤、感動シーンを重ねてくるため、私の防衛は突破され、泣きたくなりました。そう簡単に男は泣くものではありません。従って、松坂桃李さんはじめ、泣いている男達の迫真の演技は無駄な努力に見えました。登場人物が泣くのではなくて、観客を泣かせましょう。
無駄がない程に我らは尊い。
希望を持ち続けることの意義
号泣です。
戦争が如何に悲惨なものか。終わったはずなのに、いつまで続くのか。どんなにたくさんの人が同じ想いをしたことか。
普段はあまり見るジャンルの映画ではないのですが、テレビ地上波放送ということで、録画しての鑑賞です。想像以上でしたね。最初からドップリ惹き込まれ、後半は泪が止まりませんでした。
【ネタバレ】
家族と離れて、一人シベリアの収容所に捕らわれることとなった山本幡男(二宮和也さん)。いつか日本で家族に再会することに希望を持ち続け、人間らしく生きる事を貫いて、周囲の人々に影響していく。
保身のために山本さんを裏切ることとなった上官の原さんをを安田顕さんが魅せてくれます。
当初は自分の卑劣さを恥じ、山本さんを遠ざけていたが、その人柄に魅了され、良き理解者となっていく。余命僅かとなった山本さんに遺書を書かせ、それを家族に届ける事に使命を感じる。
語りべの役割も担う松田さん(松坂桃李さん)。いつも、遠巻きに見つめながら、山本さんに心酔していく。
母親宛の遺書を読み上げるところでは、出兵中に亡くなった自身の母を重ね、ホンっと切なかった。
最初、気が付かなかったんだけどシンさん役のケンティがまた良かったですね。
兵士でもないのに収容された、ちょっとおバカを魅せてくれる。その明るさで、山本さんも救われていたんじゃないだろうか。
桐谷健太さん演じる相沢さん。根っからの軍人で、最初は嫌な奴全開だったけど、山本さんに生命も救われて、心酔していく逞しい男を魅せてくれました。
出兵中に身重の妻を亡くすなんて、ホンっと切ないったらありゃしない。
妻役の北川景子さんがメチャクチャ素晴らしかった。
子供4人を抱え、優しい逞しさを見せてくれる。そして、夫を想う時の可愛らしい表情がたまらない。それ故に、悲報を受け取った時の嗚咽には、心底共感して泪が止まらなかった。
やつれていく山本さん(二宮和さん)がホンっと切なかった。メイクの力もあるんだろうけど、演じたニノには、心底驚かされました。
最後には、家族の再会を期待していただけに、え〜、こんな終わりかよって感じで、亡くなったときはショックでしたが、遺書を伝えに行く仲間たちには心底感動しました。もしかしたら、この遺書を届けるということが彼らの新たな希望となっていたのかもしれない。
戦後の捕虜収容所?を描くことによって、より一層戦争の悲惨さを実感し、反戦映画として大いに心に刻まれる一本だと思います。
これが実話だってのが、なお切ない。
気持ちは届いていても
戦時中にシベリアにて捕虜として収容されていた日本人達。
ニノ演じる山本幡男さんの実話に基づいたストーリー。
今ではとても考えられない過酷な労働を強いられるが、諦めずに励まし続ける主人公。
病に侵されていく姿も流石の演技でした。
安田顕さん、松坂桃李くん、北川景子さん、それぞれが光る演技をされていて涙なしでは見られませんでした。
日本語が書いてあるものは全て没収されてしまう時代。
遠く離れた家族の声や近況が聞きたくても電話すらできない。
お互いに信じ合い気持ちは通じ合っているのに、こんなに辛い事ってあるのかなと。
右翼だとか左翼だとか関係なく、自分の国を愛するものとして戦争は絶対にしてはならないのだと再確認させてくれる作品でした。
戦争の理不尽さを痛感しました。
戦争が終わっても、終わらない捕虜生活!
残酷と希望
実話に基づいたこの作品。
生きることの尊さ。
「よーく覚えておくんだよ。こうして久しぶりに家族全員でいられること。みんなの笑顔。美味しい料理。ハルビンの午後の日差し。」
今、周りにいる人への感謝の気持ちをわすれないで居たい。
そして、当たり前の日常を当たり前だと思わないようにしたい。
soranji
ありえないほどに
きりがない本当に
無駄がないほどに
我らは尊い
ミセスの楽曲がこの映画をより引き立てていた。
ラーゲリ=旧ソ連における強制収容所(抑留地)より愛を込めてというタイトルも秀逸
ラーゲリ→残酷
愛→希望
まさにこのタイトルを一本の動画にまとめてくれた。
残酷さが描写として欠けている部分があるかもしれないが、届けたいメッセージは残酷さではなく、愛や希望であるからこの描写で良かったように思う。
何度でも観たいと思える良作だった。
素敵な作品をありがとうございます。
力流の悲劇は家族にも
地上波のテレビ番組で観ました、日本の戦争が終わってからも遠い国で一人でも多く日本へ帰そうと奮闘した人がいた事に日本の普通が今でも80年一度も戦争が無い事を嬉しい思います。戦争が終結し繋いだ平和を今度は私が繋ぎたいです。
戦後でも終わっていない戦争
ラブレター・フロム・シベリア
おざわゆきの「凍りの掌」という、父親のシベリア抑留を描いた漫画を読んだが、本当に過酷だった。飢えと寒さで死ぬのも悲しいが、生きて帰れた人たちのトラウマも、大変なものではないかと思う。
そんな極限状態で、人間の尊厳を維持できるのか。できるんです。二宮演じる山本幡男だけは。自分のことだけで精一杯の状況で、人の心配をし、ソ連兵に意見する。殴られても、独房に入れられても、不死鳥のように蘇る。最初は呆れたり、関わらないよう避けたりしていた周囲の人たちだが、彼に一目置くようになる。彼が言う「ダモイ=帰国」を希望に、生き延びようとする。
病気になり、シベリアで死んでしまった山本の、家族に宛てた遺書。なんとしても、彼の家族に伝えたい。紙に書いたものは、ソ連兵にスパイと疑われ、検閲で没収されてしまう。では、どうすればよいのか。記憶だ。頭の中は検閲されようがない。四人の男が、分担して遺書の文章を暗記することとなった。帰国後、山本家に順不同で現れる男たち。山本の言葉を、生き様を、精一杯伝わる。これは涙なくして観られない。
俳優はみな力演だったが、すべて持っていったのは、犬のクロだろう。なんて賢いんだ。かわいい〜。
TBSの放送を視聴。
良作
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