サンチョーのレビュー・感想・評価
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ジャルジャルユニバース
どんな芸人よりも先に奇抜だけど面白い事に挑戦していく唯一無二のコンビ・ジャルジャル。そんなジャルジャルが新たに手がけるのがコントシネマ。まさかのコントを映画に落とし込むという前代未聞のチャレンジに挑戦していました。なにかと芸風が賛否割れがちなジャルジャルですが、M-1の誰も真似できないような高等な漫才から、ほのぼのしたと思ったら狂気の世界に走るコントまで、底知れずなお笑いを見せてくれるジャルジャルがとても大好きです。
ジャルジャルの演技力の高さ、というか憑依力はコントで発揮されるものそのもので、まさに変幻自在でした。本人たちが宣伝文でも述べていた通り、映画にもコントにも属さない、けれど映画として観ても、コントとして観てもしっかり面白いものに仕上がっているという見事な作りでした。それでいて全部通して観てみると、不思議と様々な人々の群像劇になっているというのもまた奇妙な作りです。
解散寸前の男女コンビ。解散するしないのすったもんだが面白い。福徳さんが女性役に妙にハマっていて、仕草や言動が身振り手振りしててとにかく面白い。そこに振り回される後藤さんのどこかローなテンションも好き。同じ展開を形を変えながらもしつこくやっているのに、それが鬱陶しくなく、面白さが加速していくのも良いなと思いました。
登山部が楽しい高校生・安田も、一見根暗かと思いきや、メチャクチャテンションの高いやつで、顧問と友人と一緒に山登りをして、何かにどつかれて転落するというドタバタな展開が目白押しでした。摘出したアキレス腱を匂わすというディープな笑いも良かったです。安田と友達が「サンチョー」の物語の軸になっていくのもなぜか熱かったです。
そんな男女コンビの男の後藤さんが散髪屋に向かったら、とにかく散髪中に目を合わせてくる強烈な福徳さん演じる美容師がいる展開。「目見ててくださいね」がパワーフレーズで、これもまた面白く、ゲラゲラ笑わせていただきました。目をガン開きで散髪し、前髪を切る時は跨って、シャンプーをする時にはバックシャンプーで目を合わせる、しかも段々慣れてくるというのが異常です。しかも仕上がりはちゃんとしたという普通を混ぜてくるタイミングが絶妙でとても良かったです。その後に後藤さん演じる後輩がやってきて、先輩間違いで知らない人のズボンをずらして、お金玉を蹴り上げるというヤバい行動をしでかし、それを先輩にしようとしていたことで叱責されます。常識的なところはちゃんとしてるんだ…と。
有馬と安田、有馬と別府という温泉か競馬か論争も面白かったです。確かになーという合致から、それで家から追い出そうとしているっていうのもまた変な話です笑。城崎さんという女性に婿入りしたら、俺ら温泉やなとかいうカオスな会話がいちいち面白いです。なんでこんな設定思いつくんだろう。
マジシャンなのにやっていることは超能力な人も、物語にいい絡み方しているなと思いました。コント通りレモンの中にトランプを送ったはずなのに、隣の家のグレープフルーツからトランプが見つかるという超人的なことをやってのけるのも、映画で見ると画角が新鮮だなと思いましたし、そこから名字を変えるという展開に移りますが、名字ではなく名前が変化していき、最終的にゲロゲロガエルになるというもう悲劇なのか喜劇なのか訳の分からない、だけど面白いものに仕上がっていました。
そのゲロゲロガエルこと若手俳優が家にいる時、泥棒が侵入してきてアタフタする展開は、乱れまくっていた空気を緩和してくれるほのぼのした展開でした。
その若手俳優、まともかと思いきや中々にクレイジーで、まずゲロゲロガエルに名前が変わったことを劇団の座長に注意される軽い笑いのジャブを食らわせてから、匂いのないオナラを自由自在にこけるという特技を本番でやろうとすると全然出来ず、叱責されるという展開が3回続きます。3回とも成長するのかなと思いきや、進歩は無く、どれも臭いオナラを放ち、3回目には座長に楯突くというもはやサイコパスを体現したかのような化け物を観ていました。その若手俳優が、母校でPR動画を撮影するために、登山部の顧問と一緒に棒を腹に挟んで笑顔で撮る展開、のめり込みすぎて血が出まくるという妙に痛い笑いが起きました。その後2人とも平気そうなのがまた面白い。
終盤に登山部の学生2人と、男女コンビの物語がゆる〜く合流し、登山部2人はバンドマンに、男女コンビはしっかりとした漫才師に、昇華していく流れも"成長"を強く感じられて良かったです。このラストシーンまでに登場してきた全ジャルジャルがアッセンブルする瞬間も変な感じはしますが、とても面白かったです。しかも漫才はしっかりしたギ口チンム口を軸に仕上がっていて、これM-1でも観たかったな〜という面白さでした。エンドロールが短いのもまた良い笑。
上映中クスクス笑える瞬間から、ドカンと笑える瞬間までずっと楽しい空間になっていました。小規模公開&短期上映が勿体ないくらい。次は生のコントを見てみたいなぁ。
鑑賞日 11/21
鑑賞時間 14:35〜16:20
座席 J-2
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