たまご割れすぎ問題のレビュー・感想・評価
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運動を創造するセンスが際立っている
昨年、特別上映をやっていた時にチケット取ったのに仕事で行けなくなってしまったチャーリー・バワーズの映画が封切上映となって本当に嬉しい。サイレント映画時代に活躍した「知られざるアニメーション作家・コメディ監督」だそうで、僕も観たのは今回が初めて。サイレント映画はトーキー時代よりも動きが自由だ。カメラの回転数を自在に変えてユニークな運動を作りだせる。チャーリー・バワーズはそうした実写の自由な運動にストップモーションを違和感なく混ぜ合わせて、独創的な空間を生み出している。卵からちっちゃい自動車が孵化するのが結構かわいくもグロテスクな感じ。割れにくい卵製造マシンの造形が大袈裟なのも面白い。機械文明に対するまなざしはチャップリンと対照的と言えるかも。
短編集をまとめての上映だったのだが、この作品以外も大変に目を引く作品ばかりで、映画史ってまだまだ埋もれているものがいっぱいあるんだなと改めて思い知らされた。
才能と技術
映画館で予告を見て、これはヤバイと思った。
断片的には海外のPVで見たかもしれないがまとまった形でみれてよかった。
チャーリーバワーズは1887年生まれで、本作は1926作。演技と演出、そして3Dのアニメ(ストップモーション)もやっちゃう。
そのころ世の中は、、、、
1923ディズニー設立
1928ミッキーマウス登場、、まさにアニメーションが注目されて商業ベースに乗る時期にこんな才人がいたとは驚きである。
なんと言っても実写とアニメの共存が凄い!
本作に関しては卵からわらわら車が産まれるアニメーションがとんでもないです。自らバワーズシステムと名付けて何人かのチームだったと思うけど、当時複雑な合成など出来ないので役者達も駒撮りに付き合ってその場でじっと動かずにまっていたのでしょう、、、ご苦労様です。しかも今みたくハードディスクに入れて確認再生出来ない。フィルム現像するまで上手くいったか確認出来ないわけですな。
まさに映画、アニメ黎明期だからこそ労を惜しまず見た事のない映像作りに体力の限り突っ走った時代の作品だと思いました。
ご苦労様です。
無声時代のストップモーション×スラップスティック。カレル・ゼマンやシュワンクマイエルの好きな人なら必見!
今の時代に撮ったら、それこそ「たまご割れすぎ問題」で怒られちゃうかもしれないね。
食材ムダにしすぎだって言って。マジでたまご割りまくりだし。
タイトルにつられて、つい映画館に足を運ぶ。
原題は『Egged On』(「けしかけられて」「そそのかされて」くらいの意味。もちろん「たまご」と掛けてある)だから、俺に勝ったのは、チャーリー・バワーズというより、紹介者の情熱ということになるだろう(今回のバワーズ・プロジェクトの企画者である田中範子さん? いいをじゅんこさん? それとも昔からこの邦題で流通してた?)。
なんて、ほれぼれするような邦題! ちょっとジェラシーすら感じてしまう。
予備知識ゼロで観に行ったのだが、要するに無声映画の短編において、「スラップスティック」と「ストップモーション」が融合されているところがミソなんだね。
いわば、メリエスのチャップリン版。
この夏、回顧上映のあったカレル・ゼマンのご先祖様だ。
ぶっちゃけた感想をいえば、スラップスティックとしては、ムダに抑制的で、退屈だ。
今まで観たことがある同時代の無声映画が、チャップリンやキートンやマルクス兄弟といった「超名作」ばかりなので、評価基準がつい高くなりすぎているのかもしれないが、率直な印象として、あまりに間が悪く、イベント間の場つなぎが緩慢で、筋立てが追いづらい。
映画としての面白さ、という点だけで評価すると、時代に埋もれて「幻」化してしまっていたのも、むべなるかな、といった感じがする(いわゆる「発掘作」というのは、往々にしてそういうものだ)。
一方で、ストップモーションとしては、すでに最高水準の仕事をこなしていて、結構度肝を抜かれた。
まず、コマ撮りが結構細かくて、動きがスムーズ。
これ、かなり手間かかってるよなあ。
動かし方も、堂に入っている。さすがは、元カートゥーンのアニメーター。
コマ撮りを実写に「はめ込んである」感じがするハリーハウゼンやカレル・ゼマンとちがって、コマ撮りが実写シーンと「地続き」でしっかり溶け込んでいて、「特撮」としてちゃんと機能している。
しかも、単に技術的に素晴らしいというだけでなく、発想が奇天烈だ。より具体的にいえば、ストップモーションの「発動の仕方」が奇想天外で、こちらの想像を軽く超えてくる。
ただでさえ「実写で」非現実的なバカバカしいホラ話をやっているのに、それで表現できないほどの綺想とアンリアルの臨界点に達したときに、初めて「ストップモーション」が発動するといった感じ。
「夢があふれる」、とでもいうのだろうか。
たとえば、本作におけるストップモーション。
たまごをそのまま運ぼうとしても割れて危ないので、車のエンジンの上に置き、その上からボンネットをおろして運びました。で、到着地に着いてボンネットを開けてみます。さて、たまごはどうなっていたでしょうか?
ふつうは「熱で茹だって、茹でたまごになってしまいました」ってオチだよね?
でも、この映画ではちがう。
「車があたためながら走ったので、たまごが孵化して、つぎつぎと『車』が産まれてしまいました」
どうです? 車が孵化するんだよ? 虫の産卵みたいにわらわらと。
なんて、綺想。なんて、シュルレアリスム!
それから、チャーリー・バワーズの実写短編に共通する「呪物」である、「巨大機械」。
これのデザインが、とにかくクールだ。
どこかレトロで、手作り感があるけど、生物じみていて、得体が知れない。
親しみと懐かしさもあるけど、同時に怖さと薄気味悪さもある。
宮崎駿が観たら超興奮しそうな、スチームパンクでクトゥルフ的な巨大機械。
本作の場合、夢の「肥大化」が、ストップモーションだったり、異様な造形の巨大機械だったりの形であふれ出し、さらに肥大して、肥大して、最後には「爆発オチ」で終わるという(笑)。
チャップリンやキートンが好きな人には、正直かなり物足りないかもしれない。
でも、カレル・ゼマンやシュワンクマイエルが好きな人なら、問答無用で心を撃ち抜かれるはずだ。
百聞は一見に如かずで、ぜひみなさんも一度観てほしい。
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