「邦題の意味が中盤から分かってくる」君は行く先を知らない あささんの映画レビュー(感想・評価)
邦題の意味が中盤から分かってくる
人によっては最初から分かるだろう。『君は行く先を知らない』の邦題の意味を。
両親と成人した兄、歳の離れた6歳ぐらいのヤンチャな男の子、死が間近に迫った愛犬との一家の旅。
次男が車の窓ガラスに落書きしてしまったり、ロードレース中の旅人にちょっかいを出したり助けたり……
音楽に合わせて戯けてみせる母、ギブスをはめた父と、破天荒な次男の中、運転をする長男だけは沈痛な面持ちでいる。
今回の旅の理由を知るのは長男と両親の三人。“長男のお嫁さん探し”と聞かされる次男は本当の目的を知っていない。そして私たち観客も。
父親や母親が羊飼いや仮面をつけた男との交渉するシーンや、親子間のやり取りから、この度はとてもシリアスかつ、イランの国事情が絡んでいることが徐々にわかってくる。
旅とともに描かれる“愛する人との別れ”。
一方は永遠の別れ。そしてもう一方も二度と会えないかもしれない(僅かな希望もあるが)。
イランの荒野、トルコとの国境の地、延々と広がる景観は美しかった。
警官の美しさと、無邪気な次男の存在や、ラストの歌に合わせた彼のダンスが哀しみを和らげていた。
母親の気持ちを思うと胸が潰れそうだ。
今日も同じような家族が涙を流しているのかもしれない。
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