マクベスのレビュー・感想・評価
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キャサリン・ハンターがヤバ過ぎる!のだが…
とにもかくにも、あの3人の魔女を一人で演じたキャサリン・ハンターが本当にヤバ過ぎる!のだが…
予告編からの期待とおり、冒頭から魔術的で不吉な予感が満載の流石なカメラワーク…
相当ヤバイ映画か?これは?と期待値も一気に高まったのだが…
あのメインキャスト二人は、残念ながらミスキャストだったと思う。
デンゼル・ワシントンは齢65を超え、ここに来て新境地か?と思いきや、結局のところ、今までとおり根が誠実そうなデンゼルにしか見えず…
いくら感情を爆発させたところで、愚かな男の本物の狂気など全く感じることもなく(やっぱり顔が立派すぎるのか…)
三船敏郎やオーソン・ウェルズには遠く及ばなかった。アレじゃアカンわ。
案外、息子の方にやらせた方が良かったかも。
フランシス・マクドーマンドは、舞台でも既に同じ役を演じていたらしく、今回はプロデューサーも兼ねていて、流石の熱演であったが、思い入れ強すぎてか?迫真の演技で狂気を演じている舞台女優にしか見えず、残念ながらマクベス夫人本人として見ることは出来なかった。
コーエン監督、曰く「この作品では舞台のフィーリングを維持することが大事だった」ようで、殆どがセット撮影で(この抽象度を高めたセットのデザインがとても良かった)
台詞の方も元々のシェイクスピアの原作を多用していたが、もっと大胆に映像と音楽で抽象的に語ってしまって、台詞の方はシンプルに現代的にアレンジした方が良かったかもしれない。
その映像と音も如何にもマクベスらしい世界観を表現していて、かなりイイ線はいっていたのだが、コーエン監督も影響を受けたらしい『蜘蛛巣城』ほどの心底ざわつくようなホラー感や不吉で不穏な雰囲気には遠く及ばず…
(まあ『蜘蛛巣城』は、マクベス以上にマクベスとイギリスの評論家にも言われた程だから、あれに匹敵するのは並大抵のことではないと思うが)
あと、最後の方でマクダフと対峙した時の”one of woman born”の件の翻訳は分かりにくかったと思う。
やはり、マクベスは予言を盲信して「女の股から生まれた者には殺されない」と言うべきだし、マクダフは「私は母の腹を破って出てきた」と言わないと。
マクベスを知らない人にとってはストンと腹落ちしなかったのでは?
世界各国の主要都市ではIMAXシアターでの上映だったらしいので、出来れば、日本でもIMAX上映して欲しかった。
IMAXでアノ白黒の映像美を観ることが出来ていれば、より更に引き込まれて、また違った見え方になっていたかもしれない。
マクベス殺人事件
思い返せば、コーエン兄弟は「ブラッド・シンプル」のしょっぱなから犯罪映画にこだわりを持ってきた。(この映画は兄の単独作だが)「マクベス」もまた、ダンカン王殺しという犯罪をテーマにした作品である。“森が動く”とか“女から生まれた者”などのキーワードによるミスディレクションを巧みに用いつつ、破滅への運命をたどる主人公を冷徹に描いていく。
「マクベス」の映画化作品は、黒澤明とロマン・ポランスキーによるものを見ているが、今回の作品が最も演劇的だ(オーソン・ウェルズ版は見ていない)。背景は書き割りのように人工的で、台詞も修辞に彩られた原作の言葉をほぼそのまま移しているようだ。シェイクスピアの台詞は通常の会話の3倍くらい濃密で、聞き流しを許さない。
マクベス夫人は原作ではどのくらいの年齢の設定なのだろうか。フランシス・マクドーマンドと、ポランスキー版のフランチェスカ・アニスではかなり年齢の差がある。
コーエン兄弟のモノクロ作品は「バーバー」以来か。本作の上映はまったく予期していなかったので、ファンとしては嬉しい驚きだったが、いかんせん渋すぎた。既報のロス・マクドナルド原作の「ブラック・マネー」の映画化の話はどうなったんだろう?楽しみにしていたのだが。
ちなみに、ジェイムズ・サーバーの「マクベス殺人事件」では、ダンカン王殺しの犯人はマクダフまたはマクベス夫人の父という説(?)が唱えられている。
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