「『レント』を生み出した感性の原点」tick, tick...BOOM! チック、チック…ブーン! 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
『レント』を生み出した感性の原点
ブロードウェイを変えたと言われる『レント』の作曲家、ジョナサン・ラーソンの、あまり知られていない時代の物語だ。『レント』作曲のエピソードを観たいファンは多かったかもしれないが、あえて『レント』の話は出てこない。だが、あの戯曲を書くことができた彼の感性が、どのように育まれていったのかが良くわかる内容になっている。90年代のニューヨーク、もうすぐ30歳になる青年が夢を追いかけ続ける苦悩をミュージカルで描くわけだが、夢を追う人たちの背中を押してくれる素敵な内容になっている。タイトルは、作中で展開される彼のあまり知られていない戯曲から取られているが、もうすぐ30歳目前で、時間のリミットがせまって焦る気持ちを的確に表現している。エイズに感染した親友との別れ、恋人との別れ、多くの別れなどが彼に『レント』を書かせたのだと納得感ある作品で、作家の人生と創作の物語として非常によくできた作品だった。
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