「ウド・キアが素晴らしすぎて」スワンソング さるばばさんの映画レビュー(感想・評価)
ウド・キアが素晴らしすぎて
老人ホームで、お漏らし用シートをたたみ直すぐらいしかする事もない日々を送る往年のカリスマ・ヘア・ドレッサーの元に、他界した旧知の女性の遺言による死化粧の依頼が来る。
一度は拒絶するが、やってみようと思い立ち、その仕事に必要なものを調達する道中に彼を取り巻く人・場所・物事等が絡む顛末がロードムービー風に紡がれる・・・という内容です。
不満だった点を先に言います。
観る前に想像していたのと違って、意外にベタな作りでした。
彼の心情に寄り添うように随所に歌を挿入する手法もかなりベタです。
ベタが駄目だなんて言うつもりは勿論ありませんが、もうちょっと抑制の効いた渋い演出の方がこの題材には合っているのではないかと個人的には思いました。
故人の依頼に応えて死化粧を施すシーンが本作のクライマックスになると思いますが、その表現手法が殆ど主人公の顔と手元のアップの切り替えだけ、というのも私には不満でした。
まあ文句はこれくらいにして
とにかくウド・キアが素晴らしいです!
彼を見るためだけだけでも入場料を払う価値大ありです。
この映画には、いい場面が沢山あります。
アイテム集めの道中で繰り広げられる様々な人たちとのふれあいで、ほっこりしたり、クスっと笑えたり、身につまされたり・・・。
ときおり訪れるこういった場面が心に沁みるシーンになり得たのは監督の手腕よりも、ひとえにウド・キアの演技に負うところが大きいと思います。
私にとって心に残る映画が、彼のおかげでまた一本増えました。
以下、思いつくまま箇条書き的に
・白鳥は死ぬ間際に最も美しい声で歌うという伝説から、アーチスト等の生前最後の作品を指してスワンソングというそうですね。
初めて知りました。
・MOREが吸いたくなりました。
せっかく煙草をやめたので吸わないけど。
・実在の人物がモデルだそうですが、この映画のストーリーは実話なのでしょうか?完全な創作でしょうか?
・「デビッドに会ってきたよ」
「そうか。相変わらず死んでたかい?」
このやり取りが、やけに心に残りました。
以上、お粗末でございました。