劇場公開日 2023年1月20日

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「こういう現実があるのかと驚愕」母の聖戦 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5こういう現実があるのかと驚愕

2023年2月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

誘拐犯罪が日常的にはびこっているメキシコで、娘を誘拐されたシングルマザーが単身で犯罪組織と相対していくプロセスを徹底したリアリズムで描く作品。カメラは終始、主人公の母親を捉え続け、観客は母親と一緒に何が真実なのかを探ることになる。警察が信用できないだけでなく、身内をも信用できない。通りかかった軍に協力を要請して、主人公は犯罪組織の実態に迫っていく。
主演のアルセリア・ラミレスが本当にものすごい存在感で、平凡なシングルマザーが驚異的なまでに精神的な強さを見せて、闇の深い犯罪組織の実態を暴いていく。この映画は元々、ドキュメンタリーとして制作しようとしていたらしいが、あまりにも危険な現実を映し出すため、ドキュメンタリーでは難しいと判断されたらしい。徹底したリアリズム描写は、劇映画とはいえ偽物ではない、あまりにも強烈な現実に打ちのめされる。

杉本穂高