劇場公開日 2021年12月17日

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「若手女優のアンサンブルと容赦ない世界に慄く、監督の力量感じる意欲作」偽りのないhappy end たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0若手女優のアンサンブルと容赦ない世界に慄く、監督の力量感じる意欲作

2021年12月11日
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鑑賞方法:試写会

怖い

興奮

知的

今をときめく若手女優のアンサンブルに独特の緊張感。深く潜りこんだ真実の果てに観るhappyendに、ただ言葉を失う。

園子温監督の元で腕を磨いた松尾大輔監督の初長編。 監督直々にDMをいただき、試写室にて鑑賞した。今年は有り難いことに、たくさんの自主映画を見させていただいているが、特に力量とエネルギーを感じさせる作品だった。失踪が巻き起こす空白と正義感。入口の景色は出口に無く、見える部分が見えない部分の想像を駆り立て、そこに容赦がない。

撮影は2年前。まだ河合優実も見上愛も駆け出しだった頃なはず。今となっては豪華なキャストになり、そのメンツの数々に驚くが、才能は皆光っており、見応えがある。その中でも、主人公のエイミを演じた鳴海唯は、今まで見たことのない表情と演技が強烈で印象的。沼のように堕ちていき、何処までも妹を探す姿に慄く。一方、仲万美は初めましてだったのだが、シリアスな雰囲気に潜む真っ直ぐさに息を呑んだ。パワフルな演技は作品の核となって滲む。また、奥野瑛太が出る事の安心感ったら。作品の深みにいざなってくれる。

内容は非常にハードボイルド。年に8万人が失踪する日本で、彼女の姿をただ探す。東京と琵琶湖、2つの街に隔てられた壁が、彼女の行方をくらます。琵琶湖という絶好な景色に隠れた痛みが、まさしく妹の2面性のよう。そこに潜む「影」といくつもの出会い、ネットや疑惑が謎に拍車をかける。そうしてたどり着く答え。96分を止め処なく彷徨った最果てに、つい体は疲れを覚えた。

豪華キャストの偶然と、鬼才のもとで磨かれた感覚、鋭く靭やかなプロット…非常に見応えのある作品だった。是非とも拡大上映して欲しい。

たいよーさん。
またぞうさんのコメント
2023年12月28日

スジのまとめ方に不満が残りましたが、女優陣の活躍ぶりについては全く同意です。

またぞう