「消えてしまいそうです」雨を告げる漂流団地 ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
消えてしまいそうです
Netflixで配信中でしたが劇場での鑑賞を選択しました。特典のしおりも貰えました。
世間一般での評判はかなり賛否の否よりですが、自分はかなり楽しめました。なんだかこの現象は「バブル」と近しいものがありました。
批判点として多く挙げられている喧嘩の多さ、小学生って大人よりも些細なことで言い合いとかしてなかったかなーと思いました。教育実習で学童の生徒たちと遊んだ事がありますが、場所の取り合いだったりとか好きなものの相違とかですぐ喧嘩しちゃうので、今作の子供たちは結構リアルです。声優さんたちが流石としか言いようのない演技なので生々しくはなっていましたが笑
団地にいたら突然海に出たというファンタジー要素はこの作品の肝になっており、この団地は画面上にずっとあるというのも監督の団地好きが全面に滲み出ているなと思いました。自分は団地に住んでいた期間は短いですが、あの狭い空間でしか感じられない事もあったなぁとしみじみ。
夏芽と航祐は航祐の祖父が亡くなった事がきっかけとなり、距離を置いており、この団地にいる間も言い合いをするシーンが多いです。互いに互いを心配しているからこそ本当の自分を曝け出せなくて無闇に傷つけあっていますが、2人がサッカーで協力するようにピンチのシーンも少しずつ協力して元の2人へと戻っていく流れは王道ですがとても良かったです。譲と太志は暴走気味になる航祐を抑えたり、仲間を助けにいったりと、少し影は薄かったですが良き友人です。この2人に囲まれてる航祐は幸せもんだなーと。令依菜はとにかく高飛車お嬢様で、共感できないというレビューも分かるんですが、根は優しい女の子で友達思いでこれまた良い子なので、彼女が怒りっぽいのもその優しさがあるからだなーと微笑ましく見えました。珠理は結構行動派、頑張り屋さんでした。彼女は令依菜の引き立て役になってしまったかなと少し残念でした。ノッポくんはきっとお爺ちゃんのメタ的な存在だなと思いました。説明不足な点が多いのもある程度物語にモヤモヤを残してる感じはいいんじゃないかなと思いました。
漂流してくる建物に食べ物を探しに行くために、団地にあるあらゆる物を組み立ててロープウェイみたいにするアイデアはとてもワクワクしました。めちゃくちゃ危険な事をするなーとは思いつつも、その無邪気さがとても良かったです。観覧車を団地に牽引するアイデアは相当ぶっ飛んでいるなと思いつつ、映画館の大きなスクリーン映えする映像を楽しめました。終盤の夏芽と航祐が互いを再び信頼し合うシーンは感動せざるを得ませんでした。
スタジオコロリドのアニメーションは青色の表現がとても美しく、今作も突き抜けた美しさを誇っていました。キャラデザも可愛らしくてとても好きですし、ずとまよの主題歌・挿入歌を含めた音楽も最高です。声優陣もこれまた素晴らしかったです。水瀬さんは普段の大人しいキャラとは違う活発な令依菜を演じているのも普段とのギャップを感じて新鮮でした。
まぁ気になった点はいくつかあって、終わりそうで終わらない展開にはかなりモヤっとしました。二転三転していく展開が多すぎるので、もういいんじゃないかい?と思ってももういっちょ!とおかわりが来たので少しダレたなーという印象です。あと終盤に突然出てくる女性が何者だったのか、これが何も明かされないのも謎でした。おそらく令依菜が初め行った遊園地の思い出の擬人化なんだろうなと解釈しました。
確かに批判点には納得できる、けれど面白さは十二分に詰まっていました。Netflixで配信されていますが、劇場映えする作品だなと思いました。スタジオコロリド最新作は鋭意製作中という事なので続報を待ちたいと思います。できればホラーアニメを撮ってほしいなと願いつつ。
鑑賞日 10/6
鑑賞時間 18:00〜20:10
座席 A-1