劇場公開日 2021年11月26日

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「投資と政治の材料としての美術品」ダ・ヴィンチは誰に微笑む kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0投資と政治の材料としての美術品

2021年12月9日
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鑑賞方法:映画館

日本企業がゴッホの「ひまわり」を53億円で購入したのはバブル期のこと。元は取れるのだろうかと心配した記憶がある。損得勘定ではないではないのかもと。
本作に登場する「サルバトール・ムンディ」の売却金額は文字通り桁が違う。どんな仕組みでそんな金額になったのか気になっていたので鑑賞することに。でも、美術界に詳しくないので、序盤の絵画の修復や落札までの流れの説明が多くて若干退屈だった。ところが、「サルバトール・ムンディ」をロシアの富豪(マフィアみたいな風貌なのも笑える)が購入したあたりから俄然面白くなった。ロシアの富豪の代理人として購入の交渉を行った男が、実際に購入した金額よりも高額で購入したと嘘をつき、差額で4400万「ドル」儲けたという話がとにかく衝撃的だった。ちゃんと手数料も請求して。ただの詐欺じゃんか!ロシアの富豪もそりゃ訴えるわ!
そして終盤、誰が何のために購入したのかって話と、ダ・ヴィンチ展を開こうとしていたルーヴル美術館・フランス政府との水面下での交渉の話もまた面白かった。その際に「サルバトール・ムンディ」を誰が描いたのか、ルーヴルが行った科学的な検証結果についても。もうこうなったら誰が描いたのかはどうでもいいから、政治的・投資的な交渉材料として利用されていくということなんだろう。そこまで価値のある絵だとは思えないのは所詮素人感覚だ。
こんな映画を観ると、53億円で買ったゴッホの「ひまわり」ももしかしたら100億円以上で売却ができるのかもしれない。なんだ、ちゃんと元は取れるじゃないか。美術界の闇は深いな。

kenshuchu