劇場公開日 2021年11月26日

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「『TENET テネット』を観た人ならデジャヴ感を味わえる、世紀の発見に群がる魑魅魍魎達を追うミステリータッチのドキュメンタリー」ダ・ヴィンチは誰に微笑む よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0『TENET テネット』を観た人ならデジャヴ感を味わえる、世紀の発見に群がる魑魅魍魎達を追うミステリータッチのドキュメンタリー

2021年11月28日
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鑑賞方法:映画館

2005年にニューヨークの美術商ロバート・サイモンが小さなオークション会社のカタログで見つけて1175ドルで購入した絵画“サルバトール・ムンディ(世界の救世主)“。サザビーズの鑑定士が秒で査定拒否したその作品がダ・ヴィンチの作品ではないかと直感したロバートは2011年からダ・ヴィンチ展を開催予定だったロンドンのナショナル・ギャラリーに接触、複数の専門家が鑑定するも評価はバラバラ。それでも独自の判断でナショナル・ギャラリーがダ・ヴィンチ作として展示を強行したことから、作品の真贋とは別次元の熱狂が巻き起こる。

1175ドルで叩き売られた絵画が450億ドルにまで跳ね上がるまでの物語かと思いきやそれはこの物語の半分に過ぎない。美術商、鑑定士、学芸員、仲介人、大富豪、オークション会社のマーケティング担当といった様々な立場の人間が群がる絵画はお世辞にも美しくは見えないが、その絵が暴き出す美術作品売買における壮絶な駆け引きや科学的であるはずの真贋論争が個人の名声や利権によって変質していく様は痛烈。
本作が明らかにする事実や浮かび上がる憶測は現代社会に巣食う闇に潜むものと全く同質のものであり、結局のところ科学的であろうがなかろうが信じたいものを信じるという人間の性が熱を帯びて世界は混乱し、そのメカニズムを熟知した狡猾な人間だけが富を得ていくプロセスが余りにも絶望的でうんざりします。しかしながら本作に救いがあるのはそんな真贋が定かでない作品に感動し涙を流す人々もまた実在するということ。本作に圧倒される人々の中にしっかりレオナルド・ディカプリオがいるというさりげないギャグにニヤッとします。あと『TENET テネット』を観た人は結構なデジャヴ感を味わえると思います。

ということでレオナルド・ディカプリオ出演作としては最高傑作じゃないかと思います。

よね