「高齢者が活き活きとよみがえる姿は・・」茶飲友達 エルフくんさんの映画レビュー(感想・評価)
高齢者が活き活きとよみがえる姿は・・
つれあいを亡くし寂しい日々を送る高齢男性が、ふと新聞の3行広告「茶飲友達」の記事に目がとまる。
ここから物語が始まる。「茶飲友達(ティー・フレンド)は高齢者専門の売春クラブである。ここで活躍するティーガールたちも又高齢者であるが、こちらは実に活き活きとしていて明るい。
社会的に孤立し生気をなくした高齢者たちが、売春という行為を通じて、笑顔を取り戻し蘇っていく姿には、救われた安心感の一方で痛々しさ、物悲しさも感じてしまう。
クラブハウスの主催者である佐々木マナは、母親とのそりが合わずに家を飛び出して、風俗も経験してきたという身上で、自らが求めている家族のぬくもりや絆をクラブの人間関係の中に重ねて思い描いているようである。
クラブハウスに集う老若男女は、それぞれに問題や悩みを抱えながらここにいる。マナはそれらを引き受け支え励まし合いながら理想的なファミリーを築くために奮闘する。その姿はキラキラと輝いて見えた。
求めるものと求められるもの、お互いに活き活きとした人生を取り戻して笑顔になれる。そんなウィンウィンの事業は順調に思えたが、一つの事件で摘発されあっけなく瓦解してしまう。仲間たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていき、ひとり残されたマナは囚われの身となる。そんな彼女に一人の面会者が訪れる。母であった。「何で−?」「家族だから−」
この映画は、超高齢社会に突き進む現代の日本で、高齢者の孤独、孤立、貧困などの深刻なテーマに、高齢者売春業という事件をモチーフにしながら、高齢者が活き活きとよみがえる姿を「アンチテーゼ的」に描いて見せたことに意味があるように感じた。それはけっして「性」に重きがあるのではなく、別の仕事や役割でいいのではないか。ちょっとしたボランティアでも何でも。要するに社会との繋がりの中でこそ人は生きていることの実感が持てるのだということ。
さりとて、3人に一人が高齢者となった現代社会で、中々に重たいテーマであることは間違いない。
映画の評価として、物語の顛末があまりにあっけなく終わってしまったこと。最後の場面で「家族」の問題が、消化不良の感が残ったこと。などが、個人的には残念に感じた。