劇場公開日 2023年2月4日

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「行政では救えない“スキマ的な需要”それを満たすティー・フレンド」茶飲友達 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5行政では救えない“スキマ的な需要”それを満たすティー・フレンド

2025年1月6日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

性風俗を描いた映画には独特の、
好奇心を刺激するスキャンダラスな一面があり、
その点では、かなり面白いと思いました。

見たことのある役者は渡辺哲さんのみ。
主演のデルヘリ「茶飲友達」のオーナーのマナ役の岡本玲さん
以外はオーディションで選ばれた役者だと聞き驚きました。
女性の場合、高齢者の方が、ヌードシーンに抵抗があるのでは?
と思うが、無名俳優の芝居への情熱と層の厚さを思い知った。
(このことは「侍タイムスリッパー」でも、同様の事を感じました)

この映画のデートクラブというかデルヘリは、
オーナーのマナが「大きな家族の家」を理想としていて、
自分が風俗嬢で働いて感じた《怖い世界》を、
ユートピアにしようと日夜頑張っている。

万引きしている老女・松子を、咄嗟の機転で
助けて、仕事に誘う。
松子は意外と適応性がありNo.3の指名が付く売れっ子になる。
松子は両親の介護に青春を費やし、解放されたと思ったら
喪失感と虚しさで生きる意欲を失くしていた。

主催者のマナは厳格な母親との確執からか?
風俗嬢をして来たが、自分が立ち上げた「茶飲友達」を
ユートピアにしたいと願い擬似家族のように松子にも接する。
演じる岡本玲はとても美しくて演技も上手くて、
素晴らしかった。
(wikiを読むと近年は上質の舞台に多く出演しているようだ)

会員数が1000人を突破して、
マナと男性スタッフの誕生日のお祝いで盛り上がる。
そんなすぐ後でアクシデントは起こる。

松子がホテルで落ち合ったよ客が、松子がシャワーを浴びてる
間に自殺したのだ。
死ぬ客を助けもせずに、死ぬのを見届けて、部屋を抜け出す松子。
松子は《死なせてあげる》ことを正しいことと、頑なに正当化する。
このことで、「茶飲友達」は摘発されてマナは逮捕される。
婦人警官とのやりとりが、面白い。
「ルールはルール」という警官と、
「ルールで助けられない“孤独な老人たち“がいる」と、
自分は悪くないと自説を話すが、逆上して殴りかかり
マナは素顔を晒してしまう。

マナが重病の母を見舞って修羅場になる場面。
そして母と娘のように信頼しあって見えた松子の裏切り。
売上金もシルグルで出産する覚悟の若い女に持ち逃げされたり、
信頼するに足る、信頼に値する人間は、このメンバーの中に
何人いるのか?と訊ねたくなる。
「茶飲友達」はマナの仮想ユートピア」でしかなかったのか?
マナの実母への憎しみ、毒ばかり吐く母親。
毒親は子供をスポイルする。
高齢者の客は金を払い、その対価としてサービスを受けた。
孤独を慰め、人肌で温め、仮想の“愛の時間“を受け取る・・・
性風俗は必要悪?
(悪というか?いいえ、悪ではない、)
公衆トイレのようになくてはならない?ものかもしれない。

気持ちよく見ていたら
最後のしっぺ返しがキツイ。
ガッツリ持ち上げて、ドーンと真っ逆さまに落っことされる・・・
これが現実なのね。
マナはきっとまた復活する・・・
「大きな家=シェルター」を売春ではない方法で
作ってほしいと、願う。

琥珀糖