「女性同士のささやかな絆。」ユンヒへ せつこんさんの映画レビュー(感想・評価)
女性同士のささやかな絆。
小樽に住むジュンと韓国に住むシングルマザーのユンヒ。ジュンがユンヒに向けて送った手紙を機に娘とユンヒが小樽へ旅する話。
女性同士の愛の話とシスターフッド的な話でもあるけど、去年の日本映画『あのこは貴族』のように その絆をささやかに描いてるとっても温かい話だった。
特別な言葉は介さずとも共鳴し合いお互いを抱擁し合うジュンとその叔母、全ては話さずちょっとずつ母のことを知ることで絆を深め合うユンヒとその娘。全ては知りえなくてもなんとなく理解し共感し合う女性たちの姿を全部丸ごと抱きしめたくなった。
小樽を覆い尽くす雪は、ジュンが過去のことや自分のセクシャリティをずっと隠していることの象徴のようで、叔母が何度も言う「雪はいつやむのか」という言葉はジュンが本当の自分をさらけ出せる日はいつ来るのかというふうに聞こえる。
"何かを覆っている"という意味では結構言葉の裏を読ませる会話が多いなと思った。ジュンの経営する動物病院に通う女性とのやり取りも「月が綺麗ですね」と言っていたり、暗に女性が好きであることを隠しなさいと言っているようなセリフがあったり。バーで友達と会ってご飯食べたと韓国語で話すユンヒもしかり。
他にも、大学を諦める代わりに内緒で母が買ってくれたと語るユンヒの話も女性たちの見えないところでの強固な繋がりを感じさせるし、そもそもユンヒとジュンの交流もほぼ隠されてる。この映画で、全てを覆い尽くす雪は厳しいものではなくて、優しく守ってくれるものなんだな。
雪が降りつもる小樽を舞台にしても画面の中がずっと温かいから、2人が本当の自分をさらけ出せる日なんて来なくても、きっと幸せに生きてけれると思わせてくれる。
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