「笑うに笑えない極上のブラックコメディ」ドント・ルック・アップ ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)
笑うに笑えない極上のブラックコメディ
もし巨大な彗星が地球に落ちてきたら?
そんな題材の映画はこれまで無数にあった。
しかし本作はそれら過去作に埋もれるような凡作ではない。むしろ、その過去作を遥か過去の物に押しやる程に強烈な1本だ。
もし巨大な彗星が地球に落ちてきたら?
全人類が一致団結して彗星を破壊する?
いやいや、この映画はそんなスムーズに話を進めてくれない。それどころか、大統領もメディアも冗談半分に笑い飛ばしてまともに取り合おうとしない。
危機を未然に知り、対策を取ろうと奔走する者。
直面する危機から目を逸らし目先の利益を優先する者。
この相反する両者を見て、視聴者は初めは笑ってしまう事だろう。私もそんな1人だった。
だが次第に気づくのだ。彗星落下はフィクションなどではないと。むしろこれはあらゆる災厄の比喩であり、二分される両者の主義主張は、コロナ禍で分断された世界を生きる私達自身なのだと。
こうなるともう笑えない。
むしろ背筋がゾッとするほど恐ろしくなる。
人間は危機に直面しても一致団結なぞせず、目先の利益の為に本質を見失い自滅していく…そうこの作品はメッセージを発しているのだ。
なんて愚かな事だろう。
しかし、これを単なるフィクションだと割り切る事もさせてくれない。何故なら、今まで見てきたアルマゲドンやディープインパクトこそフィクションであり、本作のテーマこそ現実だと肌感覚で分かってしまうからだ。
人間は彗星衝突で絶滅するわけでも、ましてエイリアンの侵略で絶滅するわけでもない。人間は、人間自身のエゴに食い尽くされて自滅していく。
この余りに重い事実をエンタメとして消費できてしまう業の深さ。これこそが人間という愚かな生き物の本質なのかもしれない。
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