「コミカルに露呈する現代人の倫理観」ドント・ルック・アップ 室木雄太さんの映画レビュー(感想・評価)
コミカルに露呈する現代人の倫理観
ニヒリストでも上空を眺め出す荒唐無稽な真実を、ここまでやり切れれば芸術か。冷笑主義を逆手にとって炙り出す、快楽主義の行末。誇張された表現も、いや、これは米国や中国の偽りなき実態では⁈と冷静な捉え方をしている自分もまた、今作にのせられている一人なのだろう。このテンポの良さもまた、現代社会の速度そのもので、目紛しい情報の洪水と、らちの明かないコロナ禍における価値観の分断も、そうした錯覚の要因にだろう。つまり、本作で描く壮大で滑稽な作風は、現実の比喩に他ならない。
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