ちょっと思い出しただけのレビュー・感想・評価
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良くも悪くも人によって評価が分かれる作品
見る前は花束みたいな恋をした、のような感じかなと思っていましたが、時系列が複雑で過去の恋愛のワンシーンを思い出す人の脳内を覗いたり現実に戻ってきたりしてる様な感覚でした。
あと個人的感想としては良くも悪くもクリープハイプの曲込みで完成してる映画だなと思いました。
度々尾崎さんが登場したりクリープハイプがバンドとして出てきたり何度か劇中で曲が流れたのでファンとしてはすっごく嬉しかったです。
ですが曲やクリープハイプをあまり知らない人はクリープハイプの存在が強調され過ぎていると感じる方もいるんじゃないかなと感じました。(実際ファンではない友人はそのように感じていました)
ライブのシーンや曲をスクリーンでもう一度くらい聴きたいが、クリープハイプを抜きに考えたらもう一度観にいきたいと思う程では無いかなあ……
声がいいと思う
時間を遡って行くので、映画のほとんどの部分が回想シーンと言ってもいいんじゃないかな。
終わってしまった恋に合う、落ち着いた映像が良かったと思います。
それでね、この映画が凄いなと思ったのが、別れる前の年までの二人。
ラブラブな二人、もっと言えばバカップル。
これ、普通に演じたらキラキラした感じになっちゃうんだろうけど、ちゃんと切ない思い出の一部になっているんですよね。
二人の演技力もあるのでしょうが、二人の声質が落ち着いて感じるからなんじゃないかな。
伊藤さんが、過去を振り返る作品に重宝されるのが、納得できます。
ストーリーそのものって言うより、雰囲気を楽しむ映画だと思います。
めっちゃノーランみを感じる
完全にノーマークの作品でしたが、めちゃくちゃ評価が高かったので鑑賞。恋愛映画であるということは事前に聞いていましたが、具体的な内容については全く知らない状態での鑑賞です。
結論ですが、良かった!!事前情報を全く観ていなかったのが逆に良かったのかもしれませんね。本作の映画の特殊な構成によって、序盤に感じた違和感が「そういうことだったのか!」と解消される瞬間の爽快感は、事前情報があったら得られなかったと思います。
構成に凄く既視感がありましたが、クリストファー・ノーラン監督の『メメント』ですよね。最初は一瞬「どうなってるんだろう?」って思うけど、観ているうちに「あ!そういうことか!」と気付き、構成の上手さに驚かされます。
昨年公開の『花束みたいな恋をした』と内容が似ていると言われていますが、どちらかと言えば『(500)日のサマー』の方が近いように感じます。ただ、どの作品も独自性があって素晴らしい映画ですので、『ちょっと思い出しただけ』が気に入った方は『花束みたいな恋をした』『(500)日のサマー』もオススメします。
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怪我によってダンサーへの道を諦めて舞台照明の仕事をする照生(植松壮亮)と、タクシードライバーとして働く葉(伊藤沙莉)。二人のさりげない日常を描きながら、東京の町での人々の人生の機微を描く。
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大きな事件が起こらないのに、些細な会話が続くだけなのに、全くダレるシーンがなく楽しめる。会話の一つ一つが、きちんと意味を持って存在している感じが見て取れる。
植松壮亮さん演じる照生の誕生日(7月26日)を一年ずつ遡っていく物語構成のおかげで、「将来こうなるんだ」というのが分かった上で二人のイチャイチャを見せられている感じ。足を怪我した照生がダンサーとしての夢を諦めざるを得なくなり、葉と喧嘩して二人の関係性が崩れてしまった日。その展開を知っている状態で、その一年前に「来年の誕生日にプロポーズしよう」って言っている照生を見せられるわけです。観ていて苦しい。こういう「一年後が分かっているからこそ、何気ない言葉が刺さる」というシーンが結構多いんですよね。
小物に意味を持たせているところも素晴らしい。
特に印象に残っているのは「ケーキ」と「バレッタ」。ダンサーを目指している照生は厳しい食事制限を行なっていたため、自分の誕生日であってもケーキはほとんど食べません。せいぜいクリームをちびちびと啄んだり、ケーキの上に乗っかってるイチゴを食べるだけです。しかし、劇中には2回ほど、照生がガッツリとケーキを食べるシーンが登場します。つまりそれは「ダンサーとしての夢を諦めている」ことを表しているんです。髪を切ってからもバレッタを手放さなかったのは、ダンサーとしての夢とかつての恋人である葉への思いを断ち切れていない証左です。
劇中には上記のようなディテールにこだわりを感じるシーンが多数ありましたので、本当に細部まで作りこまれた脚本や画作りがなされているなと感じます。こういう作りこまれた映画は大好きです。観終わった後、観た人同士で「ここが良かった」「このモチーフにはこういう意味合いが含まれてそう」と語り合うのも面白そうな映画です。
役者陣も非常に素晴らしく、特に主演の二人は文句なしです。個人的に、コンパでイマイチ周りの雰囲気に乗れずに居酒屋の外に出た葉をナンパする男の役で、お笑い芸人であるニューヨークの屋敷さんが出てきたのは驚きました。後からニューヨークさんのYouTubeチャンネルを見てみたところ、本作の監督である松居大悟さんとは古い友人らしく、その繋がりで出演したらしいですね。そこそこ台詞量もある役だったんですが、演技は普通に上手だったので全く違和感なく観ることができました。
間違いなく、今映画館で観るべき映画でした。本当に面白かったです。
オススメです!!!
心に深く刻まれるほど現実的で共鳴してしまった素晴らしい作品
「花束みたいな恋をした」「明け方の若者たち」そして「ちょっと思い出しただけ」...。昨年から立て続けに、現実的なシチュエーションで描かれたラブストーリーが多いが、この作品は特に印象深いが為、瞼に焼き付くほど今後も記憶として残りそうです。一連の、どの作品も悲しみや寂しさ、重さを感じるものがありますが、決して後味が悪いとか滅入る作品でないのは、共鳴する題材で描かれており、他人事のような話や夢のような物語ではないからだと思います。「花束みたいな恋をした」は幸せ過ぎる恋愛から時と共に歯車のズレを描いた作品、「明け方の若者たち」は不倫の先に待ち受ける現実を描いた作品、そして今回のような「ちょっと思い出しただけ」のように、どんなに好きでも一緒になれない運命を辿ってしまう作品は、以前大ヒットし実際にもハッピーエンドとなった「糸」とは違い、職業や状況など映画とは別物でも、近い人生を歩んできた人は少なからず居るはずです。私もその一人故に凄く共鳴しました。物語の中で、時間が前後したりしますが、決して判りずらいとかは無く、自然に物語が描かれ流れていきます。最終的に思うように行かないラブストーリーかも知れませんがラストの描写は最高です。2時間以上の上映時間ですが1度たりとも眠気に襲われるようなことはありませんでした。とにかく、今は幸せなんだけど過去を引きずっている人、でも過去には絶対戻れない・戻らない人、ぜひ観て下さい。
そういえば・・・
ふと思い出す過去の様々な想い出を誰にも分るように客観的映像にしたら正に今作品の上映時間になるという事を、低評価のレビュアー達はまず再認識した方が良い。”ちょっと”という主観的な時間軸が如何に長いかが余りにも自覚できていない人の散見ぶりを読むにつれ、脊髄反射でハリウッド映画ばかり、お粥のようなドラマを見続けてる人の思考をぶつけられて悲しくなる。監督の何方か、次回のテーマにこういう思考停止輩の日常を描く作品を作って欲しい程だ。
そういう人が、例えば何か体験をしたとして、頑張って理解しようとすることは苦痛なのであろうか?風俗で"鮪"に出くわした時の憤りを、しかしそれを想像出来ない脳みそのシワが少ない自分を先ずは馬鹿にすることが正解なのである。
人生なんて思い通りにならないパーセンテージは9割以上。思い通りに言ってる人は映画なんて観ない。現実が映画的なのだから。
好き嫌いのハッキリするタイプの今作を、自分の心に刺さらなかっただけで、星の数を減らす愚行に憤りを感じる昨今である
ちょっとどころじゃなかった
ここまで、好きだなぁ〜と思える映画に今まで出会うことがなかった。
初めから終わりまでの空気感がずっと心に響いていて
そう思うのは映画の構成が関係しているような気がする。
池松壮亮さん演じる照生と伊藤沙莉さん演じる葉が
描かれているポスターなのに、全然ツーショット出てこないじゃん!と思いながら、画面は黒みになり
「カチッ」という時計の音。
この時計の音の変化や2人の周辺の人間関係、憎まれるような人間が出てくることはなく、一人一人のキャラクターの厚さが終始心に響いてきました。
各パートで会話の間や映像の使い方が好きだなぁ〜となりました。
例えば、シロクマやニューヨークの屋敷さん演じる康太と葉の漫才のような会話などなど
最終パートでの照生の「ちょっとね」というセリフで
溜まっていたものが溢れてしまったけど
それは悲しいとかじゃなくて
ただこの2人には幸せになってほしいと願うものでした。
今まで観てきた作品の中で、面白いとかそういう表現じゃなくて好きだと思える作品です。
余韻がすごい
最後屋敷さんが全部持ってった。笑
伊藤さんも池松さんも素晴らしすぎる。。特に伊藤沙莉ちゃんは元々大好きな女優さんで、自然体だけど存在感があって流石。
段々幸せだった頃に戻っていくのがめちゃくちゃエモい。辛い未来がわかってるからこそ、美しいし尊く見えるのかもしれない。2017年?の二人のピークの頃がなんかもう幸せ過ぎて泣きそうになってしまった。
もう一回必ずみたくなる映画。恋の始まりを見てからの序盤はまた違って見える気がする。1日だけを描いた映画だからこそ、たくさんの余白があるのでたくさん考えさせられてしまった。
実は屋敷と出会ったあのタバコのシーンが一番好きかもしれない。葉ちゃんと屋敷の愛も見てみたい。笑
構成が面白かった
元ダンサーだが、怪我で諦めて舞台の照明係をしていた照生とタクシードライバーの葉の2人を中心に、7月26日を2020年から2016年まで遡っていく構成。
2人が別れた後から始まり、出会った経緯が最終盤に出てくるなど、謎解きのようで面白かった。
池松壮亮と伊藤沙莉は上手いなぁって思った。
2人以外では河合優実がスタイル抜群で美しくて良かった。
恋愛映画のような恋〜をしてみませんか
ロマンチックなデートシーン、二人の間で交わされる親密な会話、観ているこちら側が思わずニンマリしてしまう程に、恋に落ちた二人の姿が微笑ましい。
キラキラした瞳の池松壮亮さん(ダンサーを目指した照生)、子猫のように愛くるしい伊藤沙莉さん(タクシー運転手の葉)の魅力に溢れた作品。
居酒屋の外で「オバハン」・「ショーワ」とツッコミを入れながら話しかけてくる男性に、葉が本音でサラリと言葉を返すシーン、三人組のサラリーマン( 渋川清彦さん、いい味出されていました。)と葉との軽妙なやり取り、いいスパイスになっていました。
切なく胸を焦がした恋を、ふと思い出させる、そんな素敵な作品でした。
二十代の皆さん、恋愛映画のような恋をしてみませんか?
映画館での鑑賞
バランス
ちょっと悲しくてちょっと懐かしくて、現在もそれなりに幸せで嘆くこともないんだろうけど、近くによれば思い出の場所ものぞいてしまうし記念日にはふとケーキなど買ってしまう。やっぱり輝いていた記憶。最近すこし昔を思い出す話が幾つか続くけど、これはこれで良い映画だと思った。凝った構成には要らぬ頭も使ってしまったケド。初対面の夜のアーケードなど幾つか挟まれた長回しもはまっていた。成田凌のシーンは笑えた。河合優実も自然に可愛くて良かった。ニューヨーク屋敷は嫌味がなくて後味が良い。
主役陣、池松壮亮は大人になった。超シリアスな本郷猛に期待。伊藤沙莉は同級生役、変わった友人役からいつのまにか堂々とした主役になり、今作でもますます可愛くなっている。良い声が劇中でも褒められて良い気持ち。
最後にちょっとだけキュンとなった
最近も精力的に作品を発表していた松井監督。のをあまり観てなかったのだけど、随分大人っぽい感じになっていた。なんとなく聞いていたペパーミントキャンディー方式のワンデイといういいとこ取りのような企画、に、芸達者のふたりとくれば悪いものを見せられるはずはない。ただ、そんな組み合わせからするともっと上を期待してしまう。
なかなかエモーションかからず、というのはこの手の遡り映画の常かどうか思い出せないけれど、いくつかあったピースがラストのラストで被って朝焼けを迎えてベランダに立つ伊藤沙莉の、ケーキはあした食べるというあたり、人には心の奥にしまいこんでる大切な大切な思い出があるもんだ的な秘密の笑顔には泣いたりはする。
にしても何度か映る家の前の坂道も朝焼けに帰り道になった時の優雅な切なさというか。
とはいえ、最後の最後までエモーションがかからないのだ。その意味では「あの頃花束のような恋をした明け方の若者たち」の中では少し大人で渋い出来、かな。
ちょっと本歌取りしただけ
ジャームッシュ感満載の作品と聞いたので予備知識なしに公開初日に鑑賞。
いろんなサイトのレビュー読みましたがあまり触れてない?と思い珍しくレビューしますが、、
「ちょっと思い出した」のは彼女一人だけじゃなくて、実はラストに居合わせた3人全員、なんですよね。
彼女はステージの彼を見て、ミュージシャンは劇場の彼を見て、彼はそのミュージシャンがタクシーに乗り込むのを見て。
3人が3人の6年間を「ちょっと思い出した」ってとこが後で気付いてジンときた。
個人的大傑作。今までの恋愛映画を過去にする素晴らしい構成と演出、そ...
個人的大傑作。今までの恋愛映画を過去にする素晴らしい構成と演出、そして主演2人の見事で身近な演技に鳥肌の連続。きっと何度も見返したくなるだろう作品だ。
ジム・ジャームッシュのナイト・オン・ザ・プラネットが土台にある作品だけあって、随所に作品のサンプリングが光る。ウィナノライダー演じるコーキーが女優の誘いを断ってでも整備工になりたいという強い思い、そこからは彼女の自分の人生への強い決意が伺える。それはこの作品のキャラクターにも反映されている。怪我をしてもいつかまた踊りたいと願う池松壮亮。結婚し子どもが産まれてもタクシーを運転し続ける伊藤沙莉。亡くなった妻をベンチで愛し続ける永瀬正敏など挙げればキリがない。変わらない人生や夢、目標、生活。変わったのは2人の関係だけ。その変わってしまったたったの数年間は広い目で見ればほんの少しの煌めきだが、その煌めきがいかに尊いものだったかをこの映画は思い出させてくれる。
当時付き合ってひどい別れ方をしたとして、その時は嫌な思い出として記憶されるが、数年後にそれを記録として思い出してみると、さほど嫌な記憶でもなかったなぁ、あの人がいたから今の自分がいたんだなぁ、と淡く光出す。人生の中で良い悪い問わず積み重ね続けた思い出は、きっと今の自分の背中を押してくれる。そんな強く前向きなメッセージをこの映画から受け取れた。
どこかしら愛おしくなる映画…映画の作り方としては全く異質だが「花束みたいな恋をした」に続く令和生まれの恋愛映画の佳作。
①「花束みたいな恋をした」とは真逆に一組の男女の出逢いから破局までを時間軸を逆行して描いた恋愛映画だが主演二人の好演により大変好ましい映画となった。②
演出的な意味でもう一度観たい
時系列が現代→1年前→2年前のように、繰り下がっていく回想だったので、「出会いから別れるまでの時系列順回想映画」だと思って観ると途中までついていけなくなります。私がそうでした。汗
(カレンダーがおしゃれすぎて、「26」にしか目がいかず、何年の何月なのか途中までわからなかった)
途中で、繰り下がりの回想なのか!と気づいてからは、映画を観つつも脳内で「これがこうなってああなったのか」というように組み立てながらみていました。結構頭使います。笑
終わった後、お手洗い内で「時系列が難しかった」という会話がチラホラ聞こえたのも納得…。
ストーリー把握した上でもう一度観たいですね。
さて、花束のヒットからこういう「東京の片隅で若者カップルがただ恋愛するだけの映画」が増えたと思いませんか?そして必ず、「花束」と比較するコメントがあると思いませんか?
東京のアパート、揺れるカーテン、入り込む日差し、2人だけの世界、たまに猫、メジャーではないバンド、(の歌が挿入歌としてそのまま使われる)、独特な例え話、独特の感性を持つ自分達に酔っているような長い名言風セリフ…
私は坂元裕二さんが好きなので、こういう映画もドラマも大好きです。1人で観るにはもってこいの映画でした。
ただ、途中入場してきたカップルに避けて置いておいた紙袋を蹴られて踏まれ、そのカップルはスマホをいじるわポップコーン落とすわで最悪でしたね。
他にも途中入場者がチラホラ。
なんかマナー悪い人増えたなあ。
エンディング最高映画
最高。
22年最高の1本がもう決まってしまったと騒ぎたい。
話は別れた二人が別々の人生を歩んでいるところから始まる。次に、元カノがあるきっかけで元カレの姿を見かけると、その人との日々を思い出してしまう。
別れた日のこと、楽しかった日のこと、付き合った日のこと、出会った日のこと、そして今の旦那との生活というふうに時間軸が戻り、帰ってくる。
その記憶はすべて彼の誕生日(6月27日だっけ?)の出来事で統一されていた(はず?でも”出会った日”もそうだっけ??)
最後にクリープハイブのナイトオンザプラネットが流れて「ちょっと思い出しただけ」のタイトルがドーンと出る。
この瞬間に感じる「悲しさ」は120分いろいろなところに連れて行かれて、たっぷり感情移入していた分だけ重みがある。最高の120分だったという有終の美。
エンディングでは、めちゃくちゃ丁寧に作った醤油のように複雑な感情になってしまっており、フィクションなのに実感がちゃんとある。
複雑な気持ちを分解すると、まず確実に存在する「短調な」気持ちがベースなのだが、それに「甘い思い出」や少し「遠い過去の記憶」であること、でも「今の自分を構成している出来事」であり、「もしあのとき別れなかったらというif」などいろんな要素になるのか。これらがすぐそこに佇んでおり、ただの『悲しい』では片付けられない。
映画的にはシーンの切かわりが単純なフェードアウトで(しかも毎回同じ)、あえてなのか比較的低予算なのか、どこかB級感があった。
でも身近な出来事の話だからそっちのほうがいいや。とはいえ有名どころが脇を固めていたし、そんなことないかな。
時系列が逆転していくが、コロナ下でマスクを付けたシーンから逆にマスクがなくなったことがヒントになり、二人の関係性も変わることで逆転を確信させる作り。これは「今」じゃないと使えないから新鮮だった。10年後は通用しないのかもしれない。
葉がタクシーに乗せた客の中に離婚記念日の兄ちゃんがいたが、その人達が前は照生のアパートの住人だったという偶然の設定は偶然すぎていらなかった。
時の流れは皆平等という印象を得させたかったのかもしれないが、醤油ラーメンに濃い目のにんにくを入れたようでちょっと雰囲気に会わないように感じた。
良かったシーンは
・ 野原葉(元カノ)と照生(元カレ)が出会って、帰り道にもう会わないじゃんってことでストリートミュージシャンに合わせてふざけて踊ったところ。あのシーンは最高だった。見ていて嘘偽りなくマジで楽しい気持ちになる。フィクションでも全然楽しいってやっぱりありえるんだなと改めて実感した。この女優、楽しそうにしてる演技が最高に映えるなぁ。後ろで歌ってるのが尾崎世界観なのでもうバッチリ。
・ 葉が照生に「私達ってどうなの?」と詰め寄るシーンは思わず笑ってしまうが、作品のバランスを崩さない茶目っ気で気持ちよくくすくすできた。
他にも、いつも公園で妻を待つ男性が過去に遡ると、待っていた妻が傘を持って現れるところはベタだけど、狂うだけの理由があるのかと納得。
尾崎世界観だけトリックスターというか、フィクションを設定する側の人が作品に出ちゃっていて、じわじわと不思議に感じられて面白い。
時世もあり満席ではなかったが、エンドロールの最中に出る客は皆無だった。最後に来客限定で壁紙ダウンロードのQRコードが出たが、短すぎて読み取れない人がたくさんいた。あれは2回見に行かないと駄目ってことだな。
【”二度と戻らない、愛しくも仄かに苦き六年間の日々・・。”タクシー運転手の女性と元ダンサーの恋を、彼らが出会った人々の姿と共に逆時系列で描き出した恋物語。チョイ役の俳優さん達の姿や言葉も佳き作品也。】
ー 今作は、誰が見ても分かるように、ジム・ジャームッシュ監督の「ナイト・オン・ザ・プラネット」(原題:Night On Earth)に着想を得て製作されている。
冒頭から、元ダンサーで、足の怪我により今は照明係の照生(池松壮亮)が夜中に観ているTVに「ナイト・オン・ザ・プラネット」のロサンゼルスの街で、タクシーを流すコーキー(ウィノナ・ライダー)の姿が映るのである・・。ー
◆感想
・時系列を出会いから遡及しながら、物語は過去の二人を描いていく。きっかけは乗客のトイレのために停車したところで、タクシー運転手の葉(伊藤沙莉)が、元カレの輝生が夜中に一人でダンスのレッスンを痛めた足を気にしながら行っている姿を偶然見てしまった所から始まる。
- 物語設定の着想が秀逸である。松居監督の過去作「くれなずめ」を思い出す。ー
・輝生の部屋のベッドの上には、「Night On Earth」のポスターが貼ってある。
- 欲しいよ!ー
・毎日、同じルーティンを繰り返す輝生。
起きて、植物に霧吹きで水を与え、猫に餌をやり、アパートの階段を降り、曲がり角で足を止めてお地蔵さんに手を合わせ、公園を突っ切って歩いて行く。
公園には、妻に先立たれた男(永瀬正敏)が、椅子にぼんやり座っている。
男に挨拶をする、輝生。
- この一連のシーンは、ジム・ジャームッシュ監督の「パターソン」を容易に想起させる。毎日、同じことを繰り返す、パターソンに住むバス運転手パターソン(アダム・ドライヴァー)の姿を・・。
あの素敵な作品では、日本からやって来た、詩が好きなサラリーマンを永瀬正敏が演じている。今作と同じように公園のベンチに腰掛けながら・・。-
・輝生と、葉が付き合っていた頃のシーンで、コーキーを女優に誘うヴィクトリア(ジーナ・ローランズ)の遣り取りを、楽しそうに真似る二人。
”夢は何?””整備工よ!”
ー この後、ヴィクトリアはコーキーに”貴方にピッタリの役があるの。物凄く良い役よ。””分かるけど、あたしはタクシー運転手よ。いずれは整備工に。”・・と言う会話が続くのであるが・・。
ついでに書くと、今作では輝生の脚が、ドアに挟まれそうなシーンがあるが、「ナイト・オン・ザ・プラネット」でもコーキーがヴィクトリアの脚をドアで挟みそうになるシーンがある。”ちょっと、待って。脚がまだよ。”ー
・タクシーに二人で乗っていて、葉が降りようとした時に、輝生が何かを言いかけて止めようとしたときにタクシードライバー(鈴木慶一!)が、二人に掛けた言葉も良かったなあ。
ー ”大事な事は、思った時に言わないと・・。メーター止めておきますから・・。”
粋なドライバーであるよ。-
・随所で出てくる、ケーキの使い方も上手い。物語の流れの区切りになっている。
輝生と、葉が二人で食べた輝生の誕生日ケーキ。
劇団の初日にサプライズで輝生に振舞われたケーキ。
葉の行きつけの飲み屋のマスター(國村隼)に、”彼”(菅田俊!!!)が出来、誕生日ケーキの飾りつけをするシーンも、オモシロイ。
・ラストの輝生と、葉が初めて会った夜、シャッターが下ろされた商店街で、二人で手を繋いで、ジャンプを繰り返すシーンも良い。
彼らの傍で、ギターを爪弾く男(尾崎世界観)の姿。
<二度と戻らない、ある男女の愛しくも、仄かに苦き六年間を彼らを取り巻く多くの人々の姿と共に時間軸を遡って描き出したラブストーリー。
成田凌、渋川清彦、篠原篤、市川実日子、高岡早紀さんなど、俳優さん達が、チョイ役で多数出演している所も、楽しき作品である。>
■今作のフライヤーが、手元に8種類ある。
印象的なシーンが表にプリントされている。少し、嬉しい。
胸を掴まれる映画
胸をぎゅっと掴まれる作品。
本当に観て良かったなと思った。
現在から過去に遡るから、過去のキラキラが本当に切ない。思い出した時のふたりもそんな気持ちかな、と思った。
主演のおふたりの演技が本当にナチュラルで、リアルで、ふたりの気持ちが手に取るように感じられて素晴らしかった。
付き合って、別れる。そんなありふれたカップルなのに、なんでこんなに胸を掴まれるんでしょう…ふたりが嫌い合ったわけでもなく、ほんの少しのすれ違いだと第三者的にはわかるからなのか。
タイトルから惹かれた映画。
ありふれた付き合いたてのカップルの、楽しそうなありふれた場面がとにかく苦しい。このありふれた、些細な、ふたりにとって日常が、当たり前でないとわかって観ているからなのかもしれない。
これもありふれた言葉だけど、当たり前の日常なんてない、とわかってしまった今の私たちだからこそ響いたのかもしれない。
そして、人と人との関係って、日々に、人生に大きく占める、どうしようもなく大切なものなんだなと改めて思った。誰と過ごすかによって、どんな経験をするかはまったく違うし、誰と過ごすことどどんな未来があるのかはわからないんだけれど。
タクシー運転手は行きたいところのない自分が、だれかを目的地に連れてくことで自分もどこかへ向かう、という考え方が好きだなと思った。あと、國村さん演じるバーの店主、アーティストの尾崎世界観さんもすごくよかった。
2回以上観ると更に面白くなりそうな作品
映画館に観に行く前に、本予告を見ました。
雰囲気やストーリーの構成が【花束みたいな恋をした】に
似ているな〜と思いました。
実際映画館で本作を見ていると、
まず物語は現代から始まります。
コロナ禍、マスク生活のまさに今、最近の都心が舞台でした。
コロナ禍の生活が映画になる程当たり前になり、それほどの時が経ったんだなあと感じました。
そのあと、物語は少しずつ過去へ遡っていきます。
ここで、【花束みたいな恋をした】では、「5年前」
などと言った文字の表記がありましたが、
本作品はそれがありませんでした。
主人公(?、違ったらすみません)の誕生日日付が場面ごとに表されるのですが、そこに年の表記はなく、
何月何日何曜日 のみです。
しかしこの『曜日』が変わっていくのです。
これが同じ日でも年が違うことを表す唯一の表記。
これに気づくまでに2年分かかってしまい、もう少しわかりやすかったらなあ〜と多少思いました。
が、気付いてからはこんな表し方もあるのか!と感心しました
主人公の足の怪我、マスクの状況、車はハイブリッドからガソリン車と、時代は綺麗に戻っていきます。
その変化を見つけるのが一つの楽しみでした。
男女の言い合い、カップルならではの会話、街の雰囲気、
綺麗すぎず、演技感も無く、見やすかったです。
ハッピーエンドとは言い切れませんが、とくに胸に嫌に残るものもなく、見てよかったなと思います。
また尾崎さんですが、売れないバンドのまま終わってしまう。
本当はもう有名になってるクリープだけれど、あえて有名にならないままでストーリーが幕を閉じる。
その世界線が映画の世界観を更に作り出しているようで、わたしは好きでした。(クリープファンの友達は多少怒っていましたが。)
時代の流れを分かった上で、もう一度みたいなと思う映画です。
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