「カウンター」ライダーズ・オブ・ジャスティス ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
カウンター
「アナザーラウンド」ですっかり惚れてしまったマッツ・ミケルセンの主演作、しかも「アナザーラウンド」「カオス・ウォーキング」とは全く風貌の違うイカつい軍人という新たなミケルセンの魅力を堪能できると思い鑑賞。よくある復讐系の作品かなと思いましたが予想とは違うものに仕上がっており、見事にカウンターを受けてしまいました。
主人公マークスが妻が電車内での爆発事故に巻き込まれて亡くなり、その電車に乗っていた数学者のオットーが事故ではなく事件だということを伝え、ぞろぞろやってきた他の学者たちも巻き込んでマフィアへの復讐劇が始まる…みたいな触れ込みだったのですが…。
今作のメインテーマはアクションでも復讐劇でもない、大切なものを無くした人の精神面な不安定さを描く作品でした。これがまた中々見たことのないジャンルミックスだったので驚きでした。マークス、マチルダ、オットーがそれぞれ葛藤する場面が中盤からラストにかけて濃密に描かれます。マチルダは母を失った悲しみをずっと背負っており、母が亡くなるまでの「流れ」を一つずつメモに記して壁に貼っていたり、心理カウンセラーを強く頼っていたりと、最初から最後まで精神的不安な状態を映しています。オットーは娘を交通事故で亡くしており、その反動からか家族の関係にとても敏感で、マチルダの面倒をよく見てくれます。「流れ」そのものに言及している場面も多々見られ、優しさがとにかく滲み出ています。マークスはかなり強がっていましたが、終盤で一気に寂しさ悲しさを爆発させ、1番感情的なのもあり洗面所の鏡に頭突きして見事に割りますし、風呂周りのものを全部壊しまくりますし、管を壊そうとしたけど壊せなかったりと、茶目っ気のある暴れっぷりはクスッと笑えてしまうものにもなっていました。
他にもアナ○セ○クスなどの拷問を受けたボダシュカやマチルダの彼氏のシリウスなど、何故かみんな集まって擬似家族的な形に仕上がっていくのもちょっぴり面白い要素になっていました。
でもアクションもほんと少ないながら良かったです。マークスが一撃で殺したり、銃で乱れ打ちしたり、自宅に突撃された際は必死の抵抗をしたりして、ピンチになった時はオットーはじめ銃の訓練を手がけた学者の皆様方が一斉に発砲しマフィアを一掃するという雑だなという見方もできますが、これが中々に爽快なものでした。躊躇なく撃ち殺すのもまた良い。
最終的にはクリスマスパーティというマフィアをぶっ潰した後にそんなハッピーなことするんだ!?というある種新鮮な映像体験でした。さっきまでの銃撃戦を忘れたように楽しそうにプレゼント開封したり、ホルンを吹いたりとなんとも楽しそう。ホワホワした映像にほっこりしました。序盤の自転車のくだりの伏線回収もここで行うあたり憎めないなぁとニヤニヤしました。
もっと派手なものが見たいなとか途中思いましたが、これはこれで良かったです。
鑑賞日 1/26
鑑賞時間 20:35〜22:40
座席 L-1